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父と私とジャイアンツ

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2019年6月に他界した実父との回顧録です。
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2019年9月の記事一覧

親として働く姿を見せること

母とゆっくり過ごすのはこれが最後になるかもしれないという気持ちで時間を過ごした。6泊7日という里帰りは、この先2度とないだろうと思ったからだ。 私が子どもの頃は大変貧しかった。父と母は努力を重ねて運を味方につけ、劇的な脱貧困を成し遂げている。 親が貧困だと子どもも貧困になる「貧困の連鎖」という話を聞く。事実そうかもしれない。けれども、我が家に限ってはそうならなかった。 理由を一言で説明するのは難しい。いろいろな要素が複雑に絡み合っていることは確かなのだが、周りの引き立て

父と一緒にジャイアンツ

ジャイアンツがリーグ優勝を決めた。 私に野球観戦を教えてくれた父はジャイアンツの大ファンであった。紆余曲折あり、私が父と一緒にジャイアンツを応援するのは、今年が初めてだ。 「父と一緒にジャイアンツを応援する」という流れになったのは、去年の秋、たまたま原監督を見たことがきっかけだった。 父の命が、それほど長くはないだろうという話になったのは去年の4月のこと。そこから、父の要望で一緒に旅行をすることになる。 私たち夫婦と、私の親という4人組で旅行に行きたいという、父の切な

ヤモリ

実家にはヤモリがいる。 夜になると決まった窓の外側にはりついているのだという。 このヤモリは数年前に生まれたヤモリだが、また別の大きさのヤモリもいるのだとか。毎晩のように同じような窓に現れるのだそうだ。 家にやってくるのには、何か理由があってのことだと思うが、何年も居つくからには、この家にそれ相当の魅力があるのだろう。 ヤモリを初めて発見したのは父。5、6年前にトイレの窓にはりつくヤモリを興味津々で見入っていたのだとか。 父の驚いた様子、歓喜の表情、興奮の口調などを