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柳誌『現代川柳 琳琅』No.187(2024-7)掲載句「春の雪指の先から好きになる」

皆さま、こんにちは。
川柳をはじめました。

いろいろな団体・グループの情報を集めて検討した結果、柳誌「現代川柳 琳琅」の誌友になりました。隔月刊です。
発行所は静岡市葵区で静岡県出身の私は親近感を覚えました。
これまでも川柳はときおり作っていたのですが、手元のストックが300句を超えてきたあたりから、そろそろ選を受けてみようかなと思ったのです。

私の川柳との出会いは中野に住んでいるときに図書館でたまたま手に取った時実新子の句集を読んだことです。
それまでの私は川柳は「サラリーマン川柳」や「シルバー川柳」のイメージが強かったのですが、川柳の本流すなわち人生の機微を五七五に凝縮した”文学としての川柳”に強く惹かれました。
その図書館にある時実新子の本はすべて読みました。その後、全集を購い、函入りの立派な全集が本棚の一角に鎮座しています。

個人の句集のほかにアンソロジーも役立ちました。
黒川孤遊『現代川柳のバイブル:名句1000』飯塚書店
樋口由紀子『金曜日の川柳』左右社
小池正博『はじめまして現代川柳』書肆侃侃房


それでは『現代川柳 琳琅』No.187(2024-7)の掲載句。吉見恵子選です。

川柳があるじゃないかと前を向く
ノートには余白がだいじ生活くらしにも
架空とはきっと春の空のこと
春の雪指の先から好きになる
夢十夜 死にゆくひとの美しさ

『現代川柳 琳琅』No.187 p25

自分の川柳がはじめて活字になりました。
短歌ではなく俳句でもない。川柳という新しい世界へ。
7句提出して5句掲載。気が引き締まりますね。


ありがたいことに選後感の欄で2句取り上げていただきました。
実作者の方は共感していただけると思うのですが、選者の方のコメントが励みになりますね。

ノートには余白がだいじ生活くらしにも

解りやすい良いノートを作るには余白が重要らしい。調べたことや考えたことなどを追記しやすいなどの利点があるかららしい。この句では更に、「生活にも」余白が大事と続く。生活の余白とは何かと考える時、作家遠藤周作の次の言葉を思い出す。「「無用の用」が文化であり、目先に役立つことが文明である。人生にとっても同じ事が言える。差し当たって役にも立たぬことの集積が人生を作るが、直ぐに役に立つことは生活しか作らない。生活があって人生のない一生ほど侘しいものはない。」このことから、川柳は無用の用なのである。

『現代川柳 琳琅』No.187 p29

川柳の先輩からの応援メッセージと受け取りました。
「無用の用」…たしか『荘子』に出てくる言葉ですね。

寄り道をして調べてみました。『荘子』の人間世じんかんせいに出てくる言葉だそうです。
「人皆知有用之用而莫知無用之用也」
「人皆有用の用を知りて無用の用を知るなし」
「誰でも役に立つものが役に立つことは知っているが、役に立たないものが役に立つことは知らない。」
なお、他の書き下し文としては、「人は皆有用の用を知れども…」というものも見つけました。
置き字の「而」を順接と取るか逆説と取るかの違いですね。「而」は接続詞に近い働きをします。
漢文は高校生の頃にハマっていました。音読すると心地よいのです。

「無用の用」に関連して、少し文脈は違うのですが、こんな話を思い出しました。
ひと頃、大学業界では「実学」というフレーズが喧伝されていました。
下記のような思想的な側面を理解せず、安直に”就職に有利”という聞こえの良い宣伝文句が広まっておりました。

「実学」とは、単に世俗的な実際の役に立つ知識の伝習や利用の仕方を研究する学問ではありません。「実学」とは、近代合理主義に立脚した科学的アプローチを採用するとともに、自由で独立した個人による批判を通して、合理に至ろうとする態度に裏打ちされた学問です。

慶應義塾大学 大学院 商学研究科

そんな折に、「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」という言葉がどこかで紹介されていました。当時、その通り!と共感したことを覚えています。
今日この記事を書くにあたって調べてみたところ、かつて慶應義塾大学の塾長であった小泉信三氏の言葉だそうです。
慶應の実学は本物なのだなと思いました。

さて、選後感に戻りましょう。もう一句引いてくださっています。

春の雪指の先から好きになる

「春の雪」は、純粋さと未来を予感させる。相手に触れる指の先から、恋情が湧いてくるという恋の句である。その真っ直ぐな思いに春の雪も解けてゆくようだ。

『現代川柳 琳琅』No.187 p29

深く読んでくださって嬉しいです。短詩型文学は優れた読み手がいて初めて生きてきます。時には作者よりも深く読んで作品の世界をぐっと拡げてくれます。

人間味があって静かな抒情を湛えた句ができたらいいなと思っています。
この句はp30の「推薦13句」にも挙げていただいています。感謝。

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