240324知らぬがイノセント
先日知人とカラオケに行ったときのこと。
知人がMr.Childrenの『innocent world』を入れた。セメントは知らない曲だったので、知らない曲だな、と言った。驚かれた。innocent world知らないことある?、と。
「いやいや、絶対聴いたことあるって」
セメントは、ミスチルとスピッツの区別がついていない。どちらも90年代から活躍するグループで、ジャンルはJ-POPで、男性ボーカルで、今でも人気がある。同じ箱に入っている。特別音楽に興味がないわけでも疎いわけでもないと思うが、なんとなくそこは同じものとして見てしまっていた。
「イントロ聴いたら思い出すと思うよ」
イントロが始まる。知らない。
「歌い出しでピンとくるって」
知人が歌い始める。知らない。
「サビはさすがに絶対わかるよ」
最後まで聴いて最後まで知らなかった。妙な達成感がある。一度もピンと来ないまま、ミスチルを聴ききってしまった。偉業だろ。偉業じゃねぇよ。
後日判明したことだが、セメントが「ミスチルかスピッツのどちらかだろう」と思っていた曲は、全てスピッツだった。『空も飛べるはず』も、『チェリー』も、『春の歌』も。みんなが「美味しい鮨」と読み間違えていたアレも。
セメントは、単なる「ミスチルを知らない人」だったのだ。
という話を、今日友人にした。驚かれた。絶対聴いたことあるよ、と。
友人がアレクサを呼び、『youthful days』を再生する。滝沢秀明がケーキつくってるドラマ、観てたでしょ。観てたよ。友人が勝ちを確信した顔をする。
「もうここでわかる?」
イントロが始まる。わからない。
「タッキー見える?」
メロが始まる。わからない。タッキーは見える。
「阿部寛ケーキつくってる?」
サビに入る。わからない。なぜか『TRICK』の阿部寛が見える。またしても1曲聴ききってしまった。記録が伸びる。ドラマを観ていたはずなのに。記憶が更地だ。なぜなんだ。
なんならこの日記を書くにあたっても曲のタイトルが思い出せず検索をしてしまった。「タッキー ケーキ ドラマ」で検索し、wikiから主題歌を探す。人生の不毛な時間の上位に入る。
「この日本に生きてきて、ミスチルを避けて生きるほうが難しくない?」
友人の言うとおりだ。どうやって避けてきたのかわからない。ショッピングモールで、TSUTAYAで、給食の時間の放送で、絶対かかっていただろうと思うのに。
“その時代”の音楽を知らないのではと考えた友人から、他に知らないのはないのかと問われる。GLAYは?JUDYANDMARYは?椎名林檎は?モー娘。は?わかるわかる、全部わかる。だって全部給食の時間に聴いてたし。
セメントは、ただただミスチルを知らない人なのだ。
諦めた友人が、話題を変える。
「そういえばこの前、友達がカラオケでSHAKALABBITS歌っててさ、」
あ。
セメントは、SHAKALABBITSとGO!GO!7188の区別もついていない。
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