なんでパ・リーグが強い?

 ペナントレースが終わると、クライマックスシリーズが始まり、勝ち抜いた両雄が日本シリーズへと駒を進める。直近の10年間でセ・リーグが平成24年の巨人だけである。指名打者制度などのこともあるが、果たしてそれが原因なのか。今回は色々な観点からパ・リーグの強さを考えよう。

戦力より育成に投資するパ・リーグ

 パ・リーグは昔から有望な選手をセ・リーグに取られてきた。「在京セ」という言葉はもうほとんど死語であるが、それでも子供の頃からの夢を追う形でセ・リーグに行く選手が近年も目立つ。オリックスから阪神にFA移籍した西勇輝と糸井嘉男、同じくFA移籍で西武から巨人に移籍した炭谷銀仁朗らとやはりチームに欠かせない主力選手の引き抜きはリーグ格差のない現在でも起こっているのだ。逆にセ・リーグからパ・リーグに移籍した主力選手は中田賢一くらいではないか。小久保裕紀やサブローなどのキャリアをスタートさせた地に現役最終盤での恩返しのために移籍した選手は例外だが。
 こういった歴史から、パ・リーグは設備に投資しているのだ。ソフトバンクは王会長の号令一下、それまで禁忌とされていたチーム全体でのウエイトトレーニングを導入しボディービルダーをコーチに招聘したことは有名だろうか。これによって日本野球のレベルは大きく上がっただろう。
 他にも三軍はMLBのマイナーリーグを模して作られ、千賀滉大や周東右京といったこんにちのソフトバンクを担う選手はここで野球の基礎を叩き込まれた。
 そんな時代を先走るタカ軍団に他のチームも負けていない。今年大躍進を遂げたオリックスは管理栄養士という国家資格を持った栄養学のエキスパートに若手選手の食生活を一任している。現在、オリックスで管理栄養士を担当している河南こころさんがチームに携わるようになってからは山本由伸、宮城大弥を初め「ラオウ」杉本裕太郎や宗佑磨といった投打の要に若手が台頭しているのは目に見えた事実であるのだ。

スカウト方針

 パ・リーグの選手とセ・リーグの選手で目に見えて違うことが一つだけある。パ・リーグには目に見えて肩が弱かったり、脚が遅い選手がほとんどいないのである。鈍足と言われている中村剛也、弱肩と言われている西川遥輝はいるが、その2人にはそれぞれそれを補うだけの走塁判断力の上手さ、スローイングの正確性があるのでチームの足を引っ張ることはほとんどないはずである。もっとも打撃に安定感がない、拙守が目立つと言った技術的弱点を度外視して身体的弱点のある選手を挙げようとしても、その2人しか名前が出せないのもすごいのだが。
 とにかくパ・リーグは、「50mを何秒で走ることの出来る」や「遠投が何mまで投げられる」と言った目に見えたデータでスカウトすることが目立つ。この話で面白いのがロッテの和田康士朗である。この選手は埼玉の公立高校で陸上部に所属し、走幅跳の選手だったようだ。その後、クラブチームから独立リーグに入団し走塁能力という一芸を磨き、ロッテに入団した異色の男である。こうした高校野球を全く以て経験していない選手がプロ野球に入ることの出来る時代になったのだ。
 今まで野球選手は他のスポーツマンとは一線を画していたが、野球選手ももちろんスポーツマンであり他分野のスポーツと共通する所作や技術があるのかもしれない。今後、この様な選手は現れるのか楽しみにしたいと思う。

出身に拘らない監督人事

 伝統がないということがパ・リーグの伝統ではないか。パ・リーグ黎明期の昭和26年、戦前は選手として、戦後は監督として長年巨人軍を支えた三原脩を当時の西鉄が招聘し、三原マジックとしてパ・リーグの船出を大いに盛り上げたのは球史に燦然と輝いている。その西鉄の流れを汲む西武が誕生した際には広岡達朗、森昌彦を相次いで招聘。栄光のV9巨人が培ってきたノウハウを活かし最強軍団を作り上げたことは言うまでもない。
 その後、がんばろうKOBEでオリックスが優勝し、沈むことの無かったはずの獅子軍団に陰りが見え始めた時代に玄界灘のドームに乗り込んだのが世界の王である。巨人で監督を務めるも不甲斐ない成績に終わってしまった王だが、長い目で選手を育成し松中信彦や小久保裕紀ら主砲を育てた。また、先述の通り練習の近代化を推進した結果が今のソフトバンク黄金期を支えていると言っても言い過ぎではないだろう。

最後に

 今季のパ・リーグ、ペナントを掴んだのは意外と言っては失礼だがオリックスだった。これは明日以降書いていくこととしよう。実力のパは今年、日本シリーズで衝撃的な勝ちを積み重ねるのか、若しくはセ・リーグの大どんでん返しがあるのか、楽しみにしよう。

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