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プロローグ 好きな音楽をして生活する

初めまして、フルートを吹いていますhataoです。
 僕はこれまで約20年間、音楽をしながら生きてきました。それを聞いて音楽家でない人は「音楽で生活するなんて、すごいね!」「好きなことで暮らせていいね」「音楽で、ちゃんと稼げているの?」など、いろいろと思うかもしれませんし、同業者の音楽家なら「どうやって、どのくらい稼いでいるの?」とか「どんな活動をしているの?」と思うかもしれません。

 自己紹介すると、僕はこれを書いている今40歳の独身男で、18歳から楽器を始めて、ほぼ音楽関係以外の仕事をせずに今まで生きてきました。僕が演奏している音楽は「ケルト音楽」として知られている音楽で、具体的にはヨーロッパの西のほうの伝統音楽を、フルートなどの笛で演奏しています。でも、ここではそういう話をするつもりはありません。タイトルのとおり、音楽家とお金のことについて語りたいからです。
 
 最初にお断りをしますが、僕は演奏だけをして生活しているわけではありあせん。週末などに演奏して収入を得ることはあるのですが、それは収入のごく一部で、それだけでは全然生活が成り立っていません。それをもって「プロじゃない」というのであれば、プロではないのだと思いますし、そういう意味でプロじゃなくても、全然構わないのです。むしろ、それを選択した結果が今なのですから。

 たいていの音楽家がそうだと思いますが、演奏のほかにレッスンをしたり、CDを作って売ったりしています。僕はそれだけではなく、教則本を書いたり、本に寄稿したり、楽器を輸入販売して楽器店を経営したりと、音楽に関するいろいろなことを組み合わせながら収入を得ています。大金持ちではありませんが、お金の不安がない暮らしはできています。

 僕はオーケストラの団員ではないし、メジャーレーベル所属でもないし、音楽事務所に所属してもいません。それどころか、いわゆる営業仕事の依頼もほとんどないし、ライブが週末にあるくらいの零細音楽家ですが、今の活動スタイルや仕事のバランスには、すごく満足しています。

 誰に頼まれたわけでもないのに連載を始めたくなったのは、これまであまり誰も音楽家とお金について、正面から語っていないからです。きっと、音楽家は芸術の求道者とか潔癖で清貧な宗教家、あるいは崇高な教育者みたいなイメージがあって、お金のことを書くとイメージが損なわれるか、最悪批判にさらされるおそれがあり、誰も語りたいとは思わないのではないでしょうか。

 この連載は、メインストリームの音楽ジャンルでメジャーデビューを目指そうとか、営業の仕事をバリバリ取っていきたいとか、とにかく忙しくツアーやライブをやりまくりたい、という人には全然役に立たないばかりか、むしろ害悪だと思います。そうではなくて、自分の好きなことだけやり、やりたくないことは極力せず、それできちんと暮らしてゆきたいと夢想する若い人に「きっとできるよ」と伝えたくて始めました。

 僕が出会った先輩音楽家、僕がしてきた仕事、働き方と生活のこと、お金についての考え方を、少しずつ書いてゆきたいと思っています。

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