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雨坂流キャラクターの作り方①

私はどちらかといえば「感覚的に」創作をしています。
そのため、キャラクターを作るというより、勝手にキャラが生まれて勝手に動き出すイメージなのですが、今回はキャラクターが生まれてから物語に登場するまでについて、言語化してみました。

作例

前置き
電子書籍で出している「羽倉茶葉店シリーズ」の設定を見直し、まとめている時でした。「羽倉茶葉店」は他の作品と世界観を共有しており、いわば中心となる物語です。
その内の一つである「俺らは夜明け」の登場人物、「佐々山俊」の裏設定として「東京における魔法使いの中で上の方にいる一族であり、権力者」というものがありました。
ですが、俊はそれを鼻にかけることなく、気ままに過ごしています。

ということは、佐々山家には後継者となる他の人物がいるのではないか?<起点>

プライドが高くてナルシストな男性キャラが思い浮かぶ<ひらめき>
外見は、背が高くて痩せ型で眼鏡

佐々山俊を仮に次男として考え、俊が21歳であることから、年齢は20代後半とする
権力を持つ一族の後継者ということは、自身も魔法使いとして働いているのが自然

名前を「佐々山玲一」とする
※名付けもほとんど、キャラクター自身が名乗って来る感じですが、他キャラとのバランスを見て変更することもあります

このキャラを主役にした物語を書きたいと考えた時、玲一の隣に高校生くらいの少女が見える<ひらめき>

この少女は何者? 何故そばにいるの?<疑問>

玲一のいとこで、玲一の近くにいるとおもしろいからそばにいるらしく、互いに恋愛感情は皆無<回答>

少女の名前を「佐々山美汐」とし、二人のさらなる関係性を考える<熟考>

二人は実家が近所で、俊も含めて仲良く育ってきた
この時点で美汐と俊は兄妹、玲一は一人っ子という設定が決まる

玲一は美汐の通う高校で教師をしており、放課後になると美汐がやってきて二人で過ごすことが多い
というのも、俊が大学の寮に入っているためであり、家に帰ってもつまらない(かまってくれる人がいない)から

玲一と美汐の物語を考え始める<ストーリー構想>

ここで作者の意思が介入し、ツッコミ不在のコメディにしたいと思う

そのためには、美汐もちょっと変わったキャラにした方がおもしろいはず<一度戻って、再びキャラ設定の熟考>

ぬいぐるみを持ち歩いていて、それがしゃべることにする(美汐の一人二役)

変わった性格の美汐を、玲一はどう思っているのか?<疑問>

いとこだし、小さな頃から知っているため、時に呆れたりはするが、基本的には妹のように思っている<回答>

玲一は教師の傍ら、フェアリードクター(妖精博士)をしており、精霊や妖精について詳しいことにする<物語を動かすための設定>

物語の大まかな流れ(プロット)が出来た後、その物語の一部を「羽倉茶葉店」の中に収録したらどうだろうと考える<ひらめき>

玲一が羽倉と会った時の反応は? 態度は? 口調は?
また、魔法使いという設定から考えて、純血である宵田についてはどう考えている?<疑問>


玲一はプライドの高い一族の生まれで、自身もプライドが高く、魔力も強いため、魔力の低い羽倉を見下しているのではないか
純血の宵田に対しても、対抗心や嫉妬心のようなものを抱いている可能性がある<現時点で決まっている設定から導き出される回答>

しかし、玲一はナルシストだが性格は悪くないし、美汐に対しても優しく接することができ、生徒からも人気のある教師である<矛盾の提示=葛藤の誕生>

羽倉については内心で見下しているものの、一社会人として相応しい振る舞いができる人間であるため、基本的に失礼なことはせず、普通に接する
宵田については、むしろ憧れているのではないか? 両親や親戚がこぞって宵田家を目の敵にしていた場合、その中で育った玲一は反面教師として、宵田家にいい印象を持つのではないか?<新たな回答>


玲一は困ったことがあって羽倉を頼らざるを得なくなる、というのも、プライドが高いために周囲の人たちに自身が困っている姿を見せたくないから
親からは馬鹿にされる可能性もあり、玲一にとってそれは絶対に避けたいことである<回答および葛藤から導き出される心の状態>


「羽倉茶葉店」における玲一の物語のプロットを作るのと同時に、玲一に関する設定を固める<終点>

実際に執筆を開始する
(玲一の登場するエピソード「始まりのバク」は「羽倉茶葉店〈5〉」に収録)

※ただし、執筆を進めていく上で設定が変わったり、新しい設定が出てくることも多いため、すべてのキャラクターがこうした流れを経ているわけではありません

作例から見るまとめ

・ひらめきを元に、疑問と回答を繰り返すことでキャラクターを作っていく
・周囲の人間との関係性や境遇などを考えることで、キャラクター性が見えてきて、個人として抱く葛藤などの深みも出やすくなる

また、あえてその葛藤を引き起こす状況に置くことで、キャラクター自身の深みとともに物語としての深み、ドラマも生まれるようになります。
そこから逆算して、家庭環境などが垣間見えることもあるので、物語とキャラクターの心情を絡めて考えながら、設定を深く掘り下げていきましょう。

キャラ設定で詰まったら

キャラ設定で詰まった時にやるのが「キャラクターに質問をする」という方法です。
家族のことや好きな食べ物、小さな頃の思い出、今の自分に対してどう思っているか、これからどうしていきたいかなど、思いつく限りの質問をするんです。
また、他のキャラと会話をさせることで、そのキャラの新たな一面を知ることもありました。

昔には「お題」や「座談会」などの質問テンプレートが、有志により多数配布されていたこともあり、私はそれらを使って、楽しくキャラ設定を固めていました。今でも配布している方がいるかもしれませんので、気になる方は検索してみてください。

また、ギャップを作るのもキャラクター設定には有効です。
よくあるパターンだと、体格のいい強そうな男性が実は可愛いものが好き、といったものですね。
普段は冷たいが好きな人の前では優しくなる、いわゆるツンデレもギャップの一つです。
「~だが~である」という設定は、お手軽にキャラ設定を深められますし、そこから派生して新たな設定ができることもあるので、おすすめです。

キャラクターを作る時に意識すること

人間の感情は一つではなく、何か起きた際に抱く感情も一つとは限りません。
例えば、好きな人からプレゼントをもらった時、それが自分の好みではないものだったら、「嬉しいけれど困惑した気持ち」になるのではないでしょうか?
仮に対立する相手がいると設定した際には、ただ相手を嫌うだけではなく、その根底にある感情は何かと考えを巡らせます。それは嫉妬かもしれないし、恨みかもしれない。羨望かもしれないし、本当は相手と仲良くしたいのかもしれない。
そこからキャラクター性は出来てくるものだと、私は考えています。

また、優しいキャラクターがいるとして、「困っている人を見ると放っておけない」のか、「先に察して無言で助けてくれる」のか、「肝心な時にだけ優しい」なのかと、「優しさ」にもたくさん種類があることが分かります。
「冷たいキャラクター」や「元気なキャラクター」も同様です。
どういった状況の時にその性格が出るのか、どういった反応を見せるのかで、キャラクターの差別化は可能になります。

キャラクターにも、いわゆるテンプレートが存在しますが、それだけでは味気ないものです。私たち人間がみんな違うのと同じで、キャラクターもみんな違います。
経験してきた過去は元より、両親との関係や家庭環境、小学校や中学校でどんな友達と出会い、何を学んだか、自身の置かれた境遇に何を思うのか……などなど、考えだすときりがありませんが、その分だけキャラクターは魅力的になっていきますし、リアリティも出てきます。
ファンタジーであれば、どんな魔物と戦ったことがあるか、過去にどんな傷を負ったのか、普段はどんな訓練をしているかなど、その世界観に沿った日常や光景、はたまた歴史を想像し、考えることで、おのずとそのキャラクターの考え方や価値観が見えてきて、性格も決まってくるでしょう。





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