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「ザ・キング:永遠の君主」最新Ep.12最終シーンから見る韓国の歴史観

こんにちは。Netflixと映画、韓国を愛してやまない日本在住・韓国人のカイラです。今日のテーマはNetflix X 韓国です。

いきなりですが、皆さんはNetflixの「ザ・キング永遠の君主(더킹 영원의 군주)」(以下、ザ・キング)見ていますか?私は「トッケビ」などで有名な脚本家・キム・ウンスク(김은숙)先生の最新作ということで、日本でほぼリアルで見ています。(今日は作品そのものについてのレビューや考察ではないので、こちらはおいおい…)

「ザ・キング」の考察はしないものの、簡単に言うと二つの別世界が同時に存在していて、どちらの世界にも自分と全く同じ顔(指紋まで一緒)の同一人物が、全く違う人生で生きている。そしてその二つは別物だからこそ均衡が保たれていたのだが、とあるきっかけからその均衡が崩れ始め、そのバランスを保つために翻弄する主人公たち…というのが、ネタバレを防ぐためのざっくりとしたあらすじです。主人公は「トッケビ」主演のキム・ゴウン(김고은)、同じくキム脚本家の「相続者たち」で主演を務めたイ・ミンホ(이민호)という実力者揃いで、正直主演陣の熱演には惚れ惚れします。(個人的にはウ・ドファン(우도환)の魅力にやられています)

さて、本題のEp.12の最後のシーンについて。(以下、ネタバレも含まれるのでまだ見てない方は終わってからどうぞ)

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シーンは大韓帝国の皇宮の中で、ノ尚宮(노상궁)と主人公のチョン・テウル(정태을)警部補が向かいあい、お茶をしながら何か対話をしている所。

これまでのぶしつけな態度を謝りつつ、おもむろに自分の生い立ちを話し始めるノ尚宮。そして最後に、緊迫感のある音楽と共に出た質問は、以下の衝撃的な一言でした。

「あの戦争は、どうなりましたか?1950年6月に起きた、あの戦争のことです。」(그 전쟁은 어찌 됐소? 1950년 6월에 일어난 그 전쟁 말이오)

それを聞いたチョン警部補は、え?という表情で波が徐々に迫ってくるような勢いで当惑し、混乱した表情を見せ、そのままEp.12は終了します。(もちろん、これはストーリー的にもとても衝撃を与える一言だったはず)

さて、皆さんこの戦争が何を指すか、瞬時にわかりましたか?

即座にわかったあなたは歴史について詳しいか、もしくは韓国の歴史に相当通じてると思います。


------ここからは、私の個人的な意見・考察であり、シリーズの今後の展開、またこの発言の正当性を約束するものでもありませんので悪しからず------


きっと韓国人もしくは歴史通な方ならば、すぐピンときます。

そう、朝鮮半島に悲劇をもたらした「朝鮮戦争(韓国では韓国戦争の方が一般的)」のことです。(正確には、そう強く推測します笑)

記録としては1950年6月25日~1953年7月27日まで、朝鮮半島にていわゆる北側と南側で同じ民族同士で戦うことになった、とても痛ましい戦争でした。この戦争が痛ましく、そしてかつてない程の規模にまで膨らんだのは、他でもない第二次世界大戦中の米国・旧ソ連という資本主義と社会主義2大国の代理戦争でもあったからでした。

直近では、2018年4月に文大統領と金総書記が手をつないでまさに歴史を変えたともいわれる、パンムンジョン板門店(판문점)での会談について、皆さんもTVで見たことあると思います。そこでいわゆる休戦条約が締結されたものの、あくまでこれは「戦闘の休止」だけであり、「平和の条約」は締結されておらず、残念ながら2020年現在も「休戦」のままです。

日本でも一定の認知度がある映画作品として、「ブラザーフッド(原題:태극기 휘날리며)」という映画があります。チャン・ドンゴン&ウォン・ビンというまさに美男ペアで注目度も高く、日本でも見た方が多いと思いますが、正直内容は日本語タイトルにある「兄弟愛」といった生易しいものではなく、本当に痛ましいです。戦争というものが人々の人生に与える影響を考えるには、(正直どの戦争映画もそうかもしれませんが)十分すぎる程の代償を垣間見る事ができます。

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韓国では、映画やTVの作中、はたまたKpopアイドル達のSNSを通じても、自国の歴史やアイデンティティーに強く誇りを持ってる人を目撃されたかもしれません。特に、Kpopアイドルのようなエンタメ業界の若者が、インスタの投稿画面いっぱいに国旗である太極旗を掲載する様子などは、日本からすると少し考えられないかもしれません。

そんな韓国で、特に韓国人が「歴史」「アイデンティティー」「太極旗(国旗)」等を思い浮かべる日としては、この6月25日以外にも以下があります。この日にこれらのキーワードに関連した言動やSNS投稿、ニュースを見るのはとても自然なことだと思います。

3月1日 3.1節(独立記念日)삼일절

8月15日 光復節 광복절(日本では、終戦記念日)

*その他、「国旗を掲げる日」とされる6月6日 顕忠日현충일、7月17日 制憲日제헌절、10月1日 国軍の日국군의 날、10月3日 開天日개천절、10月9日 ハングルの日한글날、等も該当するかもしれません。(namu Wiki: https://namu.wiki/w/%ED%83%9C%EA%B7%B9%EA%B8%B0#s-5.1)

日本では、幸か不幸か、戦争について意識するのは8月15日の式典や、自衛隊関連のニュース、また米軍基地の移籍問題や改憲についてのニュースが流れた時が主かもしれません。この場で憲法や自衛隊等について言及するつもりはないものの、日本だからこその平和な生活そのものは、世界から見ると「お金を払ってでも欲しい」ものであり、個人的にその意味ではとても尊い価値観であり秩序だと感じます。そうはいうものの、戦争や平和についての議論はとっても壮大で慎重であるべきものなので、本投稿では控えさせて頂きます。

という訳で、今日のメッセージは、「韓国(のエンタメ)は、自国の歴史やアイデンティティーに関するメッセージが日常的に発信されており、それがテーマになるのはもちろん、ストーリーの鍵・ヒントとなるのもとても自然な現象であり、それこそが総じて文化である」です。決して愛国心や歴史観についての議論をしたかった訳ではなく、最後のシーンを見た時に、「あれ、これ韓国人じゃないとピンとこない一言なのでは?」と感じたのと、一方で「知らないとピンとこない=文化の理解に深まるのでは?」という思いから書かせて貰いました。

いかがでしたか?少し長くなりましたが、ドラマという作品を純粋に楽しみつつ、韓国の文化や歴史、また作品に組み込まれた歴史観や意図を知る、という作品を見る際の視点について参考になれば幸いです。(もちろん韓国作品だけでなくどの国の作品を見る際にも^^)

Thank you and addios!

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