流行とカウンターアクション
働く台所という本がある。家づくり関連の書籍を読み漁っていた時に本屋で発見した、キッチンの本。その名の通り、働く台所を露出アンダーめの写真とキレイな明朝体のフォントでまとめた、台所写真集的な本だ。
その本をパラパラめくっていたとき、ふと、これはシステムキッチンに対してのカウンターアクションなんだな、と気づいた。
持て囃されて一気に台所の主役に上り詰めた、ピカピカのパネルにフラットなIHクッキングヒーター付きの、人工大理石のシンクと組み込み食洗機がステイタスの、その、システムキッチンに対するカウンターアクション。
昔ながらの壁付けキッチンには、飾らない食器棚と良く手入れされたガスコンロ。もちろんソフトクローズ機能なんか付いてないオープン棚に、鉄製のフライパン。
リネンのエプロンをつけて、どこかの焼き物と思われるお皿に、木製のお玉で煮物を盛り付ける。シンクはもちろんステンレスで、キズは味だ。
極端だなぁ、と正直思った。
僕は天の邪鬼な性格だから、流行り物の逆を行きたい気持ちはすごく良く分かる。そしてその「逆張り」が、僕のような人に刺さるというのも、良く理解できる。
大きな家が持て囃されてみんなが大きな家を建て始めると、今度は小さな家も良いんじゃない?という層が出てきて、それが一定の支持を集め始め、そのうち大きな家を悪者にし始める。
庭付き一戸建てがたくさん建てられた時代の後は、庭なし手入れ要らずの都会的な住宅が流行り、最近はまた、庭の価値が見直されて庭なしなんて、という流れがある。
行ったり来たり、流行りと廃り、主流と支流。
確かに、質素な台所の良さも分かる。そこで上手に丁寧に暮らす人が、どんなことに価値を見出しているのかも理解できる。
けどまぁ、ほどほどが一番居心地良いんじゃないの?って僕は思う。ピカピカの素材は好きじゃないけど、敢えて不便に暮らしたいとも思わない。
大き過ぎる家は要らないけど、あんまり小さいのもね、と思うし、広大な庭は維持管理が辛そうだけど、バーベキューくらいしたいよね、と思う。
その人その人の、ほどほど感。これが大事じゃないのかな。その都度流行はあるだろうけど、ほどほど感はきっとずっと一緒だと思う。
ほどほどに、便利を享受しつつ、暮らしも楽しむ。肩肘張らずに、自然体で居られる家。僕にとっての自然ってなんだろなって事を、ちゃんと考えれば良いんだよね。
流行とカウンターアクション。どっちにも乗っからずに、ほどほどに、行こう。
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