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願い星は彼方

 今夜は流星群が流れるのだと、朝のニュースが告げた。流星群って?と母に尋ねると、空から星がたくさん落ちるのが見えることよ、と説明が返った。どこでも見られるからと、夜更かしが許されて、みんなで庭で空を見上げていると、母が不意に口を開いた。
「お母さん、星を捕まえられるのよ」
 ほんとに、と聞くと空に手を掲げた母が、何かを掴んだように両手を合わせる。
「ほら」
 胸の前で広げられた手の中には小さな星が輝いていた。綺麗、と褒めると、母は自慢げに笑みを深めて星を包み込み。
 ごくり、と飲み干した。
「星は願いを叶えるの」
 星と同じ光が母の身体から溢れて、消えた。願い事は秘密よ、と笑う母は星のように美しかった。

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