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【異なる翻訳家により訳された同じ作家の本を読むということ: カルミネ・アバーテの例】

アルバレシュと言われるアルバニア系イタリア人の作家カルミネ・アバーテの翻訳書は関口英子さんの訳で新潮社さんから出版されている作品と栗原俊秀さんの訳で未知谷さんから出版されているものがありますがどちらも是非併せて読んで頂きたいです。

関口さんにより訳された『海と山のオムレツ』の中に、海を眺めながらおばあちゃんと語らう孫が食べているパンをカモメに食べられてしまう短編が収められているのですが、栗原さんが訳された『帰郷の祭り』では主人公であるその孫が夏に祖母の家に帰省するシーンが出てきます。

その帰省時の思い出が『海と山のオムレツ』の短編の中で描かれているわけなのですが、どうして主人公の「僕」はその夏祖母の家に帰省したのかという背景が『帰郷の祭り』で描かれていますので、2作を併せて読むことでどちらもの作品をより深く味わえることになると思うのです。

このようにお二方が訳された他のアバーテ作品にも互いに通じるものが散りばめられているので異なる出版社から出ている同じ作家の作品というのは渡り歩いて読んでもらいたいな、とイタリアの読み物を扱う小さな書店の独り言です。

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