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某ゴマサプリメントのロジックを考えて紐解いてみた

こんにちは、チャボです。
最近、販売開始されて広告を見た際に感動した製品があります。
それがこちらです。

セサミンバイタル

この製品は、サントリーさんが力を入れている肝いり商品。
今後ドラッグストアなどでも見かける機会が増えると思います。

他の機能性表示食品とは異なるチャレンジングな届出文言と表示が特徴で、「ここまでやればこんな広告ができるのか!」と驚かされる製品です。

今日は、このロジックを自分なりに解釈して紐解いてみたいと思います。(※あくまで個人の見解ですので、正確さよりも考え方や思考過程としてお楽しみください笑)


商品の概要

セサミンバイタルの概要

セサミンバイタルは、2023年11月22日に機能性表示食品として届出され、2024年1月12日に受理された製品です。届出番号は「I930」です。

肝心の届出文言

表示しようとする機能性は以下の通りです。

本品には、セサミン類、アスタキサンチンが含まれます。
抗酸化作用を持つセサミン類、細胞の抗酸化作用を持つアスタキサンチンには、加齢に伴い疲労を感じやすくなっている健常な中高年の方の日常生活における一時的な疲労感を軽減する機能が報告されています。
抗酸化作用を持つセサミン類には、日常生活において疲れを感じている健常な中高年の方の寝覚めという体調を良好に保つ機能があることが報告されています。

機能性表示の検索サイトより引用

ポイントは、「抗酸化作用を持つ」と明記している点です。
抗酸化作用があること自体は一般的だと思う方もいるかもしれませんが、これがあることで何がそんなにすごいのでしょうか?

広告の展開

セサミンバイタルのKVが以下になります。


サントリーWEBより引用

「サビを取る成分で疲労感を軽減」 

「基礎健康力」に続いてこれもまた驚きの表現です。
これできちゃうかぁ!という感じ

ちょっと待ってよ

ヘルスクレームで効能を広げることなんてできないし、抗酸化作用を謳うのは薬機法に違反するはずです。これが薬機法の基本です。
でも、今回サントリーはどのように機能性表示でこの表現を実現したのでしょうか?今までのサントリーの広告での工夫も含めて、その方法を紐解いてみましょう。

広告に至るまででの着目すべきポイント

このヘルスクレーム、広告でのロジックをそれぞれ以下のSTEPで説明していきます。
①ヘルスクレーム表示の勝ち取り方
②広告内でのロジック

①ヘルスクレーム表示(様式Ⅴ・Ⅶでの抑え方)

サントリーさんがヘルスクレーム表示で工夫しているポイントは、「抗酸化作用は機能ではなく、成分の説明である」ということです。
成分の働きとしてではなく、成分の特性として説明することで、ヘルスクレームに入れることをクリアしています。(以下STEPです)

●まず、「抗酸化作用を持つセサミン類」について成分の説明をしています。サントリーさんは自社でセサミンの研究を長年やっていることからその根拠論文や蓄積が豊富なんだろうなと思います。様式Ⅴの関与成分でそこをしっかり論拠立てて説明を置いています。

様式Ⅴより
様式Ⅴより
様式Ⅴより

「抗酸化作用」は機能として認められないため、サントリーは「疲労感の軽減」を根拠にしています。これはサントリーの独自研究に基づいています。その研究の中で、疲労感の軽減が抗酸化成分との関係性を絡めて説明されています。これは様式Ⅶでも同様に示されていますね。

様式Ⅴの有効性の説明
様式Ⅶの作用機序の説明

これによって、以下のロジックが成り立つわけです。

  1. 機能性関与成分(セサミン)には抗酸化作用がある

  2. 一過性の疲労感の軽減作用があり、そのメカニズムとして抗酸化作用が一因として考えうる

以上から、抗酸化作用を持つセサミンが、一過性の疲労感を軽減する

これを示されたら、NGとするわけにはいきません。「抗酸化作用」自体は特に問題ない表現ですし、ロジックとしても通らない部分がありません。

サントリーさんは昔から、「○○成分」の戦い方が得意でした。機能性表示がない時代も、以下のような方法で広告していたのを覚えています。

  • 動物の軟骨に含まれるグルコサミンを「軟骨成分」として紹介。

  • アンセリンを回遊魚の筋肉に含まれるペプチドであることを「筋肉成分」として紹介。

これを「軟骨成分×筋肉成分」を「補う」というような方法で、消費者に対して効果を分かりやすく伝えつつ、規制に抵触しないよう工夫してきました。

サントリー ロコモアの広告(これは今のもの)

恐らくこの辺の知見・頭の動かし方を使いながら今回も仕上げてきたのでしょう。

②広告でのロジック

「さびを取る成分」の解釈

では、広告内の「サビを取る成分で疲労感を軽減」はどのように解釈すればよいでしょうか。

サントリーさんは、言葉の定義をしっかりと抑えていると思われます。簡易的に「さび」を調べると、以下のような結果が出てきます。

  • 「さび」: 物質が酸化することによって生じる腐食や変色のこと。

つまり「抗酸化」・・・酸化に抗う。ということから、さびに抗うと整理ができます。

「さびを取る」まで言えるかは、セサミンが活性酸素の除去効果を示す論文で裏付けられているため、特段問題ない判断になります。
通常の会社であれば、「さびを抑える」という表現をトーンダウンするかもですが、サントリーは「抗酸化」を成分の説明と作用機序の位置付けとして明確にしています。
そのため、この表現については特に問題はありません。もし指摘があれば、その時点で対応するというリスクヘッジの姿勢であることがうかがえます。

根本対策はどう見たらいい?

さらに面白いのがWEB検索などのワードで出てくる「疲労感の根本対策」

サントリー セサミンバイタルの検索文言

え、いやいや「根本対策」とかALLに近い表現って景表法ではダメでしょ。ちゃんと学校で勉強しなかったの?(そんなことを教える学校はない)
と突っ込み入りそうですが、ここもちゃんと工夫がされています。

それが様式Ⅶです。

様式Ⅶ

疲労感には様々なメカニズムが存在している中で、「抗酸化作用」がしっかりとしたメカニズムとして働くことが記載されています。
この「根本」はどんな意味でしょうか?

Goo 辞書による検索

酸化反応のメカニズムから見ても、この作用機序を抑えることは「根本」と表現しても言い過ぎにはならないかもしれません。ただし、免疫の機能性表示でもあったように、複数の作用機序がある場合、1つの要因だけを抑えることでの表現は難しいです。
そのため、検索連動やWEBなど一部の場面でのみこの表現を使用することで攻めているのでしょう。恐らく、指摘があっても、広告等の修正は比較的容易にできると考えます。

この表現は、まずは土足で家に上がってみて反応を見る、といったものと似ていますね。つまり、リスクを冒しつつも、その結果を見極めるために一歩踏み込むという戦略です。

おわりに

今回のサントリー広告から学ぶべきことは、いくつかの重要なポイントがありますね。

  1. アウトカムでなく、成分の説明でエビデンスがあればしっかり書ける:

    • エビデンスを成分の説明に結びつけることで、広告の信憑性が高まります。アウトカムだけでなく、科学的な根拠を成分の説明に明確に示すことが重要です。

  2. 作用機序に記載しておけば、表現もしっかり踏み出せる:

    • 作用機序を明確にすることで、より具体的な表現が可能になります。作用機序に基づいて説明することで、製品の効果やメリットをわかりやすく伝えることができます。

  3. 最終的にお客様がどう見るか?を軸に考える:

    • 客観的なエビデンスや科学的な根拠は重要ですが、最終的にはお客様がどう受け止めるかが重要です。分かりやすさや親しみやすさを考慮しながら、情報を提供することが求められます。

これらのポイントから、製品の開発や広告の企画・運用に携わる方々は、改めて考えさせられることがありますね。
特に、分かりやすさと科学的な根拠の両立は重要であり、それを実現するためには機能性表示を届け出る中で様々なロジックが必要です。

今後の動向にも注目ですね!

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