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剣道の話

稽古前

4年生の冬の話。
冬の稽古前は体育館を走っていた。
年下の子を引き連れて一緒に走っていた、
その時だった。

左足首を誰かに掴まれた。

バタン、と綺麗に前から倒れ込んだ。
防具を付けていたので、転けた音が響き渡って皆から笑われたのを覚えている。

先生の話と鈴の音

稽古終わり。

教えて頂いた先生に礼。
神前に礼。
お互いに礼。
その後に必ず先生のお話がある。
しん、とした中の先生の話。

私には先生の声と鈴の音が聞こえていた。

鈴の音。
神社にある『神楽鈴』に近い音。
シャララン…シャララン…と一定のリズムを刻んでいた。
かなりうるさく聞こえていたので、戸惑いを隠せなかった。先生が見ているので顔を動かすことが出来ず、目をキョロキョロと動かしていた。
しかし、どこからなっているのか分からなかった。
耳全体に響きわたるように鳴っていたからだ。
本当にうるさかった。
それでも皆平然としている。
あの時は自分の集中力がこれっぽっちも無いのだと思っていた。

中学生になって思い出して母や妹に、
鈴の音のことを言ってみた。

全く聞こえなかったと、言われた。

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