週末

キーボードを打つ音が反響する。その音をベースとしながらさらにキーボードを叩き、マウスをササッと操る。

誰に言われたって融通せず、愚直に歩き続けた午前9時の長針の背筋に、敬礼をしながら、よしここからとコーヒーを口に流し込む。


土曜日の朝の会社は誰もいないので案外、清々しい。
OLさんがメンテナンスと称しマッサージにいく感覚である。
パソコンの中に溜まった毒素を、ふくらはぎを揉むようにキーボードを打つことで、リンパ線へと流すのである。これで月曜日からお肌ツルツルで出勤できるので休日出勤はなんて良心的サービス!とさえ思っている。


しかし!4割くらいの作業を終えたら、すぐに帰った。もうエステなんかでは処理できない、大学病院で一度精密検査を受けてから来てほしい、わたしをなんだと思ってるんだ。一介のエステティシャンヌに血液成分まで聞いてくるんじゃない、答えられなくてがっかりするんじゃない。


いつものパターンである。
仕事は永遠に終わらない。
私はただ事に仕えるのである。


頭では分かっている、ただ仕事をした副作用かまだ興奮している。このモンスタークレーマーめ!次来たらただじゃおかないゾ!プンプンプンプンと最後のプンが口から飛び出してしまい慌てて拾おうとしたが、


そこは私以外には二人しかいない小さな沖縄居酒屋だったので、そのまま溢しておいた。

「ヤマモトさんまた仕事でミスしたんですか?」
「オレはしてないよ。」
「マジっすか。」
「いや、なんでガッカリしてんのよ。
 失敗を求めてるんじゃないよ。
 あなたこの店の店長なんだから、 
 お客さんファーストで営業しなさいよ」
「りょーかいっす! 
 お客さん来たらそうします」
「いやオレオレオレ」

ダハハハと文字通り腹に手を当て笑う姿をみて、ワイシャツの腕ボタンを外し3回ほど折りたたむ。枝豆、ビールと口に流すと、にたーっと口角がだらしなく横に広がりそうなので、一口を小さくした。

「ヤス君と店長って仲いいよね」
カウンターにすわる、アスカが言った。

「いや、オレはこいつキライっすわ(笑)」
「オレもだよ(笑)
 なんでもいいからゴーヤチャンプルー作ってくれます?」
「ゴーヤ時価なんですけど大丈夫ですか?」
「どこのゴーヤ使ってんだよ」
「ロシアです」
「色々となんでだよ(笑)もういーから早く作って」

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