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60点日記シリーズ「鯛」

お知らせ

ここのところ嬉しいことに、
本当にたくさんの方が「♡」をくださり、
「面白い」「感動しました」と言ってくださるのですが
今回は本当に、わりとふつうの日記です。
だらだらと書くときも
noteを使いたいなーと思ってます。

ということで
「60点日記シリーズ」と題して、
オチない、話の筋を気にしない、
読み直しをしない、誤字脱字も気にしない(笑)、
そんなのをやってみます。
(そもそも日記とは点数を付けるものではないですが、
気の抜き具合の例えとして…)

読んでくださる方、あまり期待せずお進みください。


7月2日(木)の日記

(※魚をさばく写真があります。苦手な方ごめんなさい!)



7日後に死ぬカニ」に綴ったように、私は、サワガニを食べなかった。

でも今、何匹か死んでしまったカニたちを「食用」として、冷凍庫で眠らせている。今度、カニたちのふるさとに行って、いろいろと知った上で、最高の調理方法で、食べる。それを、カニたちのお葬式にする、と決めている。(詳細はこちら)けれど、カニたちのふるさと「宮崎県」に行くのはもう少し先になりそう。

でもやっぱり、自分の手で仕留めて食べる、というのは、きちんと体験してみたい。だからこないだ、おうちにいつも、おいしい養殖の真鯛を送ってくれる、知り合いの漁師さんを訪ねた。

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真鯛のふるさとは、三重県の南伊勢町。
とても気持ちのいいところ。夜のうちに出発して、途中の松坂でラーメンを食べて、ゲストハウスに泊まった。



朝。
起きて、お外に出たら、カニがいた。

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びっくりして、めっちゃ声出た。


よく見ると、すぐそこのポストの前とか、売店の横にも、カニがいっぱい歩いてた。天国かと思った。

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このまちがすぐに好きになった。すぐ前が海なので、そのまま飛び込むこともできる。それに(これは海のまちじゃなくてもあるかもしれないけど)、こういうところを見ると、すぐに大好きになる。

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鯛の養殖をする「イザワ君」に、船に乗らせてもらい、養殖のイカダがある少し沖に移動した。風がほんとに気持ちいい。ここに私が食べている鯛が住んでいる。そう思ったら、とても楽しい気持ちになった。

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10分ほどしたら、イカダについた。覗き込んだら、鯛、めっちゃいっぱいいた。竜宮城みたい。

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「みんなおなかすかせてますね」とイザワ君。


「なんでわかるの?」
「水面近くで泳いでるのは、おなか空いてるときです。あっちにソーラーで動く餌やり機があるんですけど、…今日はくもりだったので、多分まだ動いてないかも」
「え…くもりだったらごはん食べられないの、かわいそう」
「ほんとですね。笑」

鯛の習性、色や模様の理由、アスタキサンチンという成分のこと。いろいろ教えてもらった。

「…取ってみます?難しいんですけどね」
「やってみたい。一発で取れたらすごいですか?」
「一発でとれたら、めちゃくちゃすごいです」

こういうのを言われると、ムキになってしまう。よし、本気出すぞ。

「前から素早くいってください。鯛、後ろには進まないんで」
「はい!でもみんな水面いる、私のこと見えてる?バレてる?」
「うーん、たぶんまだ大丈夫です。」

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金魚すくいを思い出した。ポイを、水となるべく平行に入れて、上のほうに泳いでいる金魚をすくう。鯛も一緒かな…と思って、金魚すくいの10倍速バージョンをした。網を水に入れてから出すまで、1秒切ってたと思う。

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すくえた。

「わ!ほんとにすくった!すごい」とイザワ君。ばちゃばちゃするの目に見えてたので、すぐにイカダの上にある網をフタにするようにガードした。


「あー、まだ小さいですね、どうしますか?」
「うーん……でも私が選んだからこれにする」

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そのまま水槽とかに入れて持って帰るかと思ったら、船の上で仕留めて、血抜きまでするとのこと。

「今、するの?」
「はい、今します。やってみてください」


このあたりは表現を避けるけど、もちろん号泣しながら、頑張った。(動画を撮ってもらってたけど、私の泣き声がうるさい…笑)


「痛い?痛いよね?」「魚は一応、痛点はないって言われてます。でも、恐怖は感じているみたいです」

「じゃあ、こわくないよ、こわくないよって言ったらマシ?」「どうでしょうね」イザワ君は思っていないことは言わない。でも、否定もしない。


「絶対こわかったね。ごめん」水槽の中で、できるだけ泳いでいたときみたいに揺らした。

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カニたちのときに立てた仮説、
『食材にするときにかなしくなる条件は、「その個体が動いているところを見たかどうか」と「一瞬でも愛おしいと思ったか」が重なったとき』。
たぶん、鯛で立証された。ぐずぐず泣きながら、鯛を赤ちゃんみたいに抱っこして、船で沖に戻った。


あまりにぐずぐずしているので、イザワ君が運転席から、「船、運転してみますか?」と言ってくれた。鯛を水槽に置いて、運転してみたら、風で乾いて、そのまま泣き止んだ。たぶん今回、「愛おしい」と思った時間が、カニたちよりも短かったこともあって、泣き止むまでは、比較的短かった。

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陸に戻って、流しで鯛のうろこを取る頃には、だいぶ落ち着いていた。うろこは、ぱりぱりめくれて、キラキラ飛び散る。

「これも油で揚げたら、チップスみたいになって食べられるんですよ」
「へえー!うろこチップスかー」

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以前、「魚が減った」「獲り尽くさない資源デザイン」というキーワードを南伊勢の水産の人が話していた。そこに、早稲田大学の法学部を卒業したイザワ君が就職した。今は、まちのことを発信したり、ゲストハウスを運営している。彼にも生き物と食材の境目を聞いてみたくて、サワガニを飼ってみたことを話した。

「僕も一時、そんなことずっと考えてました。僕は、食材というのは人間が勝手に考えた概念なんだなーと思ってて。この世に、食材として生まれてくる生物なんて、本当はいないんだろうなって」

イザワ君が鯛の養殖をしている理由が、少し見えた気がした。



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鯛が、まな板に運ばれた。やたらと長いまな板だった。

漁師町のまな板は、もしかしたらみんな長いのかな?内陸にいけば、すでにおろされた切り身が売っているから、まな板は長くなくてもいい。でも海のまちは、そのままの魚が売っている。「海に近づけば近づくほど、まな板は長くなる」という仮説を立てた。今度調べてみたいなと思った。


台所で鯛を三枚おろしにするときには、もう「食材」という気持ちだった。多分、イザワ君が、鯛のことや、鯛を食材としていただくために必要な手順を、ていねいに、たくさん教えてくれたからだと思う。


「おろすの難しい……何点?」
「今日は60点です」

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そのあと、お造りや煮付けにして、いただいた。めちゃくちゃおいしかった。本当に、今まで食べた鯛の中で、一番おいしく感じた。あと、鯛を「きれいだな」と思った。

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今回は「育てたものを食べた」わけではないけれど、「育てているところを見て、自分ですくって、仕留めて、さばいて、調理して、食べた」を体験できた。南伊勢の真鯛は、これからも買う。これまでよりも、もっとおいしいなと思えると思う。


今回は、ほんと、日記みたいになっちゃった。でも、別にふつうの文章でも、60点でも、最高だよね。

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