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1/150スケール内航貨物船建造記

国内の港の間で貨物を輸送する船を内航船といい、24時間365日航海と荷役を続けています。そんな内航船の模型が欲しいな~と思ったのですが、模型屋さんに行けば各国の軍艦や現代の自衛隊の艦艇のプラモデルはたくさんあるものの、現代の日本を支えている内航船のプラモデルは皆無です。

ほんならいっちょ自分で作ってみるか~と軽い気持ちで自作してみることにしました。

モデルは499総トンの一般貨物船、スケールは150分の1スケールとしました。

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googleで画像検索して完成イメージを高めつつ、船の全長や幅などのデータから全体の縮尺を割り出していきました。

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船は複雑な曲面をしておりますので、模型を作るにあたって船体線図という船の形を表す曲線を決めなければなりません。googleアースで見た船の航空写真や、ネットで公開されている図面を参考にしながら、なめらかな曲面になるようにそれぞれの断面でのつじつまが合うまで泣きながら何度も線を引きなおしました。

軽い気持ちで始めた模型製作でしたが、このへんですでに「大変なことに手を出してしまったんじゃないか」と察し始めました。

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船体線図をもとに検討用の型紙を作ってプロポーションを確認したりして、もうこのへんで作り始めても大丈夫かな…? と思ったら建造開始です。厚紙にでっち上げた図面をトレースしていき、切り出して船体の骨格を作っていきます。

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骨格はホームセンターで買ってきた工作用の厚紙です。厚紙の骨格の間に発泡ウレタンを差し込んで接着して、厚紙の骨格に合わせてカットして削っていきます。発泡スチロール用のヒートカッターがあると便利です。

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船の形ができてきたら、タミヤのポリパテをまんべんなく塗っていきます。カットがヘタクソすぎてウレタンがボコボコで先が思いやられますが、この世のたいていのことは、パテを盛って削ればなんとかなります。
パテを盛っては紙やすりで削り、盛っては削りを繰り返し、滑らかな船体を目指していきます。

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ある程度なめらかな船体が見えてきたら、甲板(こうはん)をはりつけ、現物合わせでブルワーク(波除け)を切り出し、無理矢理接着します。一般的には「甲板(かんぱん)」と言うイメージですが、商船では「こうはん」と言うのが一般的のようです。

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ブルワークに係留索を通すための穴をあけ、補強板を現物合わせで接着していきます。このあたりですでに発狂寸前ですが、ここを頑張れば完成後の見栄えがぐっとよくなるので頑張ります。

同時に操舵室や居住区を作っていきます。三階建ての建物、といった感じです。ほとんど見えなくなる補強なども入れています。

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操舵室の中はせっかくなので作り込んでみよう、とネットで検索した画像を参考にいろいろと作ってみました。

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ある程度船体や居住区が出来てきたらサーフェイサーを吹いて、デコボコしているところや傷・ヘコミを再度埋めて微修正しました。船に見えてきたぞ~!と踊りたくなりました。

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大まかな形ができてきたので、次は細かな装備を作っていきます。

まずは貨物船の命、貨物倉(カーゴホールド)と、ハッチカバーです。
大きさや構造を写真をもとに力ずくで割り出し作りました。
カーゴホールドは貨物を傷つけないように板張り仕様とし、ホームセンターで買ったフローリング床補修シートを全体に貼りました。

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その他の装備も作っていきます。写真を見る→なんなのか調べる→大きさや構造を推測する→作る、という工程を装備の数だけ繰り返さなければいけないためめちゃくちゃ時間がかかり、このへんで心が折れてしばらく放置してしまったりしました。なんと検索したら辿りつけるのか分からないので五里霧中のGoogle検索です。

「コンパニオン」という設備について調べるために「船 コンパニオン」で調べたら、コンパニオン付きの屋形船の宴会プランがたくさん出てきたので膝から崩れ落ちたりしました。

幸いにもメーカーが図面を公開している装備もあり、そういうときは涙を流して喜びますが、図面が読めるわけではないのでだいたいの寸法や構造のイメージをなんとか読み取り、プラ板で再現していきます。

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そんなこんなで放置期間を挟み、天気もいいし塗装しちゃうか~と塗装したところ、いままでの苦労が報われるようにカッコいい船体やパーツが現れました。

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ファンネルマーク(煙突に表示する海運会社のシンボルマーク)は、会社の東京出張のついでに寄った秋葉原で買ったガルパンデカールを貼りました。
そうです、ガルパンおじさんです。

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パーツが揃い完成が近づいてきたところでインクジェットプリンターでシール用紙に船名や各種表示を印刷し貼りつけました。

西住殿「本船を『あんこう丸』と命名する。」

大洗女子汽船㈲が所有し、大洗女子学園船舶科の卒業生が多数在籍する大洗女子海運㈱が運航する貨物船「あんこう丸」で、学園艦への物資輸送や戦車のLO-LO荷役・輸送もこなしているいう脳内設定です(オタク特有の早口)。

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ということでなんやかんやで半年くらいかかってしまいましたが、なんとか完成しました!

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同時にGoogleアースを参考に力ずくで岸壁の模型も作っておいたので、屋外で自然光で撮るとめちゃくちゃ楽しいです。

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そして後で気付いたのですが、1/150スケールという鉄道模型のNゲージのサイズで作ったことが幸いし、新幹線車両の海上輸送シーンの再現もできました。新幹線も、工場から博多など車両基地のある場所まで船で輸送しています。

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長くなってしまいましたが、ホームセンターや模型屋さんで買える材料で貨物船をフルスクラッチした記録です。

材料は厚紙、バルサ材、プラ板、プラ棒その他で、既製品の船舶模型用のパーツは一切使っていません(そもそも市販されていない or あっても高価…)。

軽い気持ちで始めた貨物船のフルスクラッチですが、半年以上かかってしまいました。その間にものすごく勉強になりましたし、なぜこんなカッコいい乗り物のプラモデルが市販されていないんだ、なぜ物流を支える船や船員さんのことを知らなかったんだ、…と思いました。

製作の過程をtwitterでつぶやいていると、本職の内航船の船員の方からコメントをいただいたり、船のこと、装備の名称を教えていただいたりとものすごく励みになりましたし、助かりました。本当にありがとうございます。

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今後はこんな感じで軍用の艦艇以外の現代の日本の船のプラモデルがいっぱい発売されたらいいな~と夢見ています。

今の日本の船もカッコいいですよ!

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