ネイルは何のためにするのか

　もう 3 年くらい、ネイルサロンでジェルネイルをしてもらっている。なんのために？と言われると、答えはなかなか難しい。

　ただやってみたくてやり始めてみたら、もともと自爪がすごく薄い私は、すぐに爪が割れて深爪になり指先から血が出たりしていたものだから、ジェルネイルをしていたほうが爪が強くなり快適だったのは、想像していなかったラッキーだった。それとアトピー持ちですぐに腕や首が痒くなるが、ジェルネイルが着いている方が爪の先が尖っていなくて、掻いても肌へのダメージが少なくなったこともありがたかった（これはアトピーの人あるあるらしい）。しかしこういった恩恵は副産物であって、そのためにネイルサロンに毎月何千円も払っているわけではない。

　単純におしゃれの一環として世界観のひとつともなれば、会話のきっかけになることもあった。だけど、１ヶ月ずっと同じネイルであることが、毎日のコーディネートにプラスかと聞かれれば、もちろん服装に合わない日もあり、おしゃれのためが 1 番の功績とも言い難い。

　では、いつこだわりのネイルが真価を発揮していたのかと言うと、何か嫌なことがあったときだったりする。仕事が思いも寄らない方向へ急カーブをしたとき、その日着ている服がお気に入りのものだったり、新しい靴だったり、爪が輝いていると、なんとか立っていられる。特にネイは、デザインするときにそのときハマっているものの要素を入れられたりする。今 Netflix で見てるドラマに出てくるモチーフや、この間観た映画の綺麗だった海の青と主人公の服の赤。そうすると、爪を見るだけで、ドラマや映画にまでイメー
ジが進んで、自分の状況から離れたところに頭を持っていけるのだ。そして、自分の好きなものから頭の中でちょっと元気をもらう。

　自分を一瞬で励ますことができるものを、指先に仕込んでおく。なんだかスパイのような文面だけど、そのために毎月お金と時間を払い、今月も私は満足する。