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現実展示会IKEA

IKEAに行った。郊外型の、ちょっと遠くてでっかいところ。デカいIKEAは、もはやほぼテーマパークである。

郊外IKEAは生活テーマパークなので、誰かの生活がたくさん展示してある。ディズニーに行けば、ミッキーの家が見られるのと同じ。このお家はふたり兄妹なんだなとか、この人は多分趣味がアウトドアよなとか、そういうところまで見えるものがある。あれは家具の見本でもインテリアのお手本でもなく、生活の展示なのだ。

IKEAで提示される生活は、正しい生活でもある。「松戸 75㎡ 賃貸」。こんな言葉がすぐ横に貼られている。ただ理想とか想像の生活ではなく、あなたにとってあり得る生活なんですよと語りかけてくる。松戸のマンションに住んでいる人は実際にいて、そこから仕事に行ったり子どもが育ったり老いたりする。「現実的な理想の生活」みたいな。どっちやねんみたいなものをたくさん浴びる時間だ。100%夢の国に振り切ってくれるディズニーよりもこっちの方が好きな人は結構いそう。ディズニーは架空なので、こちらも騙される準備がないと楽しめないから。

IKEAって比較的安価で壊れやすいイメージがあったので、個人的には消耗品だと思っていたんですが、真逆っすね。松戸75㎡の生活、安定してるもん。この暮らしがずっと続けばいいなと思える生活だもん。

そう、IKEAにあるのは「生活」で、今の自分がやってるのは「サバイブ」なんだなみたいなことを思い知らされる。お母さん、消耗品なのはセメントの命の方だったよ……。

理想と現実のホーンテッドマンションなので、ぐにゃぐにゃになりながら楽しむことができるIKEA。あまりない経験なので最高である。定期的に浴びたほうがいい。みんな好きだろ、高低差でととのうやつ。

これが近くにあったら、完全にIKEAで擬似生活をするのにハマってしまいそうなので、郊外にあってよかったとすら思ってしまう。でも東京でサバイブする私のうちにあるリビングでは、テーブルもイスも、今のところIKEA製品である。

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