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脳科学的日常(3)- 知的障害+ADHD①

筆者が勤務している発達障害児童向けの療育施設では、重度の知的障害と診断された小学校低学年の子がいる。日頃その子の世話をしつつ行動や表情をよく観察していて、その様子を中心に感じたことをお話する。

1.特徴
①会話らしい会話ができない
②読み書き計算ができない
③絵が描けない
④トイレが自分ではできない(紙オムツを使っているが、そろそろ取れそうとのことである)

⑤周りからの働きかけに対する注意をなかなか向けられなく、呼びかけに即座に応じることが少ない。(強く促すと応じる)
⑥突然意味もなく走り回る(ように筆者は見えるが、実はスタッフの反応を試している、一種の遊び感覚かもしれない)
⑦一斉で正座して挨拶する時や車から降りる時など気が進まないことをさせられる時、寝そべって抵抗する(意思表示ができる)
⑧他の子の絵本や玩具を、その子が使っていない隙に使おうとする(隙を狙うことが得意)
⑨送迎中、シートベルトをはずし車中で動き回り、注意しても聞かない

⑩同じく、助手席に移動してハザードボタンを押そうとしたり、ギヤレバーをいじろうとする(隙を狙う)
⑪変顔が得意で、自分で鏡を見て声を上げて笑う
⑫目と目を合わせられる
⑬一応自分でシートベルトを装着でき、外すのは手感覚だけで一瞬でやる。
⑭ゆっくりであるが、成長している

総じて、①~④から知的能力が低いことが伺える。また⑤~⑨の行動より、ADHDの傾向も見られる。
一方、⑩~⑬から、ある程度の知恵が伺える。特に、隙を狙うあたりかなり観察力があり、瞬間的行動力も高いことが伺える。

2.改善に向けて
発達障害全般的に言えることは、前頭葉、特に前頭前野の機能が低下していることが大きな要因の1つと言える。特に、判断力や注意力、行動抑制は前頭葉の働きなので、それを鍛えることを基本方針とする。また、それに伴い、記憶力や運動能力も強化するべきである。
一方、当人としては、できないことが多くあり、注意されることも頻繁で、ストレスにもなっていると思われる。そのことを踏まえ、家庭内で親がどう接し指導していけばいいかを私見として述べる。

①注意力を高める
静かに対話する時間を設ける。しっかり注意を向けさせ、目を合わせる。すぐにできない場合は両手をつなぐことも効果的だろう。なるべく言葉で「ちゃんとこっち向いて!」などと言わず、以心伝心的におだやかに両手で顔を向かせるとか、体を向かわせるのがいいだろう。
どうしても嫌がるなら、その時はそれで終わりにし、でも毎日日課のように続ける必要がある。

②栄養バランス
食事は、子供らしい献立で栄養面もバランスがとれ過不足なく、食後はデザートを出すとよい。特別、体にいいとか脳にいいとかあまり意識する必要はないように思う。
ただ、食生活として、小麦粉の入ったパン、麺類は、できれば避けた方がいいとは言える。小麦粉に含まれるグルテンが免疫力を低下させるとか小腸や脳にダメージを与えるとか、何かと体調を不良にさせるといった実験結果が出ているからである。とは言え、パンやパスタなど大好き子どももいる。それを我慢して食べないようにすることが却ってストレスの原因になるなら、それこそ本末転倒なので、米粉を使ったパンや麺などで替えるといいだろう。
また、食物アレルギーを避けるのは当然として、嫌いな食べ物も強いて食べさせることは無用と思う。好き嫌いをなくそうとしなくても、栄養バランスが取れていればいいだけの話である。調理上の工夫もだめなら、野菜類ならジュースとか、最悪サプリという選択肢もある。そうと割り切って、要は、無理強いせず、悩まず、親も子もそのことでストレスを溜めないことのほうが大事である。

③睡眠
睡眠は脳にとってとても大事である。昼寝をするとどうしても夜寝る時なかか寝付けないこともあろうが、昼間眠たいときは脳が寝たいのであって、無理に寝させないようにすべきではない。そのことで夜寝る時寝付けないようであれば、小学生低学年の間は寝ながら読み聞かせをしたり添い寝したりし、安心して眠れるようにしてあげるといい。もう少し大きくなれば、アロマ+Sleep Musicで寝る習慣もいいだろう。Sleep MusicはYouTubeでいくらでも聴けるし、好きなものを選び、8時間モノや10時間モノならそのまま、2,3時間ものならリピート機能を使えば朝まで聴くことができる。
睡眠中は、脳内で成長ホルモンが分泌され血管を通じて全身に供給され、それぞれの細胞分裂を促す。それは夜10時頃開始されるので、それまでに眠っていることが必要である。そういったことで、夜9時~10時くらいに寝て、朝6時に起きるのがベストであろう。
また、睡眠中は脳内の老廃物が排出されたり、その日の記憶を整理する時間でもある。想像以上に睡眠は脳にとって重要であることがわかる。

④運動
全身運動や手指を使った運動は、ある意味最も重要で効果的である。何故なら、小脳を通じて前頭前野を直接的に活性化するからである。」
・全身運動
一番身近なラジオ体操を、いい加減ではなくきちんとすることは効果的である。ラジオ体操なんて・・・と馬鹿にしたものではない。あれはとても考えられた体操で、しかも、正確にやることが意外と難しいので、チェックしてあげる必要がある。朝起きて、朝食の前に1日1度やることをお勧めする。
もし、もっと本格的な全身運動をと考えるなら、ダンスがいいだろう。クラシックバレエなどいろいろあるが、筆者の独断としてはシャッフルダンスがお勧めである。日本では流行っていないが、特に米国ではここ数年流行っているらしく、YouTubeでたくさん動画がアップされている。脚中心にした軽快でリズム感がとてもあるのが特長であり、Alan Walkerの曲に乗せて踊る姿は、観ているだけでも心が躍る。
・手指運動
手指の運動としては、お手玉、あやとり、けん玉、キャッチボール、おちゃらかほいなどの手遊びなど、視覚や聴覚のフィードバックを伴う遊びが効果的である。急には難しいので、最初はゆっくりしたテンポでやるとか、ボールはビーチボールからやるとか工夫が必要であろうが、やればやるほど前頭葉は鍛えられるので、続けてやることが大事である。

ここまできて、予想以上に長文になってしまったので、続きは次回に回す。
項目は、⑤音楽療法と、そして最後が⑥脳トレ(記憶力、学習障害を含む)を予定している。


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