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140字の空想世界

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色々な140字の世界があると思いますが、自分らしくファンタジーの世界を詰め込みました。おやすみ前にのぞいたら素敵な夢がみれるような、そんなお話を中心に。時々、切なさや寂しさもあふ…
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2023年7月の記事一覧

【140字/空想】世界を見つける翼

読んでるだけじゃつまらないね、 確かめに行こう。 やってきた黒猫には翼があった。 そして僕…

クララ
1年前
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【140字/空想】その微笑みは時をも包み込む

時を駆けるとか時を超えるとか、 もういい加減にしないと どれだけ想いを拗らせているのかと …

クララ
1年前
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【140字/空想】白い花の香り

目覚めた時、残り香があった。 さっきまで見ていた夢と同じ。 早朝、雨上がりの庭。 濡れた石…

クララ
1年前
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【140字/空想】黄金の時が私にくれるもの

想いが溢れそうになったら紅茶を淹れる。 お気に入りの茶葉を入れたポットに、 あなたを想う夜…

クララ
1年前
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【140字/空想】与えられた翅

熱帯雨林に生息する蝶はね、 嵐みたいに群れで移動するんだよ。 夏休み、駅に向かう坂道で そ…

クララ
1年前
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【140字/空想】あなたが教えてくれたこと

山積みの本と共に出発の朝、 手渡されたのは紙の花。 細い茎、丸まる葉、向こうが透けてみる花…

クララ
1年前
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【140字/空想】青い時間の約束

雨降る午後の画廊。 指先を青に染めて微笑む彼の後ろで 画面から立ち上がる 海と空が溶けあって一つになった。 待っていたよと彼が言った。 ずっと、ずっと。 音もなく時間が巻き戻り、 打ち寄せる波のように私を包み込む。 全身を駆け巡る世界に息をのんだ。 ねえ、ほら。 誰の心の奥底にも 遠い日の約束がある。

【140字/空想】魅惑の逢瀬

擦り切れた本の、箔押しの凹凸を指でなぞる。 煌めきはとっくの昔に消えうせた。 それでも私は…

クララ
1年前
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【140字/空想】ある午後の喜び

あなたと二人、森を彷徨いゆけば、 紅色の実がどっさり採れた。 私の亜麻布のエプロンは膨らん…

クララ
1年前
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【140字/空想】矢車菊色の海

午後の図書館で、 読みかけの本に矢車菊の栞を挟んだら、 向かいに座っていた人が顔を上げた。…

クララ
1年前
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【140字/空想】彷徨えるあなた、今だけは

月のない晩にと声を潜めれば、 従姉妹たちは肩を竦ませた。 恒例の怪談。 お開きになった深夜…

クララ
1年前
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【140字/空想】午後の微睡み

草むらに寝転がれば、 ぐるりと花たちが私を覗き込む。 その向こうに空が見えた。 風が吹いて…

クララ
1年前
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【140字/空想】永遠を私に刻む

一夜だけの花。 空が紫に染まる中それを見つめた。 今だけなんて寂しいかと思ったけれど、 そ…

クララ
1年前
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【140字/空想】リルケを紐解く午後

かの作家のように薔薇の棘で永遠の眠りに。 どの花よりも儚げな彼女が呟いた。 その吐息は香り高く、その指先は甘く震えて。 花たちはこぞって彼女に恋をする。 棘はどれ一つ彼女を傷つけることはないだろう。 彼女に許されたのは永遠の微笑みだけで、 その麗しき檻に僕は一歩たりとも近づけない。