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実録、精神科救急 〜通報〜

前記事にも書きましたが、精神科救急は本人の意思ではなく他者から診察を促されるケースがほとんどです。
なかでも、自分を傷つけそう、他人に危害を与えそう、という状態が切迫している場合、保健所などが介入した強制的な診察(措置診察)が行われます。

ある日、保健所から連絡が入りました。
保健所:「家族と揉めて興奮している人がいるようです。措置診察をお願いします。」
私:「え?家族と揉めて怒っているんですよね?なぜ措置診察なんですか?」
保健所:「その人、精神科への入院歴があるんです」
私:「え?揉めごとがあって怒るのは普通の反応ですよね?何か病的な要素があるんですか?」
保健所:「あー、分かりません。でも、入院歴があるんですよ」
私:「…。」

そんなやりとりの中、
私は日本の近代精神医学の創始者である
呉秀三先生の言葉を思い出しました…

「我が国十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の外(ほか)に、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」

日本で生まれた精神障害者は、病気を持って生まれてしまった不幸の他に、この国に生まれてしまった不幸を背負うことになる…といった意味です。

昔話かと思っていましたが、まだまだ「精神障害者は危ない」といったレッテル貼りは続いています。残念なことに、精神医療に携わる専門職でさえも。

精神障害を持つ人の家族は確かに大変です。
藁にもすがる思いで病院の戸を叩きます。

しかし、患者さんも困っています。
そして、患者さんにも人権はあります。
直ぐに強制医療を選択するのはいかがなものでしょう。

患者さんの人権も尊重できる専門職でありたい…

そんなことを感じた体験でした。

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