日本人の格差を広げる新NISA

こんにちは。今回は新ニーサがなぜ格差を広げてしまうのか、その理由についてお話しします。新ニーサは、投資収益を非課税にすることで、多くの人に投資の機会を与える素晴らしい制度ですが、実はその裏には、新ニーサによってお金持ちと貧乏人の格差がより大きくなってしまうという問題点が潜んでいます。
なぜ新ニーサによって格差が広がるのか、その理由についてお話していきます。ぜひ、最後までご覧ください。

新ニーサスタートによって格差が広がる理由

まず一つ目のポイントは、投資知識の格差です。新ニーサによって多くの国民が投資をするようになったと言われますが、実際に投資をしている人は15%ほどしかいないようです。投資をしているだけで、お金や将来についてしっかり考えている上位15%に入れるということであり、残りの85%の人たちは、新ニーサのような素晴らしい制度が出てきたとしても、投資を行っていないのです。
投資をしない理由は、単純に知識不足で投資をするという考えに至らなかったり、投資に対する恐怖心が抜けない人がいたり、資金が足りずに投資ができない人もいるでしょう。
いずれにしても投資に関する知識や情報を持つかどうかは、お金を増やすにあたって非常に重要になります。新ニーサの導入により、多くの人々が投資を始めることが奨励されていますが、投資の基本的な知識がない人は、新ニーサを始めることのメリットや、投資の戦略を立てることができないからです。
投資について学ぶことは、投資以外にも活かすことができます。例えば、リスク管理の重要性について考えてみましょう。投資にはリスクが伴いますので、リスクを管理する方法を知らないと、損失を被る可能性が高くなります。知識がある投資家は、ポートフォリオを分散させたり、リスクをヘッジする方法を知っているため、リスクを適切に管理できます。これは日常生活でも当てはまることで、お金の使い方や仕事の選び方、人間関係まで、リスクとリターンの関係を考えられる人は、常に大きなリターンが得られる状況に身を置いています。
仕事を選ぶ際にも、その仕事の将来性を考えてみたり、スキルアップの有無や福利厚生など、あらゆる可能性を考慮して仕事を選ぶことができるのが、リスク管理能力のある人です。一方、リスク管理ができない人は、月給につられてブラック企業に入ってしまい、過労によってお金をどんどん使ってしまったり、将来に向けた身動きが取れなくなってしまうこともあります。投資についての知識があるかどうかだけで、お金だけでなく、あらゆることに対して格差が生まれてくるのです。
次に二つ目のポイントは、初期資金の格差です。投資を始めるためには、ある程度の初期資金が必要です。しかし、初期資金を準備できる人とそうでない人の間には大きな格差があります。高所得者は、低所得者に比べて投資に回せる余裕資金が多いため、大きな投資を行うことができます。これにより、投資から得られる利益も大きくなりやすいです。また、十分な貯蓄がある人は、リスクを取る余裕がありますが、貯蓄が少ない人は、生活費に影響を与えない範囲でしか投資できません。
例えば、年利5%の商品に投資をするとします。1000万円投資できる人は、年間50万円の配当が得られますが、10万円しか投資できない人は、年間5千円しか配当がもらえません。同じリスクを取っているのに、金額の差は、49万5千円にもなるのです。これは会社員の給料ではほとんどありえない状況です。さらにこの配当金を再投資していくと、格差はさらに広がっていきます。この格差に切り込んだのが、ピケティの「21世紀の資本論」です。彼はお金持ちである資本家がより豊かになり、貧乏人は貧乏から抜け出せない、資本による格差について語っています。もっと詳しく知りたい人は、読んでみてください。
この格差は、リスク許容度にも繋がってきます。1000万円投資できる人は、年利3%に落としたとしても、年間30万円もらえるので、無理にリスクを取りに行く必要はなくなります。逆に、10万円しか投資できない人は、配当金が全然足りないので、年利を10%近くにまで上げて、ギャンブルのような投資に手を出してしまう可能性もあります。このようにして、お金持ちは確実に資産を積み上げていき、貧乏人は、一発逆転はあるけれど、大損をして立ち直れなくなってしまうのです。
そうならないためには、まずは手元の資金を増やすために、節約と貯金を続けることと、収入の高い仕事を見つけることです。投資を始めるのは手元の資金が多いほうが有利ですから、資金がないときは稼ぐことに集中して、無理に投資をする必要はありません。リスクを抑えた投資をしても、満足のいくリターンが得られるようになってから投資を始めていきましょう。
最後に三つ目のポイントは、投資環境の格差です。投資を行う環境やサポート体制も、格差を広げる要因の一つです。例えば、富裕層は幅広い投資商品の選択肢があり、リスクを分散させることができます。一方、資金が限られている人は、選択肢が少なく、リスクを分散させるのが難しいです。また、専門の投資アドバイザーを雇うことができる富裕層は、プロの助言を受けて投資を行うため、成功する確率が高まります。
逆に、アドバイザーのいない人は、自分で投資判断をしなければならず、有効な戦略を見つけられない可能性があります。自分で勉強することはすべての人に必要ですが、それでもプロのアドバイザーがいることで、新たな選択肢が生まれます。アドバイザーだけでなく、お金持ちの周りには資産運用をしている人が多く、情報共有の場も多くありますから、そこで情報の差が生まれてしまいます。投資の情報格差は、簡単には埋めることができないですが、インターネットや書籍などから、正しい情報を選んで取得していくといった方法が効果的です。

新ニーサスタートによる格差拡大の具体例

新ニーサスタートによる格差拡大の具体例をいくつかの視点で見ていきましょう。
具体例1つ目は、サラリーマンと金持ちの間に起こる格差です。特に、投資に対する余裕資金が少ないサラリーマンにとっては、新ニーサの恩恵を十分に享受することが難しくなる一方で、資産に余裕がある金持ちは、非課税枠をフル活用し、さらなる資産増加が見込まれます。
具体的な例として、年収500万円のサラリーマンと年収1億円の富裕層を比較します。
年収500万円のサラリーマンは、生活費や教育費などの出費が多く、投資に回せる資金が限られています。年間50万円を捻出できたとしても、非課税枠の1800万円を使い切るためには、36年が必要になるわけです。36年目に投資した50万円はほとんど運用する期間がなく、すぐに回収することになってしまうため、実質的に非課税枠は使い切れないことになりますね。
一方で、年収1億円の富裕層は、生活費の割合が低く、投資に回せる資金が多いため、新ニーサの非課税枠を最短5年で使い切れてしまいます。サラリーマンが36年かけて使い切ったときには、既に30年以上運用していることになり、もっと資産を増やしていることでしょう。
このように、投資に回せる資金の差が、新ニーサの効果を大きく左右します。結果として、富裕層はますます資産を増やす一方で、サラリーマンは資産形成が難しくなり、格差が拡大する可能性が高まります。したがって、新ニーサの導入は、社会全体の格差問題をさらに深刻化させるリスクがあります。
新ニーサの満額投資による格差拡大のシミュレーションを行うと、驚くべき結果が見えてきます。
例えば、年間120万円の非課税枠をフル活用した場合、10年間でどのような差が生じるのでしょうか。
まず、毎年120万円を10年間で合計1200万円の投資が可能となります。仮に平均年利5%で運用した場合、複利効果により、10年後には約1600万円に増える計算です。一方、投資に回せる資金が少ないサラリーマンは、年間60万円の投資しかできないとします。この場合、同じく10年間で合計600万円の投資となり、10年後には約800万円にしか増えません。現金であればその差は600万円のところ、資産運用をすると、差は800万円に広がるのです。このように、同じ運用利率でも、投資額の差が大きな格差を生み出します。新ニーサの非課税枠をフル活用できる富裕層は、サラリーマンより多くの資産増加を実現できるのです。
具体例2つ目は、若者と高齢者の年齢ごとの格差についてです。若者は将来の資産形成を見据え、積極的に投資を行う傾向があります。一方で、高齢者はリスクを避けるため、保守的な投資を選好する傾向があります。具体的には、若者は成長性の高い株式や投資信託に興味を持ち、長期的なリターンを期待して投資を行います。これに対して、高齢者は安定した収入を求め、債券や定期預金などのリスクが低い商品に投資することが多いです。このような投資意識の違いが、世代間の格差を生む一因となっています。
さらに、新ニーサの非課税枠を活用することで、若者は資産を効果的に増やすことが可能です。一方、高齢者は既存の資産を守るため、非課税枠を十分に活用できない場合があります。このように、投資意識の違いが、世代間の資産格差を広げる要因となっているのです。
しかし、この投資意識についての格差は悪いことではないと思っています。若者は投資できる期間が長いですから、リスクを取って損をしたとしても、取り返すことができます。もし利益が大きく出れば、豊かな生活ができるようになり、少子化の解消につながっていくことまで考えられます。若者が資産を増やすことは、社会にとってメリットが大きいのです。
一方で、高齢者は失敗したら取り戻す期間が残っていませんし、そもそも長期投資ができないので、リスクを抑えて投資をする状況です。今ある資産を守っていくことが投資の目的なので、インフレリスクを減らすくらいの投資で十分だと思います。
若者と高齢者で投資手法が変わるのは当たり前ですし、そこで格差が出るのも当然です。どちらの投資手法にしても、多くの人が投資を始めることに意味がありますし、お金について学び、知識を増やすことには大きなメリットがあります。
具体例3つ目は、世代間の格差についてです。特に、日々の生活費や教育費、医療費などで支出が多い家庭にとっては、新ニーサを活用するための余裕が少ない場合があります。このため、貧富の差がさらに広がるリスクが高まります。
例えば、子供の教育費がかかる家庭では、投資に回せる資金が限られてしまいます。一方で、すでに資産を持つ家庭は、教育費や生活費の負担が相対的に軽く、投資に回せる資金が多いため、新ニーサの恩恵を大きく受けることができます。これにより、資産を持つ家庭はさらに豊かになり、資産を持たない家庭は相対的に貧しくなります。その資産が子供にも受け継がれていき、世代を渡るごとに貧富の差は拡大していくのです。
世代ごとに格差を縮めるために、相続税や贈与税などの対策を行っていますが、巧みな節税対策や教育によって、次世代に多くの資産を残すことができており、相続による格差は広がるばかりです。
具体例4つ目は、企業間の格差です。新ニーサの影響は個人だけでなく、企業にも影響してきます。新ニーサ制度によって投資される企業というのは、上場している大企業となりますから、非上場のベンチャー企業にはお金は集まってきません。投資する人が増えて、上場企業は株価が上がり、資金も増えて事業しやすい状況になるかもしれません。しかし、ベンチャー企業にしてみれば、競合の上場企業が強くなりすぎて、太刀打ちできなくなってしまうかもしれません。そうなると、新たなイノベーションは生まれにくくなり、起業する人が減り、みんなが上場企業への就職を望むようになります。
イノベーションは、経済を活発化させるためにとても重要になりますから、資金をどのようにしてベンチャー企業に集めるかが鍵になってきます。1つの方法として、大企業からの買収がありますが、ベンチャー企業が大企業に買収されると、身動きが取りにくくなったり、結局は大企業をさらに大きくしていくだけになってしまい、独占的な経済になってしまうリスクもあります。
具体例5つ目は、日本とアメリカの格差です。日本とアメリカにも格差が広がっていく可能性があります。新ニーサ開始によって投資されたのは、アメリカの投資信託が多いと言われています。つまり、日本国民の日本円がアメリカに投資されているのです。これは個人で見れば、アメリカの経済成長によって、資産が増えるという意味で良いのかもしれませんが、企業で見ると、アメリカの企業が強くなるばかりで、日本企業には還元されないという意味にも捉えることができます。このままアメリカの企業が強くなっていけば、日本人は、アメリカの経済に頼るばかりで、日本企業は存続できなくなってしまうのです。

新ニーサ制度による格差を減らしていくために

新ニーサ制度は素晴らしい制度ですが、格差が広がってしまうのであれば、抑えていかないといけません。3つのポイントを紹介しましたが、ポイントごとに、格差を減らす方法について考えてみましょう。
1つ目のポイントは、投資知識の格差でした。投資知識が無い人を減らすためには、金融教育の強化が必要不可欠です。子供の頃から、投資のシミュレーションをしてみたり、お金の仕組みについて学ぶことが大切です。
最近では、プログラミング教育が義務化されましたが、同様に、金融教育も取り入れていくことで、将来ニーサ始める子どもたちが、適切に投資できるように教育することが大切です。教科書の載せて授業でやるだけではなく、実践的なシミュレーションをすれば楽しく学べますし、投資のプロに来てもらって、講演をしてもらうのもいいですよね。
2つ目のポイントは、初期資金の格差でした。初期資金が誰もが持っていれば苦労はしませんから、この格差を埋めるのはとても難しいですよね。資金を確保できるよう、副業しやすい環境を整えるというのはどうでしょうか。
勤務時間の徹底や、転職の自由度を上げて収入アップのチャンスを増やすとか、副業禁止規定を全ての会社で無くすといった施策によって、収入を増やしたり、収入源を確保しやすい環境が出来上がります。最近は退職代行サービスがあり、退職しやすい環境が出てきているので、労働環境の悪い企業は淘汰され、働きやすい環境ができてくるかもしれません。
3つ目のポイントは、投資環境の格差です。親が投資をしている家庭では、投資が当たり前のようにあり、金融教育もできている場合が多いです。一方で、投資をしていない家庭では、子供も投資はせず、お金について悪い印象を持っている可能性もあります。子供のときからインターネットが使える環境がないかもしれませんが、中学生くらいでスマホを持ち始めると思います。
スマホのアプリで少額から投資できるような環境を整えたり、ニーサ口座を作りやすい環境を整えることで、中学生くらいから投資に触れることができるようになります。金融教育に近い施策ですが、投資を始めたいと思ったタイミングで、すぐに始められる環境が整っていることが大事です。

まとめ

今回は、新ニーサによって格差が広がる理由についてお話しました。お金持ちがどんどんお金持ちになっていき、その格差が広がっていきますが、貧乏な人はお金を減らすかというとそうではありません。
少額しか投資できなくても、少しづつ資産は増えていくので、周りのお金持ちとの格差を気にしなければ、新ニーサの恩恵を受けることはできます。むしろ新ニーサを始めた人と始めていない人の格差の方が大きくなってきますから、まずは少額からでもいいので、新ニーサ口座を開いて、投資を始めてみることをおすすめします。

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