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MIU404に出会えたことが私のスイッチだったのかもしれない

社会人になってからドラマを見ることが少なくなってきたけど、ここ数年、年に1本のペースで好きな作品に出会えている。

2018年はアンナチュラル、2019年はインハンド。TBSの金曜22時から交際を申し込まれているのかな。

そして今年もまた、同じ枠からとんでもなくハマるドラマに出会えました。3度目ともなるとそろそろプロポーズと捉えた方がいいのかもしれない。新居は赤坂でいいですか。

考察とかじゃなくてただの感想だけど、好きなものについては呟きだけじゃなくてちゃんと文章に残しておきたくて、いつかこれを読んだ時にこの気持ちを思い出せるように、安心して忘れられるように、こうして書いてみることにした。


MIU404は、ぶっちゃけ1話目は見逃してしまっていて2話目から見始めたんだけど、基本1話完結だから途中からでも入りやすくてありがたかった。

話のテンポがいいのかな。削ぎ落とせるものは削ぎ落として、でも話の核はきちんとあるから物足りなさも感じず、それどころかもう終盤かなと思いながら時計を見たらまだあと半分くらい時間が残ってて、ここからまだもうひと展開あるんだ!ってわくわくしたことが何度もあった。

特に好きだった回が4話の「ミリオンダラー・ガール」。多分わたしはこの回で完全にMIUにハマったんだと思う。

ストーリーも面白かったけど、なんと言っても音楽。主題歌「感電」のサビに入るタイミングが完璧だった。

4話では、高速バスに乗った青池透子が、ぬいぐるみを乗せた輸送会社のトラックを窓越しに見送るシーン。

そのあと彼女の乗った高速バスは下に降りて、ぬいぐるみを乗せたトラックはまっすぐ空港へ向かう、それまで並走していた2台が別れるんだけど、それはカジノで人生を狂わされて負け続けの人生を送ってきた青池が、「賭けてみます。今まで勝ったことないけど」の言葉と共に挑んだ最後の賭けで勝った瞬間でもあって。

最初反対の意味で捉えてしまっていたつぶったーでの青池の言葉。あれの本当の意味が分かった時は鳥肌が立ったな。彼女が最期に見た景色は絶望なんかじゃなく、それは少なくとも彼女の中ではきっと希望で、まさに「たった一瞬のこのきらめき」だったんだね。

ストーリーだけじゃない、音楽も合わせて一つの作品なんだって感じた回だった。


3話で出たスイッチの話。終わり方的にこれが今後大事なキーワードになっていくんだろうなって思ってたけど、最終回でもちゃんと生きてきててすごく気持ちよかった。

個人的にMIUは九重くんの成長の話だとも思っていて。最初は機捜のメンバーにも心を開かず、何かとドライな姿勢を示していたけど、回を重ねるごとに刑事として成長して、仲間とも信頼関係を築いていっているのが伝わってきて、その一つ一つを積み重ねた結果が陣馬さんの病室のシーンだなと。

陣馬さんの病室に足繁く通うような関係性になって、目を覚ました時に勢い余って誤字しまくるほど興奮しながら何度もメッセージを送ったから、バイブで震えたスマホが落下して、伊吹が目を覚まして志摩を起こせた。

伊吹が目を覚ましたきっかけが悪夢で見た銃声ではなく、九ちゃんからの連絡だった。絶望ではなく希望の道に進めた。これこそ、今までのスイッチが重なって生まれた結果だなと感じたな。

最終回で久住が「俺はお前たちの物語にはならない」って言葉が心に残っていて。志摩がRECに言った「点と点を強引に結びつけてストーリーを作り上げている」って言葉にも個人的には繋がっていて。

実際の世界でも、罪を犯した人の生い立ち、動機に物語性を持たせようとしている人って一定数いて。そうすることで興味を持たせるっていう理由もあるだろうけど、物語を作ることで「この人と自分は違う」って線引きをしたいんじゃないかと思う。「犯罪者はこういう生い立ちだった」と「こんな生い立ちがあったから犯罪者になった」はイコールではないのに。

人は弱いから、自分と他人を区別することで自分自身は犯罪に巻き込まれることも、ましてや被害者じゃなく加害者になんてなるわけがないって安心させたいんじゃないかな。

でも実際は何がきっかけで「向こう側」だと思っていた世界に足を踏み入れるかなんて分からない。伊吹だって、スイッチがずれていたらあの悪夢こそが現実になっていたかもしれない。私たちも同じ。何かのスイッチがきっかけで、自分の世界は変わる。何を選ぶか、誰と出会うか、出会わないか。そういうことをドラマの終盤では特に考えていたな。


あと、桔梗隊長の描き方もとても好きだった。

凜としていて、かっこよくて、ハムちゃんのこともただの保護をしているかわいそうな子としてではなく、一緒に戦う仲間として扱った。

だからハムちゃんのプライバシーも大事にして、スマホの覗き見もしなかった。もし見ていたら、成川くんとの会話にもっと早く気づいて未然に防げた。あくまで結果オーライだったわけだけど、そうやって描けるのがドラマのいいところだと思う。正しくいるということを私たちに提示できる。

でも警察官でいることが桔梗さんの人生の全てではない。それは他の人も同じ。ネットであることないこと書かれて炎上した時に志摩に言った「働いてんだよこっちは」という言葉が、とてもシンプルだったけど、同じ1人の働く女性としてズンと心に響いた。

私はドラマに求めているものって固まっていないんだけど、MIUは話の内容も、進め方も、登場人物の描き方も、すごく丁寧に、諦めないで、かつ見ている私たち視聴者のことを信じて作られた作品なような気がして、なんだか嬉しかったんだよね。不思議だけど。

うまく言えないけど、このドラマを見ていた時間って、同時に会話をしていたような気がする。それは野木さんであったり、同じ時間に見ていたネット上含む周りの人であったり、自分自身だったり。このドラマを見るべきタイミングって、去年でも来年でもなくて、きっと今年だったんだと思う。今だからこそこんなにハマれたんだろうな。

MIUを見たことが私の今後の人生にどう作用するのかは分からない。特に何も影響しない可能性だって十分あるし、言ってみればエンタメって別になくても生きてはいける存在ではある。

それでも私はエンタメが大好きだし、MIUを見て感じたことをこうして書き残しておきたいと思った。そう思えたこと自体がこの作品に出会えた価値だし、きっと何かのスイッチになったと思う。

私にとって大事な宝物がまた1つ増えました。3ヶ月間、素敵な作品を届けてくださって、本当にどうもありがとうございました。

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