人材

2020年代にホットな人材像とは?

2020年、また新たな1年がスタートしました。「かつてないスピードで変化を遂げた」というコメントが毎年繰り返される、慌ただしい時間を生きる私たち。

時代を闇雲に追いかけても、ただ振り回される。一方で、ひとたび目を背けると時代との距離が急速に広がる恐怖感。まるで、生きるために備えた"防衛本能"が、この先の時代を見越してアップデートされていくようです。

時代の背中を捉え、この1年、プロアクティブで価値ある行動を起こせるように、キャリアや働き方に関連する3つの記事を参考にしながら、2020年代にホットな人材像について考えてみたいと思います。

2020年ホットな職種トップ10

2019年末に、外資系人材紹介会社であるヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンが発表した調査。同社コンサルタントへの調査や転職実績動向を基に作成したレポートがこちら。

ここでは、2020年の国内転職市場における10大トレンドが予測されているので、抜粋して紹介します。

1.キャッシュレス決済増加の流れを受け、Web/モバイル開発者、の需要が急増
2.AI技術者の需要がさらに増加
3.Eコマースの成長で物流担当者の募集が増加
4.製造業でIoTなど新規テクノロジーの経験者への需要が拡大
5.5G関連の知識を持った通信技術人材の求人が増加
6.ライフサイエンス業界では、研究開発関連職の需要が増加
7.IoT製品に欠かせない「組み込みエンジニア」の需要が拡大
8.人事部門の根本的な変革に向け、HRBPやITスキルを持った人事担当者の需要が拡大
9.人材不足が続く経理・財務部門でバイリンガルの財務人材に継続的な求人
10.大手企業の移転計画で、マルチタスクをこなせるオフィスプロフェッショナルの需要が拡大

想像を裏切らない結果です。テクノロジーの進化や社会実装の文脈に沿う職種が大半を占めています。2020年も、社会の発展やビジネスをドライブする重要な要素はテクノロジーである、という表われでしょう。

その中でも、経営の核はやはり「ヒト」であり、HR領域の可能性と課題難易度の高まりを感じさせるのが「HRBP(ニューマンリソースビジネスパートナー)」です。この数年で目にすることが増えた職種なので、「日本の人事部」のサイトでまずは定義を確認します。

HRBPとは、企業の経営層や事業部門の責任者に対し、ビジネスのパートナーあるいはアドバイザーとして、人と組織の面から働きかけやサポートを行い、成果・実績を創出する人事のプロフェッショナルのこと

調べていても定義が明確に定まっているわけではなさそうですが、「戦略人事」と呼ばれる攻めの人事に貢献するエキスパートで、HR×経営の視点から経営課題に切り込む期待が反映された職種だと理解しました。

HR-Techに留まらず、働き方改革、エンゲージメント経営、心理的安全性などの文脈からも、HR領域が経営に与えるインパクトは益々大きくなるでしょう。HRBPは、今後も注目の職種と言えそうです。


2020年代転職の3条件

次は、経営者人材領域に特化したプロフェッショナルファームである経営者JP代表の井上和幸氏が、2020年代に求められる働き方やニーズが高まるスキルやキャリアを予想した記事です。

ビジネスを取り巻く変化を捉えた上で、求められる人材の3つの移行パターンが語られています。

1.『売り切り型』人材から、『サブスク型』人材へ

生活者として利用するサービスを見回すと実感できますが、私たちの消費スタイルは、「買い取り型」から「サブスク型(定額課金・利用型)」へと移行しています。日経電子版やAmazon Prime、Netflixなどが有名ですが、飲食、教育、芸術、コンサルティングなど分野を問わず広がっています。

生活者側からの風景は、裏返せばそのまま労働者側に反映されます。つまり、ビジネスがサブスク型へ移行していることであり、またサブスク型のサービス開発・提供ができる人材が求めされるということです。

サブスク型ビジネスでは、継続利用してくれる顧客をどのように獲得・育成していくかが肝となるでしょう。その実現を担うことで注目を集めているのが「カスタマーサクセス」というポジションです。

カスタマーサクセスは、顧客を受動的にサポートするだけではなく、顧客の業績アップ=成功に向けた能動的な支援をします。カスタマーサクセスを担うための、顧客の体験価値を最大化する「サービスデザイン」の考え方ができる人材や「マーケティングオートメーションツール」の導入・活用経験を持つ人材、顧客データの分析をサービス改善に橋渡しできる人材などが、今後も注目を集めていくことでしょう。

2.『O2O』人材から、『アフターデジタル(OMO、D2C)』人材へ

2020年代のビジネスは、O2O(Online to Offline:オンライン→オフライン)からOMO(Online Merges with Offline:オンライン⇔オフライン)へ移行していくといわれます。

これまでは、オンラインかオフラインのいずれかからビジネスが始まり、例えば店舗ビジネスのオンライン化やオンラインビジネスのリアルチャネル開発によりビジネスを拡大する事例が多かったように思います。

2020年代は、初めから、そもそもオンラインとオフラインの垣根がないことを前提に、ビジネスがデザインされていくのではないでしょうか。自らのビジネス観を「アフターデジタル」の世界にシフトさせられる人材が求められるのでしょう。

3.『オールドパワー』人材から、『ニューパワー』人材へ

書籍『NEW POWER』に示されたコンセプトを土台に、新しい時代に、新しいスタイルで活躍できる人材の在り方の変化が語られています。

詳細は本書に委ねますが、特定のリーダーなど少人数が主導する閉鎖的な「オールドパワー」から、不特定多数の仲間が主導する開放的な「ニューパワー」へのパラダイムシフトが、世界で起こっている様々な事象から読み取れることを記しています。

ビジネス、プラットフォーム、コミュニティ、メディア、コミュニケーション、リーダーシップなど、現在、多岐に渡る分野で同時に起こっている変化は「ニューパワー」の影響を受けているように思います。

それであれば、「ニューパワー」という新時代の概念をアップデートし、思考・行動できる人材が求められることは想像に難しくありません。


2020年、転職市場で買われる職種・経験

最後は、伝説の転職エージェント「モリチ」こと森本千賀子さんが予測する2020年の転職マーケット。

この記事で取り上げられていた仕事をピックアップしました。

●IPOに向けた体制構築からIPO後の運営までを担う「最高財務責任者(CFO)」「IPO準備室長」
●コンプライアンスや内部統制の経験者のほか、四半期決算を含めた開示業務を適切に遂行できる体制づくりを担う経理財務部長、労務管理の体制を構築・運用できる「守り」のエキスパート
●AIなど自社の技術を活用し、クライアントに対して新たな事業・プロダクト・サービスの開発を提案、一緒に推進するような営業職
●「サブスクリプションモデル」でBtoB事業を展開する企業などでは、直販だけでなく、パートナーを開拓する営業職
●オンラインでのコミュニケーション手法を活用したり、自社商品に最適なマーケティングオートメーションツールを選択・導入したりできる人
●経営の目線を持ち、誰に対してどのように訴求していくのかを戦略的に考えられる「CMO(最高マーケティング責任者)候補」
●エンジニアは「超売り手市場」。事業会社のシステム部門では、技術力だけでなく、ビジネスセンスやマーケティング視点を持つエンジニア
●既存事業とテクノロジーの融合、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していく人材として、テクノロジーの知見とビジネスセンスを併せ持つ人材
●Techサービスを提供しているベンチャー企業などで拡販を担う営業

個別具体的な内容は納得感高く、皆さんが所属されている企業でも、そのような人材が不足して(求められて)いるのではないでしょうか。また、総じて「ビジネスとテクノロジーの越境人材」へのニーズが読み取れます。

ビジネスとしての持続可能性を担保しながら、いかにして最先端の技術をスピーディーに社会実装していくか。どのようなストーリーと力学で、人や組織に受け入れられ浸透させられるか。これらを推進できる人材の需要は高まるでしょう。

おまけ:急成長する15職種

リンクトインが、ユーザーデータから導き出した「過去5年間で急成長を遂げた職種」を発表しています。あくまで"成長率"でランキングされているため、ニッチな職種ほどランキングは高くなることには注意したい。

人工知能(AI)専門家
ロボット工学エンジニア
データサイエンティスト
フルスタックエンジニア
サイト信頼性エンジニア
カスタマーサクセス専門家
営業開発担当者
データエンジニア
行動保健学技師
サイバーセキュリティー専門家
バックエンド開発者
最高売上責任者(CRO)
クラウドエンジニア
JavaScript開発者
プロダクトオーナー

このデータからも、技術系職種の需要が急速に高まっていることが読み取れます。ただし、この成長がいつまで続くかはわかりません。なぜなら「コピーができる」「自動化しやすい」「汎用化されやすい」などの特性から、デジタルで完結する仕事は、急速にテクノロジーにとって代わられるリスクも高いからです。

そうなると、一部のスキルフルなエンジニアだけが開発をリードし、次なる課題となるテクノロジーと人間生活の接合を担う「カスタマーサクセス専門家」や「営業開発担当者」などの需要が高まっていくことも考えられます。


まとめ

2020年にホットな人材像を眺めると、いよいよ本格的に、テクノロジーが社会に実装されていく1年になっていくことがわかります。

テクノロジーを新たに開発する人、テクノロジーを既存の文脈に埋め込む人、新しいテクノロジーを社会に広める人、テクノロジーをビジネスとつなげる人、テクノロジーの価値を伝えられる人。

テクノロジーが、定型的で付加価値が小さい一部の仕事を代替していく一方で、テクノロジーの恩恵を享受できる社会を創り上げるための仕事が加速度的に創り出されていることを感じました。

前者の業務は「人余り」、後者の業務は「人不足」となり、労働マーケットはこれまでになく極端な「2極化」を生み出す可能性が示唆されます。

『専門分野×ビジネス×テクノロジーの越境人材』になることが、この先の時代で自分らしく価値発揮するための条件であるように思えます。

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