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描いてもらった人たちのこと

自作PCを新調するにあたり、“捨てるほど古くはないが、売れるほどには新しくない”くらいのパーツがけっこう余った。せっかくなので、余ったパーツでもう1台PCを組んで、デスクトップPCを持っていなかった身内に譲ることにした。
ただ、OSを買って、SSDはさすがに新品にして、デザインとかもやるからメモリは増強して……とやっていったら、とても無償であげるとは言いたくないくらいの追加出費が発生してしまった。だからといって、身内から金銭で精算するのもなんだか気が進まなかったので、お金をもらわない代わりにイラストを描いてもらうことにした。SNSのアイコン等で使うことを想定した、今まで好きだったキャラクターたちをまとめて8人。

それが先日届いたもんだから、その日から今日までずっとテンションが高い。冒頭のような自慢をして、各種SNSのアイコンを頻繁に入れ替えまくっている。
ただ、どれが何者なのかということをちゃんと説明するタイミングを逸してしまったので、ここでちゃんと紹介させてほしい。依頼先が身内であることに甘えて、ここぞとばかりに二次創作でもあまり見ないようなキャラクターばかりを詰め込んだので、フォロワー諸氏からしたら「知らん奴らではしゃがれても……」としか思われてない気がして。

今回描いてもらった8人は、いずれも今まで自分がハマってきた・好きになった作品からの引用です。興味があればぜひ知ってほしいし、なんならハマってほしいです。これはマジで。

活躍の場を失っていた人を私の動画で起用したら、当の私が一番のファンになってしまった、という人。以前noteにも単独で書きました。

ここ↑に8000字書いたので、ここでまた8000字語ることはしませんが、たぶん、自分の人生で一番入れ込んだキャラクターは誰だ、ということになった時には、バックグラウンドもストーリーも何もない彼女を選ぶのだと思います。
昔からそういう傾向はあったんだけど、15年前に彼女の存在を見つけて、そして自らミイラになったミイラ取りのように入れ込んだことが、現在の「深く語られることを作者も想定していないキャラクターを好きになる」癖に拍車をかけたと思っています。

VOCALOIDがまだWindowsにしか対応していなかった2009年に、敬虔なMacユーザーの声優・池澤春菜さんが「Macで使えるボカロ(っぽいもの)を作ろう」ということで、当時連載を持っていたMac専門誌「Mac Fan」で制作した、要は音声素材集。
その名の通り、GaragebandなどのMacでの利用を想定したものではあったものの、使用OSを制限するものではなかったので、Windowsユーザー視点でいえば、UTAUで合法に利用できる(たぶん)初めての職業声優音源として受け止められ、ひょっとしたら本丸であったはずのMac以上に多くのユーザーを獲得しました。
のちにVOCALOIDが正式にMacに対応したことを受け、2014年に「マクネナナ」として、満を持してVOCALOIDシリーズへの仲間入り。2016年にはVOCALOID4版も発売されています。

現名義の自分が存在するきっかけになった、ある意味、私の人生を変えたキャラクターです。
彼女の登場した2009年は、ニコニコにおいてユーザーメイドの動画紹介動画、いわゆるランキング動画の制作が、今よりも盛んな時代でした。しかし、Mac音ナナはVOCALOIDでもUTAUでもないがゆえに、そうした紹介の仕組みからはこぼれ落ちてしまう存在でした。むしろ制作陣にとっては想定外の、WindowsユーザーがUTAUで作った動画「だけ」に、そうした機会が与えられているという、歪な状況。
そんな中で、当時少しだけ関わっていた週刊UTAUランキングの中で、Mac音ナナの動画を見たときの衝撃があまりにも大きくて。こんなすごいポテンシャルを秘めた存在をもっと知らしめないと! という勝手な使命感から、自分でも動画を作ったことが、その後10年続いた活動の原点になっています。

その時、度肝を抜かれたのがこれ。当時のUTAU音源ではありえないほどの高音の伸びと力強さを兼ね備えていて、やばい黒船がやってきた、と本気で思ったんです。この世界にプロがやってくるというのはこういうことなんだ、って。

そんな末恐ろしいポテンシャルを見せつけておきながら、関係者たちが全然お高く留まるつもりがないところが、Mac音家のもう一つの魅力でもあって。
自分たちで音素材を作って自分たちで発売して、自分たちでキャラ増やして同人誌作ってコミケに出て、それも企業ブースじゃなくて普通の誕生日席で、なんならナカノヒトが売り子で立ってしまう。全員その道のプロであるにも関わらず、そうした妙なフットワークの軽さが、当時黎明期にあったUTAUジャンルのアマチュアリズムにも非常に近い空気があって、それがとても刺激的だったのです。

公式同人誌「マクネボン」シリーズ。
Mac Fan本誌の縁でか、同人誌なのに日本の印刷最大手・大日本印刷が印刷している。

今のところ、私が人生で唯一関わった同人作品「with:」でも、キャラクターデザインのあかつきごもくさんには表紙を、池澤さんにはアルバムのライナーを、それぞれ書き下ろしていただきました。これもDIYでUGCすぎるこのジャンルだからこそ成しえた、貴重な経験のひとつです。
当時のツイート見たら夏コミでアポなし凸したって書いてあって、やばいな、私。

VOCALOID化以降の曲をいくつか貼っておきます。素材集時代とはまた違った声質と魅力があるのが面白い。

ちなみにMac音ナナが初めて歌った、初期UTAUにおけるアンセム「耳のあるロボットの唄」は、のちに池澤さん自身がカバーしています。CDが廃盤で入手困難ですが、手に入れた暁には是非。

noteにおける私の分厚い名刺になった、100円ショップ発アイドルグループのひとり。俗称・落丁おじさん。
一連のテキストの中では特に触れてきませんでしたが、時雨さんは私と誕生日が同じです。いや、向こうが年上なのだから、私のほうが合わせに行ったというべきか。
誕生日が同じということは、誕生花も誕生石も誕生色も誕生寿司もすべて同じなので、そんな人のことはとても他人事ではありません。時雨さんがヘマタイトの何かしらを「誕生石だ……」と思って買ったことがないはずがないし、うにの軍艦を食うときに「誕生寿司だ……」と思ってないとは言わせません。だって私がそうだから。
スマプロに関しては明確に箱の単推し(?)なので、その中で誰が推しとかは本当にないんですが、そういうわけで、こういうところで一人選ぶなら時雨さんだろうなと。でもこれで時雨担扱いされるのは本当に絶対に違う。

ここ↓で書いた、前橋競輪の受付コンシェルジュ。「顔がいい」って言葉、なんの説明にもなってなくて好きじゃないんですが、まえばしめぐみさんは、本当に、顔がいい。

実際のところ、競輪自体への興味はまだそこまでなのに、まえばしめぐみさんに関してはネットで買えるキャラグッズはほぼ全部入手したくらい好き。Apple製品を一つも持ってないのに、Mac音ナナのためにMac Fanを定期購読していた15年前から何も変わっていない。

そしてここまで4人中3人が緑髪。さらにこの後にももう一人緑髪が出てくる。「緑髪キャラが好きなのと、緑髪属性を付与されがちなキャラが好きなのとは全然違う。だから自分は緑髪が好きなわけじゃない」と常々主張していますし、実際本当にそう思っています。だけど、まえばしめぐみさんのビジュがここまで完全に刺さってしまったことで、その言い訳も効かなくなった気がしています。でもまだ認めたくない。

余談ですが、4月から放送される女子競輪アニメ「リンカイ!」で前橋競輪をホームにするキャラクターが、苗字どころか髪色まで丸被りでした。苗字が前橋の人ってみんなそうなんでしょうか。

これでふたりの間に裏設定的な関わりがあったら、私だけ勝手に滾る予定だったのですが、特にそういうこともないみたいなので、私だけ勝手に悲しくなりました。はとこくらいではあってくれたっていいじゃないですか。

2016年から2019年にかけて放送された、日本テレビ「アイキャラ」から生まれたキャラクターのひとり。
アイキャラは「理想の二次元キャラクターを生み育てる」をコンセプトに、キャラクターのコアとなる要素は公募しつつ、「巻きこまれ先生」と呼ばれる各ジャンルのトップランナーを参画させて、番組発のキャラクターを育成していった番組。
全4シーズン・計50回に満たない放送回数にもかかわらず、その中で楽曲・3D・MV・CD・アニメ・コミック・フィギュア・ライブイベント・ゲーム・映画・応援上映・2.5舞台・VTuber・VRイベント……と、あらゆるメディアミックスを番組発キャラだけで達成してしまった、いま考えてもとんでもない番組です。バカリズム・小出祐介(Base Ball Bear)・夢眠ねむ(でんぱ組.inc(当時))の“わかってる”MC陣の何気ない会話は即座に設定に反映され、時にはMC陣自身も巻き込まれながら、様々なプロジェクトを発展させていきました。
この番組で一番の出世作「ひらがな男子」のコミックアンソロは、スマプロ・星色ガールドロップと並ぶ「世界三大・変な出自のコミックアンソロ」として、私の本棚で鈍い輝きを放っています。

人間性が伺える3冊。

そして映画「劇場版 ひらがな男子・序」は、バカリズム初のアニメ脚本にして、おそらく史上初の「応援上映で観客の介入があることを前提に描かれている」異形の映画なので、これはこれでぜひ見てほしい。

小林咲彩・通称さやべぇは、そんな多彩なキャラを生み出してきた番組の中でも、一番最初に制作されたキャラクター。“ひだまりラリアット”は、のちのシーズンで設定されたグループ名です。
「グループ内でも推されていない28歳」という設定でキャラクターデザインを公募。nanaでのオーディションを経てCVが決定され、楽曲リリース・漫画化・フィギュア化などに発展していきました。後期には2代目リーダー・歩千春とともに、VTuberとしても活動。普通に巨人-阪神戦を中継配信していて笑いました。確かにそれは日本テレビが作るVTuberにしかできないことだ。
王道を乗せたがらないMC陣のせいで、こんなにクールビューティーなのに妙に人間臭い、なんならちょっと二次創作みたいなキャラクター性が公式に積みあがっていて、それがこうした、公式なストーリーのない形でしか生まれ得ない、なんとも言えない不思議な魅力を放っていました。シーズン2でグループ内の最強メンバー(CV.花澤香菜)が設定された途端に、ちゃんと関係者の心がみんなそっちに持っていかれてしまう。そういうあたりもなんというか、すごくさやべぇらしい。
CVオーディションの際の台詞「表紙はちょっと……、でも連載はやりたいです」という一言が、彼女の人間性を凝縮しすぎていて最高です。

アイキャラはすごい番組だったんですよ。特に初期は1クール・10回そこそこしかない放送回数の中で、1回放送するごとにものすごいペースで色々なことが進んでいって、マイクラ動画のました工法を地で行くような展開が続き、そしてとんでもない早さでキャラクターたちがスターダムを駆け上がっていく。地上波テレビの圧倒的な実行力と、UGC的な多様性が掛け合わされたら、こんなに最強なことはないって、当時本当に信じていたんです。
上に貼った「Tweet」の動画が番組内で公開されたのは、2016年3月のことでした。今でこそ数多のVSingerが似たような動画をどんどん世に出していて、目新しさもないのかもしれませんが、この時期にはまだキズナアイもデビューしていないんですよ。今のVの者たちのムーブメントの先鞭をつけるようなことをこの時代に、しかもオールドメディアの権化たる地上波のテレビがやっていたなんて、面白いと思いませんか。ねえ?

ひだまりラリアットは最終的に5人組のグループということになり、CVも公募で決まった2名のほかは花澤香菜・戸松遥・竹達彩奈という、冗談みたいなドリームチームに育ってしまいました。テレビがやるというのはそういうことなのです。
そんな中でもさやべぇは、ある意味「2次元キャラクターを育てていく」という番組コンセプトを象徴するような、一番「育った」人物だったと思うのです。TweetのC/Wとして発表された「Tell me ~28歳…さやべぇ愛のテーマ~」も名曲ですので、何卒。

全4シーズンのうち、シーズン1・2はniconicoで、シーズン3・4はhuluで全話公開されています。特に創作に関わる人なら、きっとわくわくするような展開が連発します。

そして日本テレビには現在、VTuber関連事業を行う子会社としてClaN Entertainmentがあります。ほんの数滴だけでいいから、この番組のエッセンスがここにつながっていてほしいと、勝手に思っています。

生物としての人間が死に絶え、そのことすらも知らない、機械化された“人類”が、管理された街で暮らしている。そんな遠い世界を描いた、渡辺浩弐のSFショートショート「2999年のゲーム・キッズ(以下2999)」の登場人物。初代プレイステーションの時代に、ディスクで読む電子コミックシリーズのひとつとしてリリースされたゲーム版が、おそらく最も知られていると思います。
ゲーム版においてリセは、この世界の謎を探りに行く旅の過程で行き倒れた主人公・シカ(パッケージ左)の前に現れる、謎の少女として描かれています。登場シーンもごく僅かで、名前も名乗らぬままにいなくなってしまうので、ここだけ見た人には意味不明かもしれません。ですが、並行して週刊ファミ通で連載されていた原作小説には彼女メインの回があって、そちらを読んでいた人には何者かがわかるような仕掛けとなっていました。さらに後年発売された単行本では、シカとのやり取りが大幅に加筆。彼がたどり着けなかったこの世界の「仕組み」に、断片的に知るきっかけを与える、重要な役割を果たしています。

ゲーム版のプレイ動画。サムネと、7分あたりに出てくるのがリセ。

いくつかのシリーズが執筆されているゲーム・キッズシリーズの中でも、2999は一番好きな作品です。他のシリーズのほぼ全てが現在と地続きの、ほんの少し先の未来をテーマにしている中、2999だけは明確に遠い世界を描いている、かなり異質な作品です。街の中央に聳える「塔」や、世界の秘密を伺うような話もありつつも、収録作の多くは、この世界に生きる人々の生活や事件を描いた掌編で、その仕組みがかえって、多層的にこの世界を覗き見るような、一本道のストーリーとはまた違った奥行きを与えているように感じます。わりと救いがないまま終わってしまうゲーム版とは違って、その先の未来に希望を抱かせるようなストーリーも収録されているので、興味がある方には小説版もお薦めしたい。いまなら電書で買えます。

そして、作品そのもの以上に心を奪われたのが、ファミ通~ゲーム版における夢野れいさんのイラスト。原作小説は復刊されるたびにイラストレーターが交代しているのですが、その中でも夢野さんの描くレトロフューチャーな世界観が、ただ闇雲に未来なだけではない、独特な異世界感を醸し出していて、本当に好きだったのです。そしてそれが「機械であるのに心もあって、人間そのものと自覚して生きている」作品上の人間たちに非常にマッチしていて、さらにそれが暗く鬱々とした展開との大きなギャップにもなっていて、それが本当に魅力的で。だからこの機会にはぜひお願いしようと思ったのでした。
ちなみに、単行本には夢野さんのイラストは収録されておらず、ゲーム版でもリセの姿は逆光でしか描かれていません。なのでリセを描くための資料を入手しようと思ったら、連載当時のファミ通をどうにかして入手するしかないわけで。
なので今回のために、リセ回の収録されたファミ通を特定して、オークションで入手しました。こうした場で取り上げるキャラクターとしてあるまじきことなのですが、全身の姿をちゃんと知ったのは、この時が初めてでした。ひょっとしたら世界初のファンアートかもしれないと思うと、妙な興奮があります。別に私が描いたわけでもないのに。

週刊ファミ通 1998年11月27日号(No.519)

なお、夢野さんの単行本「GENERAL MACHINE ある星の未来」は、人間が死滅した後の機械化した人類という、2999とも通底する、だけど別世界のお話です。
暗い話も多い2999とは違ったあたたかい読後感があるので、ぜひ合わせて読んでみてほしいです。私が人生で初めて、書店に取り寄せを依頼した本です。

レビューとかでも勘違いしてる人が多いけど、作品としてはこっちのほうが古かったりします。

以下、少々関係ないような話をしますが、ちゃんと本線に戻ってきますのでご了承ください。

好きな音楽レーベルは何か、と聞かれたら、SLENDERIE RECORDと答えます。2014年に藤井隆さんが設立したレーベルで、自身の作品のほかに他アーティストのプロデュースなども手掛けているのですが、これにとにかく外れがない。
ナンダカンダ」の1曲しか知らない人には全くイメージできないと思いますが、歌手・藤井隆の音楽のストライクゾーンは、80~90年代の歌謡曲や洋楽。このレーベルの音楽もそれを反映した、良質なポップスとダンスミュージックに溢れています。RHYMESTER・宇多丸さんによる「国産シティポップス最良の遺伝子を受け継ぐ男」という形容は、まさに言い得て妙で。

そんな「音楽プロデューサー・藤井隆」の、楽曲とは別の大きな魅力の一つに、プロモーションやその後の展開までを含めた「大きな“パッケージ”を創る力」の巧みさがあると思うのです。
たとえば、2022年の自身のアルバム「Music Restaurant Royal Host」は、自身と同じく生誕50周年を迎えるロイヤルホストとのコラボアルバムと銘打って、初回限定盤のパッケージをロイヤルホストのメニュー型にする、完全に企業紹介ビデオにしか見えないティザームービーを作る、ロイヤルホストでフードありのライブを行う……など、ロイヤルホストの世界観に寄り添った展開を次々に繰り出しました。

そしてその全てにおいて、そうした奇抜なプロモーションを行うための言い訳として音楽があるのではなく、耳心地良い楽曲たちの世界観を偽りなく拡張する存在として、こうした周辺の作品を、いささかの違和感とともにきっちり溶け込ませています。
いやだって、アルバムのティザーとしてこれが出てくるの、やっぱりどう考えたって変でしょう。でも隆Pの中ではこれが必然なんだろうと思わせてしまう、そういう不思議な魅力があるのです。

そうした「音楽プロデューサー・藤井隆」の世界観の極北とも言うべき“作品”が、アニメ「超空のギンガイアン」です。
ギンガイアンの正体は、2018年にリリースされた椿鬼奴さんのミニアルバム「IVKI」のために創作された架空のアニメ。このミニアルバム自体が、自身が伊吹・レッドスター役を演じたアニメ「超空のギンガイアン」の主題歌集、という設定で制作されていて、その設定のためだけに、キャラクターから世界観から2シーズン分のストーリーまで、本編以外のおおよそすべてが創作されています。

公式サイトにはシーズン1のすべてのストーリーが公開されています。ミニアルバムのプロモーションのためにかける労力として、どう考えても度が過ぎています。あまりにも異常で、あまりにも最高だとしか言いようがありません。
そして当のミニアルバムもこの設定に全乗っかりする形で作られたので、オープニング・エンディング・挿入歌・劇場版主題歌に加えて、リミックス音源とともにアニメの名台詞集が収録されています。伊吹・レッドスターの発する「そういう時は台車を使うのよ」、折に触れて引用したいくらいいい言葉です。
制作の経緯については音楽ナタリーのインタビューで詳しく語られているので、そちらを参照ください。こうして生まれたギンガイアンの世界は、このアルバム以降も椿さんの中で自走を続けていて、のちの自主制作アニメ「宇宙孤児イブキ」に繋がっています。

そんなアニメ・超空のギンガイアンの主人公がソレイユ……なのですが、マクロで見ると「主人公でありながら最も架空」という、不思議なキャラクターです。現実目線では椿鬼奴=伊吹・レッドスターを中心としたストーリーであることから、物語の中の主人公の存在感は、相対的に希薄になってしまいます。
ギンガイアンの登場人物の中には、実在のCVが割り当てられているものが少なくありません。林原めぐみ(2期OP作詞)=サン、伊礼彼方(劇場版主題歌「偽りの新銀河」でデュエット)=郡司聖也、高木渉(なぜか名前だけ出てる)=シンヤ=リーなどが名を連ねる中で、ソレイユはCVすらも架空の人物になっていることが、より主人公の影を薄くさせています。
相対的に顧みられない存在であるからこそ、こういった機会に取り上げてほしい、ということで、このラインアップに加えてもらいました。それでもソレイユのコスプレしてる人とかいたりするので、ネットは広大です。

リセとソレイユに関しては、そのキャラを単体で激推ししているというよりも、好きな作品の中で比較的影の薄いキャラクターを、敢えて取り上げたくて選んでいる側面があるような気がします。ストーリーのある作品で特定のキャラに愛着がわくことが、ひょっとしたらあまりないのかもしれない。

ついに名前も分からない奴が出てきてしまった。

映画監督・石橋義正による、2000年のテレビ番組「vermilion pleasure night」。アートとコントを足して2で割らずに闇鍋にしたような、当時のテレ東深夜らしい前衛的な番組で、女優やファッションモデルなどを積極的に起用した、シュールなコントや映像作品などを次々に放送していきました。監督の近作「唄う六人の女」の原型となったコーナーも、この番組の中で放送されています。
おそらく世間的には「マネキンドラマ『オー!マイキー』の原作をやっていた番組」と説明されることが多いと思います。しかし最近では「20年前にアンミカがレギュラーで出てた番組」と言ったほうが引きがあるかもしれません。この番組ではめちゃくちゃな怪演と顔芸の人だったから、まさか20年後に、あんなトークで世に出るタイプのタレントになっているなんて思いもしませんでした。クイズの正解に感極まって、他の出演者やスタッフを全員銃殺してしまうような人だったのに(※コントの一部として)。

ミッドナイト・クッキングは、この番組で放送されたコントのひとつ。料理番組の司会者が毎回テーマに沿って料理を作ろうとするのですが、目隠し手錠をさせられたり、割腹したり腕を折ったりシンナー吸ったりとやりたい放題で、毎回まともに料理を作れないまま終了してしまう……という、ぶっ飛んだ難解な映像も多く放送していたこの番組の中では、どうかしているポイントがわかりやすい内容。コント単位では一番好きかもしれません。Cathy's Houseのキャシーとか、非行少女・孝子の本間孝子とか、他にも好きなキャラはいっぱいいるんですが。
イラストの中で酢の瓶に口をつけているのは、気が狂って直接飲んでいるわけではなく、酢飯を作るための霧吹きより手軽な方法として、酢を口に含んでいるシーンの再現(動画2:26あたり)。何を言っているか分からないと思いますが、本当にそうなのだからそうとしか言えない。
依頼時に資料として番組DVDを渡しはしたものの、シチュエーションに関しては何も指定していなかったので、このシーンのイラストが上がってきたのには爆笑しました。やっぱり身内コミッションはクライアントの好みを熟知しているから最高だぜ。

かなり影響を受けた番組なのに、配信に出る気配が全くないので、合法に紹介する手段がほぼ絶たれているのが残念でしょうがありません。DVDがたまに中古で市場に出ていたりするので、そういうところにアップされた動画で興味を持った人は手に取ってみてください。


わかりきったことではあったけれど、改めて並べてみても、変な出自のキャラクターばかりが並んでいます。もっと堂々と初音ミクとかにどハマリすればいいのに、なんなら重音テトだって王道からは外れているのに、そこからさらに一本ズレた通りで沼に落ちてしまう。そういうところがいかにも私だし、これからも人影のない側溝に落ち続けるのでしょう。でも居心地が最高なんだ、この側溝は。

そして描き上げてもらってから、ミッドナイト・クッキングの人以外、つまり実写でないキャラは、全員眼が緑色をしていたことに気づきました。「8人中4人が緑髪だ、フェチが分かりやすすぎる」と、これまでも冗談で言ってきたけれど、自作PCを新調したことから巡り巡って、もっと根の深いフェチが見つかってしまったかもしれません。

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