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240316 後悔ゼミナール

大学からの帰り道。毎年呼んでいただいている、卒業したゼミの卒論発表会に今年も行った。いつも現役生の卒論は素晴らしい。着眼点も、先行研究の整理も、調査も、考察も。すごいし、もっと読みたいし、羨ましい。

羨しい。そう、羨ましい。

自分の中にあった感情に気づくと、それまでのホクホクとした気持ちがポロポロ散っていくのがわかった。

ひえ〜どうしよう。

甲州街道を歩きながら、涙が出てくる。

自分は、本当は大学院に行きたかったのかもしれない。

大学院に行って、もっと勉強したかったのだ。

なんやかんや、理由をつけてきた。早く社会人になりたいからとか、実家にお金がないからとか、自分が好きなのは研究じゃなくて勉強だからとか。そういうの、ぜーんぶ要らなかったのだ。知らなかった。セメントは、自分が大学院に行きたかったことを今日の今日まで気づかなかった。

涙が隠せなくなってきたので、ハンカチを取り出して拭う。今日行きがけに、コンビニで買ったハンカチだ。花粉症なのにハンカチを忘れて、これは辛いとファミリーマートに寄った。値段を見ずにレジへ持って行ったハンカチは、600円。高っ。やっぱりいいですと言えなかった。そういうとこだ。

今度は復路で、そのファミマの前をまた通り過ぎる。

ハンカチも驚いているだろう。鼻水を拭くために買われたのに、まさかその数時間後、甲州街道を人目も憚らず泣いている人間の涙を拭くことになろうとは。

大学院なんか、40歳でも50歳でも行ってる人いるじゃんって、思うでしょう。今からまた行けばいいじゃんって、思うでしょう。

セメントが後悔しているのは、そこじゃない。大学院へ行かなかったことそのものじゃない。大学院は今からだって行けばいいんだその通りだ。

セメントが後悔しているのは、あの頃のセメントが本当は大学院に行きたいと思っていたことを、セメント自身が気づいてあげられなかったことだ。セメントのことは、セメントしかわかってあげられないのに。それは、そのときにしかできないのに。

愚かだったな。ガソリンスタンドの強い光に、びしょびしょの顔を照らされながら考える。

外だからなんだ。私は泣くのを我慢なんかしないぞ。

妙に胸を張って、ローソンに寄ってから帰る。いちばんカロリーの高そうなアイスを買った。






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