one of the best in この世
もう5年くらい前になると思うが、都内某商業施設内のコメダ珈琲前で、沖井礼二を見たことがある。
あの沖井礼二だ(以下、フルネーム呼び捨てでいかせてもらう)。
Cymbalsのベースだったり、NOVAうさぎの歌の作曲家だったり、今はTWEEDEESなんかをやっておられる、沖井礼二。
この世で最もカッコいい男のひとり、沖井礼二である。one of the best構文の代表例として教科書に載せてほしい。最もカッコいい男のひとり、沖井礼二なのだ。
そんな沖井礼二が、コメダ珈琲前の椅子に座っていた。スターが順番待ちをしていたのである。帽子とメガネがよく似合い、足を組んで、背にもたれているのにふんぞり返っては見えない。品を漂わせながら、メニューを眺めていた。
あんまりジロジロ見るのは失礼だと思いつつ、「え???本物???」という思いもありつつ、なんかエスカレーターを上ったり降りたりしながらウロウロしてしまうワシ。
どうしよう。声をかけたい。
いやでもファンから声かけられるのとか普通にキショいよな。
いやでもなんか好きなことを伝えたい。
いやでもライブなどに行くのが正規ルートでの「会い方」なのであって、ここで声をかけるのはなんかフェアじゃない。
そんなこんなで悩み続けて結局20分くらいウロウロし続けてしまった。ていうか20分も空かないコメダ、大人気じゃん。でも何かそのまま帰ったら後悔する気がしたので、思い切って声をかけてみることにした。
沖井さんですか、と声をかけると沖井さんは、はい、と言いながらスッと立ち上がってくださった。丁寧で嬉しい。そして思いの外、にこやか。嬉しい。
好きです!応援してます!
それだけ言いたかったのだが、す……くらいで突然びっしゃびしゃに涙が出始めてしまった。自分でも何が起こっているのかよくわからない。私以上に向こうがオロオロされている。よく見ると隣には清浦夏実さん。TWEEDEESが揃っている。「泣かないで」と肩に手を添えてくださった。申し訳ない。
高揚感は一気にしぼむ。多量の涙が出きって身体が縮んでしまったのかとすら感じた。ただ応援の気持ちを伝えたかっただけなのに、本人確認後突然泣き出し勝手に謝りながら走って逃げる人になってしまった。好きな人に好きっていうのがこんなに難しいことだなんて。思い出すと頭を抱えてしまう、最も恥ずかしくて申し訳ない過去のエピソードのひとつである。
*
ときは変わって数日前。
たまに行っているお笑いライブの、普段より少し規模大きめのライブがあることを知った。
youtubeで無料ライブ配信されている回もあり、常々もっとお金を払ってもいいくらいのコンテンツだと思っていたのだが、件のライブではスポンサー権を買えると聞き、早速購入することに。そんなに大きな金額を払えるわけではないが、いつも楽しませてもらっている分、何かで応援できたら…と思っていたので願ったりかなったりだ。
スポンサー権を購入後、ライブ主催者の方から確認のメールが届く。その返信に、30分くらい悩んでしまった。
メールは、単なる事務連絡である。本来は、必要事項を返信すればいいだけ。
いつも観てるって、書いてもいいだろうか。
次のライブも本当に楽しみにしているって、書いてもいいだろうか。
主催の方は、結構な数のメールを捌くであろう。事務連絡に必要なこと以外が書いてあるのはノイズかもしれない。
とってもとっても悩んだが、沖井礼二事件のときと、結局同じ。「楽しみにしています」と末尾に書いて、メールを返信した。
好きな人に好きだと言うのは、5年経った今でも難しい。でも5年前沖井さんに思い切って声をかけたのは、(向こうにとっては大迷惑だったかもしれないが)自分としてはよかったなと思っている。
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