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コミュニティ財団の2030年ビジョン  「暮らしと共にある自治を支える。」

 日本におけるコミュニティ財団は、2009年に「300人を超える市民からの寄付」により京都地域創造基金が設立されたことを契機に、全国各地で「地域性と市民性」という言葉をキーワードに市民の寄付を財源にしながら設立されて広がってきました。その多くは都道府県を取り組みの一つの単位としてきていましたが、各地での設立が広がる中で、その活動単位も変化してきています。また、進む人口減少、各地で頻発する自然災害、そして新型コロナウイルスの影響により様々な課題が表面化し、深刻さを増していく中で、これからの地域においてコミュニティ財団が「コミュニティ成長の装置(community development)」として機能し続けることを目指し、各地のコミュニティ財団が統一的に目指す2030年のビジョンを提案します。


2030年の地域におけるコミュニティ財団の立ち位置
各地のコミュニティ財団の目指す姿

 コミュニティ財団は、その対象とする「コミュニティ」を人々の暮らしの範囲(生活圏)と考え、そのコミュニティにおいて起こる課題の解決や価値創造の実現を細やかに支えながら、身近にある問題について民間ならではのスピードをもって対応しています。市民にとっては「自分のまちを自分でつくる」ことに参加するための方法の一つとして認知されており、寄付だけでなく様々な取り組みにおける資源の調達や仲介に関する相談が寄せられています。自分が持つ資源をまちのため、未来のために活用したいと思う方にとっても頼りがいの存在として、相談が寄せられる組織となっています。
 また、その地域において緊急な対応が必要な自然災害などが起きた際には、速やかに「行動したい・支えたい」と思う人たちの気持ちを受け止め、基金の立ち上げや行動する方々への助成などの役割を果たしています。


1.そのために行われている事業

 コミュニティ財団は、地域に根差したボランタリーな行動力を軸にする身近な活動への助成から、地域特有の課題を解決するための新しい事業への投資まで、地域における様々な課題解決や価値創造の取り組みを継続的に支えています。
 特に、行政や他の機関では応援できない・支援できない取り組みを支えることにより、市民による「表現の自由」や「言論の自由」を守り、まだ社会に認知されていない課題や差別などに対する取り組みを支え、人々の認知を広げ、参加を掘り起こしています。
 また、こうした取り組みを支えるために、志ある市民の寄付を原資とした基金設立を核となる機能と位置付けて取り組み、その寄付も資金だけでなく、空き家や山林、農地などの不動産や職能や専門性を発揮する時間の提供であるプロボノやボランティアまで、様々な資源を仲介し、その仲介により参加の機会を提供しています。あわせて、より参加を高めるために寄付や融資だけでなく社会的投資による案件形成にも取り組み、多様な参加を引き出しています。
 そして、コミュニティ財団で働くプログラムオフィサーはその専門性を発揮し、資金仲介だけなく、組織基盤の強化や事業の継続化等に関して、様々な専門家や専門性のあるNPO、企業、行政等とも協働しながら経営支援や仕組み化を支え、コレクティブインパクト型の取り組みに地域総参加で取り組めるようにファシリテートを行っています。
 また、その地域に暮らす市民にとっては、ゆりかごから墓場までの生活を支える市民サービスの創出に関わっている組織であり、同時に、遺贈寄付も含めて、様々なライフステージや人生の節目で個人の財産を希望するテーマで地域のために活かしたいと考えた際に、それを実現できるわかりやすいサービスを提供しています。


2.それを支える組織

 コミュニティ財団の経営や運営に関わる役員や会員などは、地域における小さな声に気づき、それを広げていくことが自らの役割であることを理解しており、日々の暮らしの中でそれを実践しています。コミュニティ財団に関わる人は年々増えており、寄付だけでない様々な関りが生まれています。地域の企業や事業所との対話も日々行っており、地域の誇りやアイデンティティとなっている歴史遺産や行事、文化、スポーツなどとも関わりあっています。また、そのことを通じて寄せられる声も新たな取り組みのヒントとなり、市民の参加拡大に繋がっています。
 そして、地域金融機関とは地域における資金循環を支える先輩として敬意をもって関り、様々な事業やサービス開発などにも共に取り組んでいます。
 また、地域に根付き、市民の行動を支えているNPO支援センターやまちづくりセンターや企業財団、個人財団などの様々な中間支援組織・インタミディアリと日常的な連携をしており、それぞれの強みを活かしながら地域を支えています。
 

3.それを支える経営

 コミュニティ財団は地域と共にある組織として、地域に支えられて経営しています。多くのコミュニティ財団では寄付による基金等の管理費やコミュニティ財団の運営への寄付など、多くの方々から活用されると共に支援を得ることによってその基盤を維持しています。あわせて、助成の原資においては地域の人々からの寄付を大切な基本としながら、他のインタミディアリとの協調助成や休眠預金や企業寄付、行政との協働によるふるさと納税や金融機関との社会的投資など多様な資金を組み合わせると共に、何より地域での案件を重視しながらファンドレイザーとプログラムオフィサーが連携して適切な支援に取り組んでいます。
 また、その運営財源を得ることが目的化しないように、常に運営の改善や効率化、省力化に取り組み、無理なく運営できる体制構築に取り組んでいます。具体的には域内の中間支援組織・インタミディアリとの連携や役割分担、様々なICTサービスなどの導入による一元化や効率化、各種の研修参加やOJTによるプログラムオフィサーなどのスタッフの能力向上や様々な働き方の導入に取り組むことでそれを実現しています。
 特にスタッフの労働環境や組織への多様な関り方の実現には注力しています。給与水準や休暇制度なども一般企業と遜色がなく、安心して働ける環境が実現されています。また、パラレルキャリアの一つとして様々な方がコミュニティ財団に関わり、その能力を発揮しています。
 そして、多くの市民の大切な寄付をお預かりする立場として、ガバナンスの向上とコンプライアンスの順守には重要な柱として取り組んでいます。多くのコミュニティ財団は、全国コミュニティ財団協会による第三者認証を受けると共に、専門家による支援をしっかりと受けながら、独自でのガバナンス向上に取り組んでいます。あわせて情報開示にも積極的に取り組み、透明性の高い運営を実現しています。


 これらの1~3の事業、組織、経営の状況を実現することで、コミュニティ財団は地域において2030年に目指すべき立ち位置に存在しており、コミュニティ成長の装置として、自身も成長をし続けることを目指します。

【コミュニティ財団2030年ビジョン動画(ショート版・5分)】

【コミュニティ財団2030年ビジョン動画(ロング版・20分)】



全国コミュニティ財団協会の役割
全国コミュニティ財団協会が会員コミュニティ財団がビジョンを実現するために取り組むこと


 全国コミュニティ財団協会は、各地のコミュニティ財団においてこのビジョンが実現し、各地において持続的に役割を果たし続けるため、以下の役割を担っています。


 1.プログラムオフィサー、ファンドレイザーの知見共有の機会と研修の開催
特にプログラムオフィサーにおいては、その専門性確立に貢献し、よりよいプログラム開発が地域において行われるように支援をしています。

 2.理事、監事の研修と第三者認証の実施
各地のコミュニティ財団のガバナンス向上を支えるために、各種研修会や第三者認証制度の運用を常に改善を重ねながら実施しています。

 3.生活圏を超えた連携の支援
生活圏域が重なる、または近しい地域間での連携は地域を超えて同じ課題に取り組むコミュニティ財団同士の連携、コレクティブインパクトの創出などを支援しています。
 
 4.コミュニティ財団の設立支援
各地でコミュニティ財団やそれに類する組織の立ち上げを目指す人に対して、その設立を支援するとともに、協会内による相互支援・成長関係の構築を行っています。

 5.各種の調査と提言
コミュニティ財団の状況調査や各地で取り組む支援から、解決が必要な課題を明らかにするための調査と政策提言に取り組んでいます。

 6.ビジョン実現のための取組
その他、本ビジョンを実現するために必要な取り組みを実施し、2030年に本ビジョンが実現されています。


一般社団法人 全国コミュニティ財団協会
2021年6月29日


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