見出し画像

チェロの知られざる名曲③アレクサンドル・グラズノフ 「2つの小品」Op. 20より スペイン風セレナーデ

皆様こんにちは、Cellist Harukaです💖バッハの無伴奏チェロ組曲やドヴォルザークのチェロ協奏曲などとは違って、一般的にはまだまだ知られていないチェロの名曲をテーマに、シリーズの第3回目の記事をお届けします。

第1回、第2回はこちら⬇️

グラズノフ :「2つの小品」Op. 20より スペイン風セレナーデ(セレナード)
Glazunov: 2 Pieces, Op. 20 - 2. Sérénade espagnole

楽曲紹介・概要

アレクサンドル・グラズノフ 作曲「2つの小品」Op. 20より スペイン風セレナーデは、1888年にチェロと管弦楽のために作曲されました。

ペテルブルク楽派(民族主義)とモスクワ楽派(国際主義)を見事に融合させたロシアの作曲家で、指揮者でもあったアレクサンドル・グラズノフは、プティパの委嘱によるバレエ「ライモンダ」や「四季」、そして交響詩「ステンカ・ラージン」などの代表作で知られています。本日ご紹介する「2つの小品」以外にも、チェロと管弦楽のための《吟遊詩人の歌》作品71や、チェロと管弦楽のための《コンチェルト・バッラータ》ハ長調 作品108など、チェロのための作品もいくつか遺しています。

「2つの小品」は第1番のメロディと第2番のスペイン風のセレナーデの2曲から構成されている協奏的作品で、本日のテーマである第2番は、まさにタイトルどおり、スペイン的な情熱がほとばしる力強い曲で、生き生きとしたエネルギーが充満した名曲です。また、アクセント的に使われる複前打音が何度も繰り返し登場し、音楽を華やかに彩ります。気分が高揚するようなピアノの間奏も魅力的です。私もよく生徒様に弾いていただいていて、発表会やコンサートなどにもぴったりな一曲だと思いますので、是非チャレンジしてみていただきたい作品です✨

実は、以前YouTubeでも、ちらっとご紹介させていただいておりましたので、よろしければこちらの動画もご覧ください💗

グラズノフの生涯と作品

グラズノフは、1865年にサンクトペテルブルクの裕福な家庭(父はプーシキンの「エフゲニー・オネーギン」の版元であった出版業者で、母はピアニストだった)に生まれました。

神童として知られたグラズノフは、14歳の時に「ロシア五人組」のバラキレフの紹介でリムスキー=コルサコフに師事し、リムスキー=コルサコフに「彼の音楽的な成長は、日ごとにではなく、文字通り時間ごとに進んだ」と言わしめるほどの才能の持ち主でした。リムスキー=コルサコフも、やがてグラズノフを弟子ではなく同僚とみなすようになり、年齢差を超えた友情は生涯続きました。

グラズノフの人生を語る上で欠かせないのは、裕福な材木商で篤志家でもあったミトロファン・ベリャーエフの存在です。芸術家を庇護し、自らの名を冠した楽譜出版社を創業するなど、ロシア文化の振興・発展に多大な貢献をしたベリャーエフはグラズノフに魅せられた一人で、グラズノフは1884年に ベリャーエフにヨーロッパ旅行に連れ出されます。このとき、16歳で発表した交響曲第1番が、リストの指揮によってワイマールでも演奏されたことにより、国際的な名声を得ました。
翌1885年に、ベリャーエフはライプツィヒに出版社を設立、グラズノフやリャードフ、リムスキー=コルサコフ、ボロディンらの作品を自費出版したことで、様々な新進作曲家がベリャーエフの庇護を受けようと集まってくるようになり、それがのちに、いわゆる「ベリャーエフ・サークル」へと発展していくことになります。

国際的な名声を得たグラズノフにとって、1890年代は円熟期とも呼べるほど充実した時期で、第4番から第6番までの交響曲(※)、弦楽四重奏曲 第4番と第5番、そして先にご紹介したバレエ音楽《ライモンダ》と《四季》を完成させました。1899年にはペテルブルグ音楽院教授に就任し、1905年に同音楽院の院長に選出され、ショスタコーヴィチは弟子にあたります。音楽院で教育者として多大な犠牲を払い尽力するものの、保守主義であったグラズノフはやがて音楽院内で非難されることとなり、1928年にウィーンで開かれたシューベルトの没後100周年記念行事に出席するために国外に出たきり、二度とソ連に戻ることはありませんでした。グラズノフは、演奏旅行でヨーロッパとアメリカを巡り、体調不良を理由に1932年にパリに居を構え、1936年に同地で亡くなりました。
(※交響曲第3番を作曲した1890年から1891年ごろまでは、創作活動のスランプに陥っていたと言われている。)

おすすめ名盤

この記事の冒頭で、イッサーリスによる演奏の動画(ショートバージョン)をご紹介していますが、リン・ハレルの演奏はまた一味違った趣があって是非聴いていただきたいです♪

また、「愛の喜び クライスラーへのオマージュ」というアルバムに収録されている、シュロモ・ミンツによるヴァイオリン版もとても素敵です❣個人的に、同じ曲を異なる編成で聴くことをいつも大切にしていて、音楽に浸る喜びのためというのはもちろんのこと、表現力を高めるための練習の一環としても、様々な音源を聴くよう心掛けています。

ご紹介した音源は、いずれもAmazon Musicや約9,000万曲が聴き放題のAmazon Music Unlimited(※)でお聴きいただけます🎧🎶✨
(※30日間は無料でお試し。キャンセル・プラン変更も可能。)

これからも、皆様がますますチェロに魅了されるような名曲をご紹介していきたいと思います🎶どうぞよろしくお願いいたします🥰

noteのサポートはクリエイターへの「投げ銭機能」です💗 皆様のお役に立てるようなコンテンツ作りを目指して頑張りますので、サポートしていただけるととても励みになります🥰