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小林問題のまとめ~結局のところの問題~

こんにちは。チャボです。
今年3月頃から世間をにぎわせてる小林製薬問題ですが、現在はニュースでの報道が落ち着いたところ、週刊誌記者・WEB媒体などがバトンをもらう形で引き続き騒ぎ立て報道が続いてます。
色々な記事を見てて、これは正直もうポジショントークだなと思いますが、自身も改めて整理の上、問題点について言及しようと思います。
(一応業界で働く人間になるので、業界からのポジションで記載します)

ここまでの起きた事象まとめ

以下の画像が、事象発生から3月までのまとめだそうです。
小林製薬の会見中に、原因と考えられるプベルル酸に厚労省が言及するなどのひと悶着もありました。

小林製薬 起きた事象の整理(NHKより画像引用)

Googleトレンドでみると、紅麹の検索が3月末に爆増しました。最近は落ち着きつつあるようです。

Googleトレンド 「紅麹」の検索

4月にはお詫びCMも開始されました。現状の鎮静化は、時間経過もありますが、事象発生以降、それなりに対応を積み重ねた結果かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=f7C-v-llJp0

結局何が問題だったのか?各ポジションからのまとめ

メディア・マスコミ視点

色々な記事がありましたが、まとめると以下の3点に集約されそうです。
①リスク対応含む小林製薬のガバナンス問題
②紅麹という成分自体の問題(食薬区分)
③機能性表示のそもそもの制度(ひいては安倍元首相と米国の話)

①リスク対応、ガバナンス問題
これについて、大きくは2点の記載があります。
・事象発生から公表まで2か月がかかったこと
・社外取締役への報告も、事象判明から2か月後であったこと

これは、説明責任を果たそうとした企業の考えと、とはいっても重大な品質事故であることから早期に行政へ相談すべきだったという行政側の考えのぶつかり合いがあります。
ピークから分析し、「プベルル酸」である可能性までたどり着いたのはおそらく前者の小林製薬の意地だったのかと思います。ただ行政からしたら不完全でもいいので公表をして、まずは起きてることを周知しながらリコール、成分同定、その他対応を進めていけばいいという考えでしょう。
これは、自分にボールがないから言えることと捉え方もできますので解釈は人それぞれかと思います。

②紅麹という成分自体の問題
これは、日本の食薬区分に関連する内容です。以前私の記事でも記載しましたが、紅麹に含まれる「モナコリンK」という成分はコレステロール低下薬のスタチンと同様であり、医薬品と同等の力価があります。
にもかかわらず紅麹をサプリメント(≠医薬品)で販売できる状態であることへの問題提起です。

個人的には定期的に食薬区分には見直しが入りますし、紅麹も過去何度か議論のあった成分でした。にもかかわらず現状維持されていることから、これは対企業というより制度そもそもへの話になります。しかし、これを議論し始めるとアロエや和漢系の素材でそういう成分は大量に存在しているので、小林問題とはまた違った話になってきそうです(これは後述の検討会でも議題に上がっていたので中長期整備なのかなと感じます)

③機能性表示そもそもへの話
一言で書くと、「安全性をノーチェックで、消費者庁が受け取って、有効性を明示して販売できている機能性表示食品の制度は何事だ」という趣旨です(だいぶざっくりしましたが 笑)
これを分解すると以下の2つになります。
・製品で安全性が審査していない
・消費者庁へ届出されているが、実質ノ―ルック

まず、製品で安全性が審査されていない。という件について
これは正直、医薬品と健食を同等に見ようとするねじれです。
日本はサプリメントを医薬品と似たような見方をする人が多い印象あり、私の本業で調査を実施する際にも、そういったコメントをお客様から聞きます。サプリ=何かしら効果のために取るもの。だから医薬品と同様の品質基準であるべきだ。のような論調にも捉えられ、正直ナンセンスだなと感じます。
理由が、上記のような制度を取ってしまうと業界への参入障壁が高くなり現状の市場のトップレイヤで市場が決まってしまいます。お金ある会社じゃないと臨床などで安全性の確認もやりようがなく、この辺は理想を追う形で制度を作ると市場全体の後退につながりかねません。

次に消費者庁へ届出されているが、実質ノ―ルックの件について。
機能性表示は「事業者の責任において」表示を行う制度なので、根幹は「申請」制ではありません。なので被害発生時の問い合わせ先や、食経験による安全性は念のため確認している。があくまで企業の自主性なので責任は行政にない。というのが立て付けになります。なのでこの指摘については焦点がずれてます。

今回はそもそもそういう制度とは何事だ。という流れから、当時セルフメディケーションの普及と題してこの制度を作った安倍元首相まで話が及んだ形ですね。

業界視点

業界では、機能性表示制度策定に関わった森下先生が言及しています。

要約すると
①今回の問題の本質はコンタミのような事象(しかしこれは食品でも起きる)
②機能性表示であったことから、安全性/製造体制等の把握が簡便に済んだ(いわゆる健食であればそもそも被害拡大に気付けなかった可能性もある)
③制度を医薬品のような管理体制やトクホのような厳しさにすることはおそらくできない (原料や製品毎ロットの管理、臨床試験で本製品評価。いずれも大手しか活動できない事業モデルになってしまう)

上記①が根幹だというのはそうだと思います。かつ③は現実的な視点だと思い、ここを強制執行すると今の日本経済の状況から、持続不可能なメーカー、製造先も増えると思います。
そのため、今回マスコミ・メディアの主張ではいろんな話に飛び火してますが、今回の件と同ケースをモデルとして考えると再発防止は難しい。が結論ではないかなと感じます。
現状、色々こじれて議論があっちこっちに行っていることと、制度見直しにも議論が行ってますが、結果何も変わらない。という着地になりかねないと感じています。

今後の動き

制度見直しに対しての検討会が始まり、5月末をめどに方向性が整理されていく見込みです。

ただ、既に初回の内容を見ると「食薬区分の話」「GMPなど製品管理の話」「今後厳しく見ていく必要」など議論が分散しており、かつ上記にも記載した通り今回の事例をベースにするとこの会合の着地は、
「中小企業以下をつぶしてまで国民の安全性を取る※サプリ値上げも余儀なくされる」か「ある程度の安全性担保の仕組に着地させる※完全な再発防止にはならない」を選ぶことが求められそうです。

おそらく上流の何を達成する必要があるか?が摺りあわないと永久に着地しない魔の検討会ですね。。。

以上、簡単なまとめでした。業界や自身の業務への影響が大きいため、引き続き内容は追っていこうと思います。それではまた。


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