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240227スーパーの袋でもって翔べ

2月27日の日記。再掲。

風が強い。メリー・ポピンズじゃん。朝に弱いセメントは、不機嫌に思う。

台風の強風がなんかちょっとおもろいのは、風がぬるいからだ。早朝日陰で感じる冷たい風となれば話は別。いわんや花粉を運んでくるとならば。帰りたい。コートの襟に鼻まで埋めて駅まで黙々と歩く。こういう顔のお菓子あったよな。ぬぅんってやつ。チョコまみれだ。

小さい頃、メリー・ポピンズに憧れた。自分も風に乗って移動したくて、家の塀から飛び降りた。傘は何本ダメにしたかわからない。

スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス。魔法は使えないので、セメントは電車に乗る。

数時間だけの仕事を終え、再び同じ駅へ戻る。駅のホームでは、キャーと悲鳴が聞こえるほど風が強まっていた。エスカレーターを降りて屋根のあるところへ入ってなお、風を感じる。ポスターの止まっていない右下が、ベラベラしていた。

外から駅へ来る人は、誰もかれも、もはや髪型を諦めている。風で乱れた前髪を直すこともなく、ポケットに手を突っ込んだまま進む。ホワイトブレスごっこをするなら、駅構内でちょうどいい感じだ。外に出るとむしろ強すぎるからね。やる人がいるなら、ですが。しませんけど。

スーパーの前の自転車が倒れ、コンビニの前の幟が倒れ、重そうな電飾のついた看板すら今にも動き出しそう。足場のついたマンションの横を通るのが怖い。

自販機横にあったゴミ箱が、あれよあれよと飛ばされていった。ひっかかりなく甲州街道まではみ出し、交通整理のオジサンの目の前で止まる。オジサンとセメントの目が合う。下手に触ってもっと大変なことになったら(たとえば、甲州街道の真ん中まで飛ばされたら)嫌ですよね。

オジサンとセメントは、そのままにしておきましょうと目だけで会話をする。ウンとうなずく。元の場所には戻さず、車道からだけどけるようにちょっと移動させる。

途中のラーメン店にに、珍しく行列ができている。これがメリー・ポピンズなら、行列は全員吹き飛ばされて彼女が飲食店で働き始めることになるのだけれど。指を鳴らせば食器が片付く。

サンドイッチを買って、袋を鯉のぼりみたいにして歩く。気を抜いたらサンドイッチごと飛ばされそう。傘では飛べなかったけど、今度のスーパーチャリ袋なら。

風にエコバッグを飛ばされた人が、すみませ〜〜〜ん!誰か〜〜〜!!!と叫びながら追いかけていった。丸く空気を含んだ紫のエコバッグは、バラの頭がはねられたみたいにポーンとまっすぐ飛ぶ。向かい側から自転車で来た人が、ノールックでキャッチした。カッコいい。

スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス。望みを叶えてくださる言葉だ。


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