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セテラ作品の思い出⑯ 映画的な、あまりに映画的なトリュフォーが大好きです。

ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー』は、まさにヌーヴェルヴァーグ入門篇、映画の教科書です。

カンヌ映画祭では≪カンヌクラシック≫という部門があり、クラシック映画の修復版や最近では4K化された名作など、映画ファンがワクワクする特集企画を毎年おこなっています。2009年のカンヌクラシック部門で上映されたこのドキュメンタリー映画は、映画の仕事を始めてすぐの頃にトリュフォーの大ファンになりました私にとって夢のような映画でした。タイトルは”Deux de la vague” 、これは二人の出現によって生まれた波、という意味でしたから、『ふたりのヌーヴェルヴァーグ』という邦題で、さらに二人とはゴダールとトリュフォーなので、副題としてつけました。私は断然トリュフォー派で、特にアントワーヌ・ドワネルものが好きなのです。デプレシャンを初めて見た時も、トリュフォーの再来、というコピーをつけて宣伝して、トリュフォー的なものを感じたのでした。

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(フランス版ポスタービジュアル)

トリュフォーが1959年にカンヌ映画祭で『大人は判ってくれない』(映画史に残る名邦題)でセンセーショナルに初の長編デビューして監督賞を取りましたが、『ふたりのヌーヴェルヴァーグ』は、それから50年後に、ヌーヴェルヴァーグ生誕50周年記念として作られました。つまりトリュフォーの『大人は判ってくれない』がヌーヴェルヴァーグの誕生の作品と言われているからです。そしてそのあとすぐに『勝手にしやがれ』を発表したゴダールによって、ヌーヴェルヴァーグの評価は確固たるものになったのです。このドキュメンタリーは、その二人の映画デビューの誕生の時から固く結ばれた友情、その後決別していく二人の記録で、その過程は手に汗握るものです。二人の映画のハイライトシーンが年代順にほぼすべて見られるので、まさにヌーヴェルヴァーグを知りたい人には手引きのような入門篇なのです。そして何よりも興味深いのはその二人から愛されずっと二人の映画作家にインスピレーションを与え彼らの映画に主演し続けた俳優、ジャン=ピエール・レオの映画史を追うドキュメントでもあります。

この丁寧に作られたドキュメンタリー映画はフランスの有名な映画史評論家、アントワーヌ・ド・ベック(脚本)とエマニュエル・ローラン(監督)との共同作品ですが、わかりやすく丁寧にヌーヴェルヴァーグの映画史を知ることができて、しかも作り方が飽きさせなく上手で何よりも有名映画のハイライトシーンはすべて出てくるので、お腹いっぱいになります。

この映画の日本語版字幕はセテラの映画の実に多くの字幕をつけてくださった寺尾次郎さんです。ヌーヴェルヴァーグの作品はほぼすべて手掛けていましたし、デプレシャンの字幕は必ず寺尾さんでした。デプレシャンの字幕は難しいので、よく直接電話したりして聞いていました。この映画を見た時にも、彼らは本当に映画に命かけていたね、こんなに熱心に映画にすべてを注いだ人たちって凄い・・・と寺尾さんと話した覚えがあります。もう寺尾さんに映画のことを聞いたり、字幕を付けていただけないのが残念です。きっと私と同じように思っている映画ファンの人は多いと思います。この映画は新宿K’s Cinemaをはじめ全国で上映していただきましたが同時に魅力的なゴダールやトリュフォーの映画もたくさん上映するプログラミングをされて映画ファンにとっては至福の期間だったと思います。

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山中陽子

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