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【C】広島大躍進、キーマンは監督

 地力はあるものの、あと一歩のところでAクラスを逃すというのがここ数年の広島だったが、今季は新井貴浩新監督の下で大躍進。2位をひた走っている状況にある。今回は、そんな生まれ変わった広島の凄みについてを書いていくこととしよう。

4番に伏兵、破天荒采配功奏す

 よく、采配には正解はないが不正解はあるという言葉を聞くことがある。故野村克也氏が生前常々言っていた「不思議の勝ちはあるが、不思議の負けはなし」という事こそが真理で、今回の新井傭兵も正解かと言われたらよく分からないが選手がひとつひとつ正解にして行った印象を持つ。

 新井傭兵の良さは思い切りの良さだ。調子が悪ければ中軸を打ったり、ローテーションを回しているような主力の選手でも二軍に落とし、その逆に調子が良ければ高校を出てすぐの若手選手でも、実績のない中堅選手でも一軍でポンと使うのが印象的である。その象徴が4番に伏兵の上本崇司を入れたことだろう。

 彼は令和5年の9月26日現在で、実働10年間の中でたった3本しか本塁打を打っていない選手だ。失礼なことを言うと、チームの核である四番打者に相応しいかということ以前に、主力かも怪しいような選手だ。そんな選手を4番に据えた打線は面白いようにつながり、厳しい夏場に大きな7連勝を記録したのだ。今季の広島がAクラスに鎮座しているのも、この連勝が大きかったのではないか。

犠打は必要最低限

 今季の開幕時、新井監督は「ノーバント宣言」を出していたが、やはり143試合の長丁場では必ず犠打をすることが必要な場面が巡ってくるものだ。彼はその「必要な場面」を見極めることがうまかったと言えるだろう。

 今季の広島で犠打を多く決めた選手を見ていこう。チームトップの12個を成功させた伏兵の矢野雅哉がなんと成功率10割。2位の秋山翔吾も同じく10割で続き、その後も野間峻祥、前述の上本らが9割近い成功率で続くのだ。徒然草ではないが、「この一矢に定むべしと思へ」という気で犠打を決めているからこそ、この高い成功率が達成されているのではないか。

若手の台頭次第では…

 今季の広島を最下位と予想した僕が言うのはおかしいことかもしれないが、来季は広島が覇権を奪回する可能性が大いにあると考える。若手とベテランのコンビネーションは他のセ・リーグ球団を見ても頭1つ抜けているのだ。その中で、殻を破って欲しい若手が投打で1人ずついる。

 投では玉村昇吾。ゆったりとした二段モーション気味のフォームから、力強い直球を投げる投手である。横浜の今永昇太や、中日の小笠原慎之介のような本格派の左腕である。今季は故障に苦しみ今のところ3勝止まりだが、1年間ローテーションを回ると2桁勝利はノルマとなるのではないか。

 打の方では田村俊介。手前味噌ではあるが、この選手は僕の高校の一つ下の後輩である。愛工大名電時代は投手として活躍していただけあって、野球センスは抜群のものがある。バットを持って一閃睨みをきかせると、まさに往年の前田智徳のような雰囲気だ。先日、中日戦でこれまた若手の齋藤綱記にぶつけられてしまい、骨折で無念の離脱となったがしっかりとオフをすごして来季レギュラーを奪取して欲しいものだ。若鯉がマツダスタジアムの芝生を縦横無尽に泳いだ時、広島は再び黄金期を迎えるはずだ。

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