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短歌と写真

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短歌だけのもここに。
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2015年1月の記事一覧

ラベンダー

土曜日は来ないねいっそヨメという二文字でわたしを埋めてくれたら

「おれはずっとおまえを好きだよ」その意味に気づいてしまうチャイルドシート

午前二時わたしを殺せるものが来るあのひとが子を呼ぶときの喉

じゃあこれで、終わりにしましょ。言えないのわかってる君 わからぬわたし

妻という覚悟について考える考えるほどなれぬを悟る

「お人形さんみたいな」彼女が贈りしはわたしの選ばぬラベンダー色
#短

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一夜漬け

愛しきはひかりのような無邪気さで一目、ひとめと繰り返す君

ブレーキのきかぬ自転車 ああこれが北京オリンピック以来の恋か

信号が赤になっても昼のことは聞かないぜんぶほしくなるから

一夜漬けのような恋よ 二晩経つとあなたの声が思いだせない

おれと結婚したいのと訊かれふるふると横に振る首だけを信じる
#短歌

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ふゆくさの

寒さをも恃みにしたき夕なればあかぎれの手を握りしめ行く

人はあれど人間の無きくるしさを如何に伝えんあの柔き目に

リセットを押せど剥がれぬ記憶にて言葉を解さぬものになりたし

後先もなく逃げ出せるあの部屋の蛍光灯の頸の白さよ

ふゆくさの青かなしみて土のうえ私にもまだ陽は当たるらし

だれのこともうらまないただあのばしょでこころがかたくなるのがこわい
#短歌

ふゆくさの青かなしみて土のうえ私にもまだ陽は当たるらし #写真 #短歌

前髪を切りすぎたって気にしない ワープシューズは高低差無視 #写真 #短歌

くちぶえ(todattoraさんの同名小説を長歌として、返歌のようなもの)

くちぶえ|todattoraさん|https://note.mu/todattora/n/nd25bcb3fdd7b

恋人よあなた不在のくちぶえはすきま風のごとヒュルヒュルリ鳴る

幸福はこんな日の点 舞い躍る洗濯物とバーンスタイン

可愛いと言わなくなったその口に「変な顔」することを許され

日常は続けど確かに変わるもの明日(あす)は口笛のあるあしたなり
#短歌

蝋梅

息継ぎを覚えたような心地して頼りなき君の返答を待つ

かっこつけるんだったらとことんかっこつけてよ(三月までの期間限定)

新しいいのちの話をしてる まだ手の大きさも知らないふたり

夏が来たらあなたとみどりの梯子を渡る ピアスはなるべく揺れるのがいい

「綺麗になったね」と言われてほっとする あなたに会うのが今日でよかった

あれは蝋梅か今はまあいいか下手な写真をきみに見せよう
#短歌

寂しいよ今すぐ迎えに来てなんて言えるわけない もっとさみしい #写真 #短歌

ショットグラス

ツイードのコートを着れば女A バーで昔の男に会えり

記憶には酩酊の君を拒む手が倒した自転車のあざやかな黄

つるつると並ぶボトルになり果てぬ「モトカノです」と紹介されて

作り方忘れたでしょうヴォンゴレのアサリみたいに傷ついた顔

新しい恋人のこと語りつつはじめて私を呼び捨てにする

バーボンをあおって私に似ぬ女(ひと)の不幸を嘆く君の復讐

組み伏せるように呼び捨てられた名がショットグラスの底

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ムンバイ

同級の女性が語るムンバイを選ばなかったものとして聞く

かわいいと言われど虚し遠き地の彼女のようには笑わぬ鏡

肌荒れの治らぬ顔と身体ひとつどこでも行けるどこへも行けない

強さとは何か 私にわかるのは男のそれとは違うことだけ
#短歌

スーパー

オトコ・カラダ・シゴトの次に定番のガールズトーク野菜の値段

「これなんか美味しそうだよ」大根は太ったほうが愛されるのに

アボカドとレモンをかごに放りこむほっぺたはメキシコのおかあさん

「あと何かほしいものある」問うひとのいないことにも慣れたこのごろ
#短歌

朝風呂

あたたかいお湯に浸かれば何とかなるはずよ何とかしてちょうだいよ

すくな目に張った湯のなか背中を折ればあなたの分の体積を思う

もう二度と男のために伸ばしたり切ったりしない髪泡立てる

「バランスをとっているだけ」言い聞かす 愚直が過ぎてサンケツノキキ

誰の手に触れられるのがしあわせか 問えども張った乳房が痛む
#短歌