父と一緒にジャイアンツ
ジャイアンツがリーグ優勝を決めた。
私に野球観戦を教えてくれた父はジャイアンツの大ファンであった。紆余曲折あり、私が父と一緒にジャイアンツを応援するのは、今年が初めてだ。
「父と一緒にジャイアンツを応援する」という流れになったのは、去年の秋、たまたま原監督を見たことがきっかけだった。
父の命が、それほど長くはないだろうという話になったのは去年の4月のこと。そこから、父の要望で一緒に旅行をすることになる。
私たち夫婦と、私の親という4人組で旅行に行きたいという、父の切なる願いを叶えるために、昨年の秋、帰省した。
ドライブ旅行を終えて、羽田空港に向かうために立ち寄った空港で、ジャイアンツの「秋キャンプ歓迎セレモニー」に遭遇する。
原監督の挨拶に、優勝する覚悟のようなものが肌で感じられた。本気度とでもいうのだろうか。プロだからそのような覚悟を持つのは当たり前なのだろうけど。
直に見る機会があったことも何かのご縁。
父にとっての最後の野球観戦の年になるかもしれないから、私も一緒に応援しようという気持ちになった。
「一緒にジャイアンツを応援したい!」
と父に告げたのは、3月のこと。
「今年は一緒に応援してくれる人がいるから、ジャイアンツを応援する楽しみが増えるなぁ。」
と、母に、嬉しそうに話していたそうだ。
父と一緒に過ごした最後の夜は、若林選手のプロ1号ホームランが出た試合をテレビで観戦した。
父が入院していた時には、新聞の野球欄を持っていくのが日課だった。
他界する数日前、父にはテレビを見るような体力は残っていなかったが、30分おきに母を呼び出し、ジャイアンツの試合の状況をたずねていたそうだ。
父は、ジャイアンツが首位にたったことを確認して、この世を去る。
ジャイアンツは順風満帆に首位を疾走してきたわけではなかったが、首位を守り切り優勝。
試合観戦の後、原監督の胴上げからインタビューの間に仏壇に報告した。
「親孝行したいときに親はなし」といわれるが、私は、ギリギリで間に合った感がある。
それを言葉にしたら「調子に乗るな!」と父に一括されそうだが、今夜だけは上機嫌で許してくれることと思う。
ジャイアンツが優勝した夜なのだから。
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