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140字のおはなし

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140字の物語をまとめました。
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2021年1月の記事一覧

聴き慣れた歌を、周りの音が聞こえなくなるギリギリの音量でイヤホンから流し、暗い夜道を歩く。
かすかに聞こえる、傘に打ちつける雨の音、遠くで鳴りやまない救急車のサイレン。後ろから近づく人の足音と話し声。
全ての意識を耳に入ってくる音に集中させたとき、
目の前に見えたものは何ですか。

彼女は猫が飼いたいと言う。僕は犬が飼いたいと思う。両方は飼えないけどペットは迎えたい。僕達は無口で家の中が少し寂しいから。
何時間も悩んでペットショップを後にした帰り道、雑貨屋さんの窓越しに見た、寄り添い合う犬と猫の大きなぬいぐるみ。今は僕達の家で並んでひなたぼっこをしています。

「ねえそれなあに?」パウダータイプの美容液をつける私を不思議そうに覗き込む彼。あんまりにも見つめるから「ちょっと見すぎじゃない?そんなにこれが珍しい?」と聞くと「いや、毎日そうやって努力してるからこんなに可愛いんだなぁって」
手がとまる私。きょとんとする彼。これだから天然は困る。