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〇〇の魔法使いシリーズ

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魔法使いが多く住まうある世界の、いろんな魔法使いたち+αのお話たちをまとめてあります
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記事一覧

高感度予測機能の誤算

 今日も、開所時間より早くドアベルが鳴った。来訪者を告げる音は、本来慎ましやかに響く仕様…

狭霧 織花
2日前
7

手仕事とメンテナンス

 カチリ、コチリ。今日も小さな家の中では歯車の音がする。規則正しく響く優しい音は、まるで…

狭霧 織花
10日前
1

魔法研究家の決意

 決めたことはやりとげる。  口に出したことはないけれど、それでも強い想いがある。誰にも…

狭霧 織花
1か月前
3

精一杯の贈り物

「高等部二年海組、イェリスさん、同じくペルネさん、事務室まで来てください。繰り返します。…

狭霧 織花
1か月前

争いは突然に

 こんな日が訪れようとは、と同時に思った。 「こんなことであなたを嫌いになりたくない………

狭霧 織花
2か月前
2

幸福な夜に光あれ

 テーマパークといったらこれと観覧車よね、と彼女が嬉しそうに笑って指を指している。これ、…

狭霧 織花
3か月前

文披31題:Day31 またね

 暑さから逃れるための方法として、何があるか、ということがふとした会話の中で、議題となった。  冷たい飲み物。アイスキャンデー。冷風機。アカデミーの外にあるミスト発生機(ただし常に満員状態)。口々にあげてはみたが、全員が薄々感じていることは同じだった。 「なんか、違うんですよねぇ」  研究室の助手が事務書類を束ねながらうーん、と唸る。魔法の研究とあらば体調、奇行、雰囲気その他あらゆる諸々を気にしないタイプの上司でさえ、日々の暑さに少々バテ気味で、最近は鍋をかき混ぜることもなく

文披31題:Day30 色相

 似合う色は、人によって違う。そして、顔色や感情や、隣に立つ人によってさらに変わる。  …

狭霧 織花
3か月前
1

文披31題:Day29 焦がす

「お前のその魔力と探求心は、いつか自分の身を焦がすことになるだろうねぇ」  彼女のお師匠…

狭霧 織花
3か月前
2

文披31題:Day28 ヘッドフォン

~音患いと音楽会~  耳に入る音すべてがわずらしいもので、どうにかして遮断できないものか…

狭霧 織花
3か月前
3

文披31題:Day27 鉱物

 促されて差し出した手のひらの、五本の指の先、爪の部分が、己のものと自分の手を眺める人の…

狭霧 織花
3か月前
3

文披31題:Day26 深夜二時

ー密事の会合ー  暗い室内で、紙をめくる音だけが響いている。とっぷりと暮れた夜の中で、小…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day25 カラカラ

~虚ろと音あるいは長閑と幻~  胸の奥で音がするんです、と訴えられたので、診察しますので…

狭霧 織花
3か月前
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文披31題:Day24 朝凪

~鳥ノ征ク日~  目が覚めたとき、わかった。その時が来たのだと、覚悟していた瞬間が訪れたのだと。  静寂だけが世界を満たしていた。吐息ひとつさえ誰かに聞きとがめられてしまいそうな、静謐な時間が流れている。 「準備、しなきゃ」  はたと思いだし、起き上がる。かすれた声でつぶやいてベッドから起き上がると寝間着を脱いで、白いワンピースに着替えて、顔の下半分を覆うレースをつける。肩より下まで伸びた髪はくくり、布で覆って長いリボンで留めた。髪の代わりに、背中で二本のリボンが揺れている。