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C26 イギリスで正規の給料をもらう

私はホッとして、ジェームスからなるべく離れたところに腰をおろし、楽しみにお昼の弁当として持ってきたなんちゃってマッシュルームご飯の入った弁当箱を開けました。冷えてはいましたが、お米の味はとても麗しく、一口一口噛みしめながらその味を楽しみました。ジェームスは、なにかきっかけを作って私の方へ来そうな雰囲気だったので、ほとんど目を合わせないようにしながら、しっかり休憩を取りました。ちらりとジェームスの方を見ると、今度は他の作業員にタバコを要求しています。呆れたというか、アッパレというか、ここまで空気が読めないのは、スペイン人の気質というよりは彼自身の個性なのでしょう。そうでないとスペイン国民に失礼です。

さて、その日は彼とのコンビがそのまま続くことになりました。午後の作業は、まさしく修行の時間でした。慣れない作業というよりは、ジェームスと一緒に作業をすることの苛立ちが全ての原因で、作業の終了時には、完璧に疲れていました。さらには、これから彼と同居するとなるとどれほどのつらさが目の前に広がるか想像しただけで帰路の夕日がとても悲しく思えました。何がなんでも彼とは別々に帰りたかったので、あっという間の帰り支度を済ませて、いつもは全員と交わすさよならもそこそこに、近道を通り、ドラッグストアで炭酸飲料を買って、そこからはゆっくり田舎道を楽しみながら帰りました。

そうそう、ジェームス事件で書き忘れるところでしたが、今日は給料日でした。現金が茶封筒に入れられて各自に渡されます。私の番になり、「イキオ!」と呼ばれて週給を受け取りました。それなりに厚みがありドキドキものでした。封を切ってみると500ポンド以上が入っていました。予想をはるかに超える金額でした。日給に換算すると、12000円位で、時給ははるかに1000円を超えています。この分でいくと数ヵ月後には日本に十分帰れる資金が貯まりそうです。ジェームスも一丁前にもらっていましたが、たった一日では大したものではないでしょう。あの売春強要事件を今になって振り返ると、簡単にOKしなくてよかったなと胸をなでおろしました。まあジェームスが盗みまではしないにしても、虎の子の資金ですから、私の寝室のカーペットの下に500ポンドをへそくりしました。残りの数十ポンドあれば、一週間の食費などはクリアできそうです。

今夜もマッシュルームご飯にします。へたなレストランなんかで散財するよりは、自炊が一番です。これまでレストランでお金を払って、挙句の果てに大変まずい料理が出てくるという悲しい思いを何度も経験をしていたからです。すっかり晩ご飯の段取りをしてやっと人心地着いたころにジェームスがやってきました。

あぁー、そうでした。今日から同じ屋根の下で空気が読めないスペイン育ちで英語が話せないイングランド人と共同生活をしなければならなかったことを思い出しました。


イングランドの農夫が給与から支払う税金について

イングランドの農夫が給与から支払う税金には、主に所得税、国民保険料(National Insurance Contributions: NICs)、および年金保険料が含まれます。

1. 所得税 所得税は、個人の収入に対して課される税金です。イギリスでは、所得税には複数の税率があり、所得に応じて税率が異なります。基本的な控除額があり、それを超える部分に対して税率が適用されます。例えば、年間所得が特定の金額を超えると、その部分に対しては高い税率が適用されます。これにより、収入が多いほど税率が高くなる累進課税制度が導入されています。

2. 国民保険料(NICs) 国民保険料は、イギリスの社会保障制度の一環であり、主に医療、失業保険、年金などの財源となります。従業員として働く農夫は、その給与からNICsが自動的に差し引かれます。NICsの額は、収入に基づいて計算され、収入が高いほど高額になります。

3. 年金保険料 イギリスでは、国民年金(State Pension)が提供されており、その財源は国民保険料によって支えられています。従業員として働く農夫も、将来の年金を受け取るために、給与から一定額が年金保険料として差し引かれます。

これらの税金や保険料は、農夫の給与から自動的に天引きされるため、農夫自身が特別な手続きを行う必要はありません。しかし、税金の計算方法や適用される控除額、税率などについて理解しておくことは重要です。これにより、自分の手取り額を正確に把握し、将来の計画を立てやすくなります。

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