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日本人がウクライナ人の気持ちを完全には理解できない理由

まず最初に申し上げたいのは、
自分は右とか左とかいう考えには興味が無く、
単に状況に応じて必要なことをする、必要なものを守る、
そういう考えを持っています。

また、戦争はどんな理由があれ、要は破壊であり、暴力です。
どちらに正義があろうがなかろうが、そこに訪れるのは死と絶望です。

そして、身の回りでそのようなことが起きる事を望んではいません。

それを踏まえて、以下の文章をお読みください。


◆国を守りたい気持ちがわからない

ウクライナ情勢が日に日に悪化していくに従って、
様々な論客が意見を戦わせる中、日本人の意見として、

「国よりも命の方が大事」
「国のために戦うなんて馬鹿げている」
「さっさと逃げたらいい」
「10年後にはプーチンが死んでいるだろうから、その後、国に帰ったらいい」

という意見も多く上がっています。

正直、唖然としました。
明日には国がなくなってしまうかもしれない人々に、
なんて酷い事が言えるのかと。

また、世界のみならず、日本各地でも反戦デモが行われておりますが、
中にはそれらに"便乗"した活動も行われています。

今日も、僕の自宅近隣にある駅にて、
自衛隊基地からの軍用機の離発着に抗議集会が行われていましたが、
彼らは今回のウクライナ情勢と絡めて、
『日本が自衛隊のような軍事力を持っている事が余計にロシアを挑発している』
『武器を持たぬものに攻撃はしてこない』
という主旨の発言をご老人たちが繰り返していました。

どこかで聞いたような内容だなあと思ったら、
『先にそちらが挑発した』
『武装解除すれば侵攻を止める』などと、
ロシアがウクライナに侵攻した際に掲げた大義名分と似たり寄ったりだなあと感じました。

◆国を奪われる気持ちがわからない

ウクライナの人々からすれば、命は助かっても、
2度と自分の家には帰ってこられない。
帰ってこられても、自分が住んでいた家や街には別の人々が住んでいる。
風景もすっかり変わってしまっているかもしれない。
その事が日本の人々にはなぜわからないのか。

日本の人々がウクライナの人々の気持ちが理解できず、
さらに、一部の人々が侵略者と同じような論法で平和を主張している。
恐らくその理由は、現在の日本の置かれた状況に対して、
多くの人々が誤った認識をしている事が関係しているのではないでしょうか?

その誤った認識とは、日本が先の大戦において、
アメリカを中心とした連合軍に"無条件降伏"したという事です。

その誤った認識があるからこそ、日本の多くの人々が、
「無条件降伏しても大丈夫だった。だから命を大切にした方がいい」
と考えているのではないか、と思うのです。

◆日本は無条件降伏などしていない?

歴史の授業において、『日本は無条件降伏した』と教えられておりますが、それについては、今でも論争がいまでも続いていて、
実は無条件ではなかったのではないかという意見も多数あります。

なぜならその証拠に、軍事裁判で真っ先に裁かれるはずの天皇は、
戦犯になるどころか起訴さえされていません。

当時のアメリカの世論調査では、天皇を絞首刑にしろとか、
裁判にかけろという意見が圧倒的に多かったそうなのですが、
「国体護持」の条件つきの降伏であったとすれば、
それを行う事で約束を反故にし、占領統治が困難になる為、
当時の占領軍としては、それはできなかったのではないでしょうか?

◆なぜ、アメリカが譲歩したのか?

なぜ、アメリカが「国体護持」の条件付き降伏まで譲ったのか、
理由を考えるとすれば、2つあり、
1つは硫黄島や沖縄での死を恐れぬ日本兵の姿を見て、
本土上陸作戦を避けたいと思った事が大きいのではないでしょうか?

実際、1945年6月18日のアメリカ軍幹部と政権幹部の合同会議で、
九州上陸作戦が行われれば、作戦に加わった19万人のアメリカ将兵のうち、約30%のおよそ6万3000人が死傷するという試算が示されました。
のちの関東上陸作戦ではさらに膨大な死傷者が発生する恐れがあり、
その為、本土上陸作戦の代替案として、日本が望む「国体護持」という条件付きで降伏を求めることを考えた可能性があります。

よく、日本の将兵は無駄死にしたと語る人がいますが、
それは必ずしも正しい考えとは言えないことがわかります。

彼らの決死の戦いが「国体護持」の条件付き降伏案を引き出した、
とは考えられないでしょうか?

戦争における死を美化するつもりは毛頭ありませんが、
彼ら日本の将兵の犠牲の元に生きる僕らに、
彼らの死を嗤う資格はありません。

◆ソ連の占領よりも早く・・・

もう1つ、アメリカがこの降伏案をとった理由は、
ソ連の参戦も大きかったでしょう。

予想に反して、日本は原爆投下後もすぐには降伏せず、
一方、ソ連は、8月15日に参戦すると言っていたにも関わらず、
原爆投下をみて、慌てて8月9日に参戦してきました。
早く日本を降伏させないと、ソ連と共同で日本を占領する事になり、
もう無条件降伏にこだわってはいられなかったのです。

ちなみにこの時、ソ連の日本占領を許していたら、
恐らく傀儡政権を作ったのち、日本人の半分ほどをシベリアに強制移住させたあと、ロシア人を入れて日本本土を支配しただろうと言われています。
そうならなかったのは、当時の日本を占領したアメリカが、
たまたま領土的野心を持っていなかったからです。

とはいえ、アメリカ国民には、日本が無条件降伏したとして発表しました。
そうしないとアメリカの世論は収まらないからです。

そして、日本の占領にあたって、マッカーサーに無条件降伏したものとして占領政策を進めるように命じた、そう解釈もできるというのが、
日本は無条件降伏はしていなかったとする意見の根拠となっています。

◆それでも完全な「国体護持」はできなかった

そう考えると、日本が現在のような状況にあるのは、
日本が無条件降伏しなかった事と、そして降伏した相手がアメリカだったからだと言えると思います。

ただ、結局のところ、日本は「国体護持」できたのかといえば、
「国体」のうち、国家神道と軍国主義は破壊され、
そして、日本人は、
「戦争を賛美してはいけない」
「戦争で戦う人を英雄視してはいけない」
「国のために自分を犠牲にすることはよくない」
「国のために死ぬことを名誉としてはいけない」
という考え方を植え付けられ、
憲法に戦争放棄条項を明記されました。

つまりこれが何を意味するかというと、
侵略の戦争はもとより、自衛の戦争であっても、
とにかく戦争はしてはいけないという事です。
何故なら、アメリカの占領の目的が、日本を自衛戦争さえできない国にすることだったからです。

撃たれても、身を守ることも撃ち返す事も許されない。
少なくとも今の自衛隊はそうです。
国が占領されるということはつまりそういう事なのです。

◆ウクライナが降伏しても、日本と同じにはならない。

では、話をウクライナ情勢に戻しましょう。
ロシアに降伏したウクライナが、果たして戦後の日本と同じような権利を維持できるでしょうか?

それは、先の大戦時のリトアニアに対するソ連の蛮行を見れば明らかです。

当時リトアニアがソ連の侵攻を受けて、勢力圏に入れられた後、
ソ連が一方的に押し付けた条約を守らなかったと言いがかりをつけられ、
最後通牒を突きつけられ、政権交代を要求されました。
その後、傀儡政権が樹立し、以後、徹底的にソ連による属国化が行われ、
再び独立を回復するのは50年後の1990年の事でした。

一方、ソ連がフィンランドに侵攻した際、フィンランド軍は激しく抵抗し、
ドイツの敗戦の前、1944年の9月にソ連との休戦に持ち込みました。
その事で、東欧諸国のような共産化と属国化は免れました。

ウクライナからすれば、
ロシアがやっている事はソ連時代のそれと全く同じ事。
リトアニアと同じ目に遭うよりも、フィンランドのように抵抗すべきと考えてもおかしくありません。

◆日本も"次"はない

今回のウクライナ侵攻により、大国の力による現状変更というものが、
実際に起こるという事が明らかになりました。
そして、欧米諸国はこの事態に対して、直接手が出せない状態にあります。

そうなると、駅前の集会でご老人たちが語っていたような、
『武器を持たぬものに攻撃はしてこない』
なんて話は通用しなくなります。

日本の周辺には、ロシアや中国をはじめとする、
現在においても日本との領土問題を抱え、
今後は領土や間接的な支配地域を拡大する事で、
超大国となっていく野心を抱く国があります。

そういった国々の侵攻を防ぐ力は、今の日本にはなく、
さらに、アメリカの助けを得る事も出来ないとなると、
日本に、"次"はありません。



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