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ジャンル分けの楽しさと愚かさ

最近専門学校の講師の人から「鳥天のnote面白いね、楽しみにしてるよ」といわれて嬉しかった。なのでもう一つ興味深そうな話をしてみる。音楽のジャンル分けの話だ。


NHK「LIFE!」というコント番組内で、「何拳?」というコントが放送された。あらすじはこうだ。


内村光良演じる謎の男は、突然何かの拳法のような型を披露し始める。

するとそれを見た拳法使いたちは「あの腰使いは、シンシャーシュー拳じゃないか」「いや、あの足の動き、シンシャーシューシー拳じゃないか?」みたいなことを言い、その男が何拳なのかを議論し始める。
拳法の流派はたくさんあるのか、違いも分からないような拳法の名前ばかりが飛び交い、議論は収拾が付かなくなっていく。
仕方なく当の本人に聞くと「オリジナルのダンス」だったという何とも拍子抜けするオチだった。


日々ジャンルが細分化されるダンスミュージックに身を置く立場として、思うところのあるコントだ。ジャンル分けって本当に愚かだ。どうにも俺たちは、何かをジャンルという型にはめて語ろうとしてしまうし、新しいものができるとすぐにジャンル分けしたがる。そして、ジャンルの知識を持っている事に対する傲慢さと、ジャンルだけで語ろうとする浅さも感じた。

この画像を見たことがあるだろうか?実はEDMといってもこれだけ種類がある。なんならここからもっと派生する。ダンスミュージックにある程度精通している自分でもイマイチ追いきれていない。ややこしくてうっとおしい。

しかしその曲がどういった曲なのか、一発で分かるのがジャンルだったりする。派生して進化していく様を見るのは面白い。でも側から見ればただただややこしいだけだ。それが面白くもあるんだけどね。どれだけややこしいか今から見せてやろう。


たとえば、自分はダンスミュージックの中でも、「Footcore」というジャンルを中心に活動している。「Footcore」はLolicoreを中心にリリースしているネットレーベル「Dochakuso records」周りが勝手に提唱し始めたジャンルだ。

「Footcore」の定義は、
「Juke/FootworkとBreakcore(Hardcore Techno)を融合させたもの」または
「やり過ぎたFootwork Jungle」
である。

次は「Juke/Footwork」について説明しよう。これはシカゴハウスから派生したダンスミュージックで、160という高速なテンポで非常に複雑なリズムのフロー(主に付点8分や3連符)が特徴的だ。

次は「Breakcore」について説明しよう。これは、「Hardcore Techno」「Jungle」などの文脈から生まれた、非常に複雑なブレイクビーツ(ドラム演奏のフレーズをサンプラーなどを用いて再構築する手法)を主体とするダンスミュージックの一種だ。

「Hardcore Techno」についても説明しなくてはならない。これはオランダのロッテルダム、アメリカのニューヨーク、オーストラリアのニューキャッスルなどで同時発生的に出現したダンスミュージックで………


どうだ?ややこしいだろ?

今俺がやってみせたことは、「Footcore」というジャンルのルーツを辿っていったにすぎない。こうして見ていただくと分かると思うが、どのジャンルもなにかのキメラなのだ。基本様々なスタイルの寄せ集めや合体でしかない。誤訳で派生していくジャンルもある。そうやって姿形を変えて進化していくジャンルの姿を見ると、歴史を目撃しているようで何だか面白い。これが「楽しさ」だ。

しかし、こんにちに至っても「これはhiphopじゃない」だの「あれこそがhiphop」だの鬱陶しいジャンル論争ばかりが巻き起こっている。ジャンルという「枠組み」はこれからの音楽を狭めかねない。どうも自らが用意した枠にハメたがり、ちょっとでもそれたことをすると文句を付けてくる懐の狭さ。これが「愚かさ」だ。


ジャンルの「楽しさ」と「愚かさ」がちょうど良いバランスで保たれてるから、音楽はいつまでも面白いのかなって思う。変化がありすぎても、なさすぎてもつまらない。枠にハマり続けて、突然外に飛び出るから「なんだこいつは」「スゴいのが出てきた」となるのかもしれない。


ジャンル分け、楽しくて、愚かだ。


最後にFootcoreとはなんたるものなのか、僕が最近公開したブートレグ(リミックスの呼称の1つ、主に無断リミックスを指す)でも聴いてください。

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