見出し画像

科研費の審査員になってみて思ったこと:「読みたくなる申請書」

「審査員になってね」という書類が来て、「わかりました」という返事をし、しばらく音沙汰がない。どうなったんだろうなあ、と思っている頃に、突然、重たい段ボールが送られてくる。開けてみれば申請書の束がどっさり。その昔は、紙で送られてきていたんです。それはもう眩暈がしそうなほどの厚さ。。。。
謝金はお支払いいただけますが、その金額の10倍、いや、100倍ぐらいもらわないと合わないほどの労力です。いや、でも、お金じゃない。。。あ、でも、無料もあり得ないですけどね。
私も申請書を書いて、採択をいただいて研究を進めてこれたので、研究者としての義務だと思ってやってました。
 
ただ、理解できない文章を読み解き、正確に理解して、正しい判断をしないといけないというプレッシャーに、自分の研究の時間が割かれてしまうというストレス。。。2段階審査も参加する場合には、まる1日がつぶれ、他の委員の方々との合議をする。。。なかなかストレスフルなタスクです。
 
素晴らしい申請書だと、スラスラと読めるんです。ああ、なんて素晴らしい、頑張って成果を出してください。文句なくあなたは満点です。そういう申請書は読み始めてから採点まで、だいたい30分程度で完了します。ところが、難解な申請書は、一行読むにも時間がかかる。

待って。これ、どういうこと?
意味わかんないんだけど。。。
なんのためにそんなことをするの?
 
時間をかけても理解できない時は、後回しにします。そこで引っかかっていると残りの申請書が読めない。読みにくいのは飛ばして残しておき、他の申請書を最後まで読んでから、残しておいた何件かを再度読む。もう苦痛でしかない。ウェブで単語を引いて解説を読んで、
なるほど、言いたいことはこういうことですね?!
なら、こう書いてくれたらわかるのに。。。。
と思うのです。

分かり易い、読みやすい申請書を書くことは、お互いのためであり、生産性もある。ですから、審査員が読みたくなる申請書を皆さんに書いていただきたいと、切に思います。
 
そこで、どのように書いてほしいと思ったか、具体的に記載してみたいと思います。
申し訳ないのですが、今回もわずかばかりの執筆代をいただくことをご理解いただければと思います。
なお、私は生物系です。
 

研究課題名 

キャッチ―なタイトルがいいんだよ。
その昔、基盤Cがなかなか採択されなかった時、以前の指導教官に言われました。タイトルをいくつも考えて、キャッチ―なタイトルをその元指導教官に選んでもらいましたが、結局採択されませんでした。
実際、審査員になって読んだ時に、タイトルはほぼ関係ないように思いました。課題名は名前みたいなもので、覚えやすいのがいいです。あまり突飛なものだと違和感だけが残ります。二段階審査で同じ委員が担当する時、あの内容ね、と、すぐに思い出せるような内容と合致するタイトルが助かります。
 

研究組織


基盤Cは、申請者が代表者だけというのはよく見かけましたが、基盤Bは代表者だけというのはあまり見かけません。基盤Bぐらいの内容だと、そこそこの実験内容になるはずです。それを一人で実施するというのは計画性として疑問を持ちます。実験計画に見合った組織構成にしてあると、疑問を持たずに読み進むことができます。
 
さて、

1 研究目的、研究方法など

調書には下記の記載があります。

「冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)本研究の着想に至った経緯や、関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ、(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、(5)本研究の目的を達成するための準備状況、について具体的かつ明確に記述すること。本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述すること。」

このように記載するようにと指定があるのですから、そのまま書いてほしいのです。なのに、書いてくれてない方も多いです。

そして、評価は、
・実行可能性
・研究遂行能力
・学術的重要性
が採点のポイントになります、と、調書に書いてありますよね。予備実験のデータが掲載されていると、現実的だなと、思います。申請者に、当該分野の発表論文があると、研究遂行能力があるなと思います。当該論文がしばらくでてない場合でも、少なくとも2年以内に発表された論文があった方が、ちゃんと研究能力があるんだと、判断しやすいです。

(概要)その概要を簡潔にまとめて記述

まずは、その申請書で提案する研究目的を5行ぐらい、多くても10行以下で説明してもらえると、どういう内容を読むのか、覚悟ができます。長すぎず、短すぎずまとめてあると、「お、これは期待できるぞ」と思い、次を読みたくなります。

(本文)

(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」

論文でいうところのイントロですよね。
その分野での研究の背景をまず説明してください。そもそもどうしてこの研究分野があり、これまでどんなことがわかってきていて、まだ、どんなことがわかっていなくて課題となっているのか。分野外の審査員にも理解できるように記載をしていただけると嬉しいです。また、課題があるポイントがどこかわかるように、イラストなどで説明があると、助かります。
また、イントロで、あなたの総説が引用されていたりすると、

「ほほ~、この分野を総括できる立場にあるのね。」

というのがわかります。
引用論文は、参考論文リストとして、本文中のどこかにまとめリストしておいてもらえるといいと思います。

ここから先は

2,042字 / 2画像

¥ 100