第17回天国歌会(百首会)で作った短歌

鈴木ちはねさんと山本まともさんが開いた百首会という、一日で短歌を百首つくる会に参加してきました。短歌からしばらく離れていた、というか様々なものからここ半年ほど離れすぎているため、リハビリをしたいと思ったのがきっかけです。苦行みたいな感じはほとんどなく終始楽しかったです。

クオリティを考えなければぽんぽん短歌はできたものの、作った短歌を発表する予定も場所もないことに気づいたので、せっかくだからこの機にnoteに登録してみました。これ以降どの程度使っていくのかはわかりません。

発表時から改稿している作品が多々あります。また一部発表順と異なる順にしました。


退職届が先なんだけど 花は葉に ハローワークへ行ってみたいな

葉桜と白馬 わたしに先駆けて老いてゆくものたちの庭園

スプラシューターはスシって略す 「主人公だからなスシは」 スシは主人公

蚊を殺めることばかり日々の喜びでバケットスロッシャーデコ上手くなる

本能とこころの差異は キャンピングシェルターひとり敵陣へゆく

筆洗はスプラトゥーンで強い武器 こころのよりどころのふであらい

野遊びのこころできみと闘いたいボトルガイザーフォイルの泡で

死のような詩を(この時点でもう駄歌だ)涸れつつ書くんだなこの指は

竜の寝言のように聴いてる青葉騒 すでにVirtualだろう言葉は

じゃあ私も朝ごはんを食べてきます 歌とごはんは両立するかな

朝食のみそ汁の三つ葉の匂いここからが天国の始まり

上司にも会社にも恨みはないがゆうまぐれ花じゅうに満ちくる

木犀のにおいは路地をにじり来て傘を差したいような星の夜

MOTHERのネスには使えない技ばかりだね紫陽花とスマブラの日曜

風呂桶の水と月光 電球がなくてものっぺりと生活は

ひとは必ず間違うけれどandropとandymoriは覚えなさい、と

手をふれば手とは五月の残像で 悪い視力がみちびく感情

心臓がこぼすひかりのように蝶ことばから今が昼となりゆく

ひびわれてゆくから心 海沿いの汐風のだれもいない公園

一時間七首のペースでいいけれど昼ごはん晩ごはんお風呂よ

花冷えの、渡りに舟で天国へゆくのはとてもいい花の風

おにぎりは保存の壺に入れなさいあしひきのテーブルマウンテン

風来のシレンであればどうたぬきくらい嬉しいうどんの月見

恐竜の骨格標本ならべつつあつまれなかったどうぶつの森

かなりあもえにしだもともにばらばらのゆらゆら帝国のファズギター

蜉蝣の死に方の分類学もありや疫病の街を歩みぬ

睦月さんが大天国の人々を眺めてる天国のうえより

ほころびと反故のさかいを降る木の葉だんだん歌えなくなってきた

夕闇にくちづけている紫木蓮ことごとく恐竜は亡びき

スポーツのクイズを投げてよこす兄あなたへはカントリーマアムをあげる

蜃気楼のなかの昼餉よ 海を恋うこころはすでに帆を張りながら

死臭って知らないかもなあ晩春の月太りつつしずかなるかな

疲れたる夕暮れの髪たばねわれオリーヴのごとき鬱の一塊

水中考古学うつくしき文字にして美しからむ水中のいにしえ

頓狂に桜は満ちて死ぬときはみんなでみんなを忘れて死のう

落葉からしぼったようなウイスキー照らしあうほど孤独になれる

藤の匂いのさなかかすかに聞きとどむ移動販売のパン屋さん

海の日の幽霊のような昼下がりベーカリーのビニールのパンたち

スーパーでいつも買っちゃうボンタンアメ幸いはここにあると思って

藤の闇に藤のあかるさ呑まれつつあなたの立直ならばうれしい

跳満になった裏ドラありがとうそして世界のみんなありがとう

三人立直を切り抜けながら都議選のごと心内は荒れてゆくかも

陶片追放するならきっとていねいに陶片に書くだろう名前を

麦茶って麦を使っているからほぼ酒ですよねと阿波野さんそれは

cali≠gariに姉は誠心尽くしいき桜井青の名のうつくしさ

サニーデイ・サービス『いいね!』よかったよ殴られたいくらいの春の風

蜻蛉の青き水平 力学が築く空気の庇のいくつ

シーラカンスの魚影大きくよぎりゆくあなたの詩心の岸辺に立てば

いつしか雨は霽れあがりたり地球上憩いうる樹の総数はあり

海底に鯨の影は下りながらエレベーターにわれは眩暈す

五十首到達しました遠い光から徐々に雨だとみえてくるよう

命は眠る、たぶんウィルスは眠らない、眠らないけどウィルスは死ぬ

文字を読む視線にて追う水陽炎悲しみにふいに鍵挿されたり

降りて止む雨をバイクのきらきらと梔子の香を崩し散らせつ

トリビアの泉の知識で切り抜けた飲み会の数 これってトリビ

氷るように夕暮れは来つ包丁の魚の胸鰭に当つる一瞬

透明の蜂いるごとき疼痛の指もて国会中継へ変う

木漏れ日を浴びる小鳥の息づきのいちえんだまころがり来るごとき悦

酩酊の、黄落しげき街ゆけば出会いぬ夜の虹―でなくネオン

午睡より昇り来たりつその刹那たしかに雲雀なりし夢際

ココアと愛の近さを指摘する句評われも肯いつつ冷えいたり

流れこむ冬陽に部屋は水めきてそれのみにして部屋を出られず

バターロールパンの三個を昼餉とす消費期限四月三十日

髪が伸びることのみが最後の矜恃にてありったけ髪伸ばして死なむ

沛然と甘き匂いは降りくるをタピオカ茶(ティー)も台湾料理(題詠:タピオカ)

古池の蛙のその後古池の蛙の音のその他はせず(題詠:蛙)

止まらないかっぱえびせんその速度に追いつくかっぱえびせん工場(題詠:おやつ)

薄切りの胡瓜は透けながら光る胃の腑のなかでもきっときっとね(題詠:キュウリ)

木の葉を拾えばそれが家具だとわかるまでほんとうにただどうぶつの森(題詠:テレビゲーム)

夏は命を刈り奪る形に訪れて蟬時雨いずれ熄むまでしぐる(題詠:漫画)

折り鶴のうちの空気も星月夜その夜ごとあなたへと手渡す(題詠:折り紙)

まともさんの名前はまともなのかなあ牧野虚太郎くらいまともか(題詠:まとも)

翳したるファイルを秋の陽が透けて音楽は皮膚のうえで始まる(題詠:かざす)

電気で走る車で電車だったらさバナナのナナチもバナナナチだよ(題詠:電気)

冷凍庫の蛇の餌用マウスたちディズニーランドのクッキー缶に(題詠:マウス)

小鳥ほどの鼓動であればあるだろうのら猫の嗅いでいる落椿(題詠:鳥)

ハイカラスクエア全土を覆うほどの傘あってほしいなイカたちに傘(題詠:烏賊)

アボカドとバターと醤油をごはんへと 希望って言葉信じられちゃう(題詠:バター)

木の葉からもらった息を生き継いで新幹線に傘をわすれて

赤ちゃんにも原罪があるっていい思想こんなんなんぼあってもええから

チェス盤の石音すずし銀杏並木来たりし君の指の光芒

猫抱けば一個の猫宇宙を抱くここちに猫へ額づきたきよ

時間方向に太ってゆきたしと老いながら日々酌むハーブティー

天国はかようなる場所昼日中躑躅こぼるるごとく歌落つ

葡萄酒の染みある手紙感情の遠い丘まで届いてくれる

巡礼ののちの辛夷の季節かな幸せな外出をしていた

海へゆく小径の数の感情のどれもが辿りつく海の崖

煙草からこぼれくるのは火と言葉ふたりでこぼしふたり揉み消す

シムシティだったら立てる原発の  災害で減るいくつかの数

花に喩えてしまう心を隠すため三月十日傘ひらく闇

リラ冷えの闇の明度の冬っぽさ生きている限りは致命傷

心底の底に降る雪 引退するVTuberの水を飲む音

笑わずに聴いていたいなおならにも聞こえる春の川の波音

船を焼く船長はいずれ船員も焼く、とは言わなかったウソップ

秋の如雨露がこぼす秋思のようなもの受けとめて萩を時間ながれる

蒸し返す喧嘩の奥のふつふつと鶏頭の手をあげる隊列

言葉になる岸辺で消える漣を見ていた、君の身ぶりに、カフェで

樹々に要る塩分量の私からきみへ送れるだけの物語

無花果の重さが脳の内部にて涙に変わるまでが秋だ、と

麒麟草燃え尽きるまぼろしのなか一握の天国のイメージ

Splatoon2ただいま無料期間中Switchがある人やりましょう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?