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テレビで見た景色に出会いたくて

夫と私は山で出会っている。だから、しばらくの間は、2人で出かけるといったら山に登ることだった。

だが、そのことに変化が訪れる。

いつの頃からか、2人が出かける目的は、テレビで見た景色に出会うことになったのだ。



今、夫婦で出かける場所は、人が生活をしている景色だ。人の営み、「普通」と呼ばれる人たちの一喜一憂が詰まった場所。

つい先日も、テレビで見た景色を自分の目で確かめるため、とある場所へと立ち寄ってきた。

それは、茨城県の水戸駅界隈。

噂の猫さんがアルバイトとして勤めているというタバコ店。

NHK総合で放送されている『ドキュメント72時間』をきっかけに知ったのだが、他のテレビ番組にも取り上げられていて、比較的有名な猫さんだ。

テレビで見た景色に出会おうとして立ち寄ると、「ホントにあるんだぁ!」「テレビと一緒だ!」という感想を持つことが多い。

今回の場所も、猫さんは超マイペースでぐぅぐぅと昼寝をしていた。猫そのまんま。

猫のあるがままの姿は、テレビで見た景色を彷彿とさせる。そして、何だかホッとしたような気持ちになった。



この番組で取り上げられた場所は、そこを訪れる人たちの物語であるから、自分がその場にいくと、まるでその景色の一部になったかのような感覚がする。

人類という大きな流れの中の小さな存在になれたような気がするのだ。

「究極には人間は1人で生きている」と思う。だから私は孤独は宿命だと思っている。

その感覚を魂の奥に刻んでいるから、テレビで見た人たちと同じ景色の中にいることに安堵を感じてしまうのだろう。

人は、どこから来て、どこへ行くのか。

自分の人生はこれでよかったのか。

よかったと思う以外に選択肢はない。

そんな葛藤を繰り返していたら、頭の中に『川べりの家』が流れていた。



for reference


”水戸駅近くに、ちょっと変わった看板猫がいる商店街がある。名前はハチ。額にある“八の字”模様から「末広がりで縁起がいい」「情けない顔がかわいい」と人気が沸騰。店番をするタバコ店には、宝くじを買う人や願い事をしに来る人が殺到している。そんな思いを知ってか知らずか、ハチはマイペースに寝ていたり、店の奥に引っ込んだり…。“福を招くネコ”に願いを託し一喜一憂する、商店街の人々の3日間。”  
引用元 2015年6月26日放送 「ウワサの猫と商店街」