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hereではなくてthere①
トゥクトゥクの運転手と言い合いをして、人と車の多さに参って微熱を出して、とんでもなく辛いカレーのおかげでお腹がゆるくなって、トイレも綺麗じゃない。でも、ものすごく魅了された国。
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【hereではなくthere】の進み方
途中まで書いていたらとんでもなく長くなりそうな予感がしたので、分けることにした。
①と②は旅の記憶。五感がたくさん刺激された日々をつらつらと綴る。
③は旅がきっかけの考え事。たくさんの人にお世話になりながら見聞きしたこと、友人と話したこと、自分なりに考えたこと、今思うこと、まとまってないなりに書く。
初上陸の国、インド
世間一般に人生観が変わる国と言われているインド。
学生のうちに絶対に行きたい、といろんなところで言っていたら、念願叶っていけることになった。
渡航経験のある先輩方にどうだったか聞くと、「またすぐに行きたい」「一生行きたくない」の二択に別れた。わたしがどちらに転ぶのか、うきうきしながら計画を立てる。2週間かけて、北インドの4つの地域に滞在することになった。
頭が少し覗くくらいの量大きさのバックパックを背負って、いざ出発。
家を出て、歩いて5分たったところで、パスポートをコピー機に挟んだままにしていたことに気がついて急いで家に戻った。そのおかげで駅までおもたーいバックパックを背負って15分ほど小走りすることになった。
疲れたけど、思い出した私、ナイスプレー。
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微熱でばいばい、コルカタ
着いた都市はコルカタ。イギリス植民地の首都として栄え、インドの文化の中心都市と言われている。
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インド渡航前、うきうきな私はInstagramやX(このときはまだTwitterだった)でインドのことをあれこれ調べていた。その時に見つけて、密かに会いたかった人。
サトシ
関西弁を話すインド人で、インド渡航日本人界隈では結構有名な人。一時期『地球の歩き方』にも有名ガイドとして載っていたらしい。
空港に着いてすぐ、ゲストハウスに荷物を置いて、ゲストハウスのお兄さんに中心部までの道を聞いてsimカードを持たずに歩いた。レートがいいと言われているお店でとりあえず両替をして、朝昼ごはんのエッグロールを注文して動画を撮っていたそのとき。
「何してるん」
振り返るとサトシ。
いや、まさかこんなにすぐに会えるなんて思ってなかった。そのままエッグロール(唐辛子いれていれて〜って言ったらものすごく辛くなったけど、おいしかった)を食べる私たちを見届けながら営業を始めるサトシ。
せっかくならと思い、ガイドをお願いした。
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係の人が行き先を叫びながら停留所なのかもわからないところで乗客を乗り降りさせるバスにどうにか乗り込んで目的地に向かう。
毎日2000人もの花売りが高架下のスラムを彩りにやってくる、Mullick Ghat Flower Market。
黄色と橙色が人混みを暖かく色付ける。マリーゴールドはインドでは縁起がいいものとされていて、パーティー、祭り、葬儀などさまざまな場面で用いられる。
花がたくさん入った大きな袋とともに寝台列車に乗り、早朝から花を売る人。またその日の夜には寝台列車に乗って地元に帰るらしい。
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休憩でチャイを飲んで、お昼はカレーとビリヤニを食べ、おやつにラッシーを飲んだ。
飲んだ、というか、食べた。
本場のラッシーは日本のさらさらなものとは違って、どろっとしていてほぼヨーグルトだった。ラッシー屋さんはすっぱい匂いが充満していて、発酵って考えてみたら腐ってるってことだよなぁと、自分の今後のお腹を気にしながらおいしくいただいた。
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2日目。警戒心マックスで人のことを疑いすぎて疲れた、そんな日。
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事前にお世話になる約束をしていた相手。顔を知らないまま集合場所に向かい、にこにこ近づいてきたお兄さんの名前を確認したら一致。一安心しながら、警戒。
「お腹空いたでしょ?僕の友達のおいしいカレー屋さん連れていってあげるよ!」
怪しい。海外で「友達の〇〇連れていってあげる」というワードはあまりにも怪しい。
繁盛しているお店の奥の個室に通され警戒心がmaxに達した後、でてきたカレーのおいしさで心が緩み、警戒心と不信感は50%まで下がった。
その後も警戒心と不信感の数値は前後しながら、たくさんの優しさと学びを彼らからいただき、疑ってごめんなさい、ありがとうの気持ちでお別れした。
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夜におやつで食べたサモサとパニプリがおいしかった。
パニプリは、サクサクした空洞のパンに、しょっぱいおかずを入れ、甘い汁にじゃばーんとつけるお菓子。ストップを言うまで渡され続けるのがわんこそばみたいで楽しかった。
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3日目、活気であふれたコルカタの朝を堪能したいわたしは仲間を散歩に連れ出す。
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出勤姿の人々が囲んでいた屋台に並び、チャイで一日を始める。そして屋台でエッグトーストを食べる。
このエッグトーストから、一日ずつ交代で仲間が倒れていくことになる。恐るべしインド。
例にも漏れずわたしも体調を崩す。とはいいつつ微熱。ありがとう私の丈夫な心身。
関節痛がすると思って熱を測ったら38度。
解熱剤を飲んで、口をぱっかーと開けて(座りながら寝ると、あいちゃうんです)ゲストハウスのベランダで2時間くらい寝たらだいぶ良くなった。
寝台列車の時間が近づいていたから、出発。
微熱でばいばい、コルカタ。
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朝散歩でぼったくられる、バラナシ
バラナシ。ガンジス川が流れる、聖なる都市。
迷路のように入り組んだ道。
石畳の上には大きな牛が座り込み、上を見上げると電線を猿がきゃっきゃと渡り歩いている。
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寝台列車の寒さと揺れにやられて2人が体調を崩す。
どこでも寝れる私は3段ベットの一番上を陣取り、すやすやと寝た。
電車の遅延で夜中2時ごろにバラナシの中心地から川を渡った駅に着いた。さぁホテルへ。
第一の壁:遠吠えをしている野良犬たち
5人中2人が狂犬病の予防注射を打ったのだが、残りの3人は無防備。 ゆっくり歩いたら大丈夫だった。夜中に通る私たちがいけない。ごめん。
第二の壁:泊まらせてくれないエントランスのインド人ニキ
ホテルに着いた。誰もいないからインターホンを押す。2人降りてきた。
こんばんはをして、Booking.comの予約ページを見せる。
「外国人泊まれないわ」
眠いのに、お風呂入りたいのに、暗くて怖いのに。
新しく2人外からニキたちが入ってくる。なんだかニヤニヤしている。
最初から対応してくれていたお兄さんが新しいホテルを提案してくれたけど、値段を見たら2倍で貧乏旅をしているわたしたちにとっては痛手すぎて、駄々をこねてみた。
後から入ってきたニキが、にやにや?にこにこ?しながら動画を撮っているではないか!
「うざぁ」と言ってしまった。日本語わからなくてもきっと伝わるんだろうな、ああいう言葉。
結局丁寧な対応をしてくれて、新しい系列のホテルまで連れていってくれて、グレードがあがったけど値段は据え置きだった。おまけにシャワーが暖かかった。
いやな言葉を使ってごめんなさい。でも嫌な気持ちになったよ、にやにやニキ。
大きな壁を2つも乗り越えて、すやすや寝た後に中心地に向かった。
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もちろんバラナシでも朝散歩をした。
川岸に並ぶ、巡礼者が身を清めるための沐浴場ガートに沿って歩いていた。
火葬場が近づくと匂いが少しきつくなる。
火葬場からは24時間、絶え間なく煙が上がり続ける。
日本もほとんどの人が火葬で弔われる。
小学生低学年の頃、火葬場で親族を見送った。棺に入った遺体は、台車に載せられ、火葬炉に入り、重たい扉が閉まる。しばらくすると骨と灰が出てくる。幼いながらに思ったことは、こんなにもあっけなく人は小さくなるということ。
バラナシの火葬場はあまりにも近かった。そして時間が着実に、遅くも早くもなく、進んでいた。
「一人の大人を燃やすには、250kgの薪が必要なんだ」
隣に現れた若者が説明を始める。火葬について事細かに説明をしてくれた。
終いに、貧困層が薪を買えずに困っている。だから寄付をしないか。と。
途中からわかってはいたけど、最後まで聞いた自分の責任を感じたから少しではあるがお金を渡した。
弔わうために使われるのか、その日のお酒に消えていくのか。
身を清める場所、誰かを弔う場所。
神聖なこの場所をふらふらと歩くわたし。
こんなわたしを受け入れてくれるこの地は大きいと思った。
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身体の中から違うとしみじみ思う。
あの神聖なガンジス川は、お世辞でもきれいとは言えない。むしろ汚い。
ガンジス川に頭までつかったら日本人は大抵3日は寝込む、らしい。
私の身体も少しずつインド化していっていた。
散歩の帰りに、バラナシで一番おいしいと言われているチャイ屋さんに言った。
チャイ、✌🏻
通じたのか、奥に座ってとジェスチャーされた。
作っている様子をずっとみていた。おいしそうだな、まだかな。
どうやら冷蔵庫が壊れたみたいで、冷蔵庫の下の方に手を突っ込んであれこれといじっていた。
その埃っぽい手でチャイ作りに戻った。
爆笑。いや、めっちゃ汚いじゃん、その手!!
チャイはおいしかったし、お腹も壊さなかった。
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①はここでおしまい。
すでに虜。