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同善病院の採用活動改善の軌跡(2022年4~2023年12月)

CCH協会の村上です。医療職の採用は多くの医療機関が抱えている課題です。今回はコミュニティホスピタルを目指す同善病院(東京都台東区)の採用活動についてお伝えします。


はじめに

2022年4月からコミュニティホスピタルへの転換に取り組み始めましたが、その中で①職員の意識転換と教育、そして②コミュニティホスピタルにマッチする職員の採用活動について、病院として優先度を上げて取り組んできました。結果からお伝えすると、2023年12月までに下図のように大きく入職者数ともに伸ばすことができました。
 2021年  8名
 2022年  13名
 2023年  23名
病院全体を巻き込んだ試行錯誤の結果であるこの1年9ヶ月の取り組みについて振り返ってみたいと思います。


取り組み前の状態

あらためて集計してみると、2022年4月以前の当院ホームページからの直接応募者は1年間に5名程度で、退職者を埋めるために有料求人媒体や紹介会社などにも頼りながら採用活動をするものの常勤職員の採用には苦戦し、非常勤や派遣でしのいでいる状態でした。元々在籍していた職員にもヒアリングしたことがありますが、当院を選んだ理由は、通いやすかった、働く時間が合っていたというような、やりがいよりも条件を優先した人が多かった印象です。

取り組み1 部署ごとの定数・ペルソナの再設定

残念ながら、始めの1年間はコミュニティホスピタルへの方針転換が合わないなどの理由で退職された方多くいらっしゃいました。そんな職員が減っている状態で、まず最初に部署ごとの定数(目標職員数)を設定しました。新人が多すぎても回らないので、教育体制が組めるように経験年数やマインドセットなどの採用したい人物像のペルソナを部署ごとに再確認するところから始まりました。

取り組み2 求人広告メッセージの変更

2023年1月ごろに当院のホームページのミニリニューアルを行いました。全面改訂の声もあったのですが、他の多くの取り組みが並行していたり、組織が脆弱だったりしたために、ミニリニューアルを選択しました。
TOPページとコミュニティホスピタルを説明するページなど数ページの変更だったのですが、私たちが目指しているコミティホスピタルとは何か、それが患者さんやそこで働く医療者にとってどんな意義があるかを発信するとともに、何人かの職員に協力してもらって生き生きと働く様子を写真撮影して掲載することにしました。
併せて、有料求人広告媒体も同様のメッセージにすべて表現を統一したり、撮影した写真にすべて変更をしたりしたがこの頃です。振り返ってみると、この2023年1月頃は退職者が多くて少し暗い雰囲気だった病院内が、少しずつ雰囲気が変わって採用も上向きに変化してきた頃でした。

ミニリニューアルしたTOPページ


取り組み3 求人広告媒体を増やし、認知を拡げる

複数ある求人広告媒体を丁寧に管理し、露出を広げていくために担当者を決めて、幅広く求人媒体に露出させていきました(それほど費用はかけずに)。同時にいくつかの人材紹介会社にも私たちが取り組んでいる内容をしっかりと伝えるなど、露出を増やしていったのが2023年の前半でした。
採用活動のためではありませんでしたが、日頃のコミュニティホスピタルの取り組みを発信するためにInstagramも活用していましたが、結果的にこのInstagramからDMでの応募があったり、応募者がInstagramで当院の取り組みを見て志望動機を高めて応募してくれたりしたことが一定数ありました。当然ではありますが、大病院とは違って知名度が高くない中小病院にとって、病院の存在を知ってもらって、その取り組み姿勢を伝えることがまず重要です。

取り組み4 見学と面接の見直し

せっかく応募してもらった応募者には、お互いを理解してもらうことや、複数ある候補先の中から私たちを選んでもらうために見学と面接をセットに考えました。
例えば、10時に病院に来ていただき、病院内を紹介して仕事の様子を見ていただく。12時からは若手スタッフと一緒にランチをとってもらい、昼休みのカンファレンスの見学をしてもらう。そして13:00頃から面接を行うようなタイムスケジュールを組むことにしました。応募者にとって面接時間は長くなりますし、現場の負担も大きくなるものの、良い人を採用する意義について全員に理解してもらってこのような形に変更しました。
入職者に入職後にヒアリングしたところ、この面接改善の取り組みは非常に大きな効果があったことがわかりました。同善病院は建物が古く、近隣にある大きな綺麗な病院とはかなり見劣りはするものの、病院の中で生き生きと働く職員の様子を見てもらったり、地域活動を含めた様々な活動している様子を見てもらうことで、面接後に辞退されることはほとんどなくなりました。

取り組み5 採用サイトの開設

ホームページのミニ改定は行ったものの、ホームページ自体は古いままで採用情報も少なかったので、採用サイトだけを別に開設することにしたのが2023年秋ごろです。その時点の同善病院のウリをあらためて考えたときに、職種や部署を跨いでフラットに生き生き働く職員であると考えて、多くの職員に協力してもらって、写真とインタビュー記事に注力したものにしました(インタビュー記事は順次アップ)。

応募者がその病院の採用サイトを見たときに多くの職員の写真などがある。あるいは見学に来たときに全員で対応をしてくれるという様子は、応募者にとって歓迎感が伝わり、入職後に大切にあつかってもらえると感じてもらうことができる大事なポイントです。しかし、実際にこのような表現をするためには、本当に職員が協力的で、職場の雰囲気がよくないと実現できないので、本質的な取り組みが必要であることあらためて感じます。

撮影風景を撮影


まとめ 採用活動改善の結果

このように採用活動の改善を1年9ヶ月の間行ってきた結果、冒頭に紹介したように直接応募者を含めた入職者数を大きく増やすことができました。大前提として、同善病院は古い病院ではあるものの上野駅から電車と徒歩で20分程度でアクセスできるという好立地に助けられているという面はあります。その上であらためて振り返ってみると、いくつかの効果的なポイントがあったと思います。

1つは、コミュニティホスピタルと言うコンセプトが働く人にとってもとても魅力的であったという再発見でした。「コミュニティホスピタル」という言葉が響いたわけではなく、入院・在宅医療・外来をシームレスにみれる(経験できる)、そして患者さんを継続的に長くみていける、多職種でフラットに患者さんのため地域のために働くことができるという仕事の内容に惹かれている人が大勢いました。
2つ目は前項にも書きましたが、これから一緒に働く入職者に対して、見学対応や採用サイトなどを通じて病院全体で歓迎感を提供できたことも大きな要因だったのではないかと思います。
残念ながら、コミュニティホスピタルへの転換が始まった2022年4月から現時点までで、約3分の1の職員が方針の違いなどで退職してしまいました。この点については色々顧みる点がありますが、コミュニティホスピタルを掲げて採用活動を改善し始めてからは、まだ1人も退職者が出てないのは喜ばしいことです。


地域のかかりつけ医療機関として、すなわち患者さんと長く付き合い、患者さんのことをよく知って診ていくためには、その医療機関で働く職員が長く働いてくれている状態でなければ、かかりつけとしての役割を果たすことができません。長く働いてくれていて、地域や患者さんのことをよく知っている職員が多くいることは、コミュニティーホスピタルにとっての大切な要素の1つなのではないかなと思います。多くの医療機関の中から同善病院を選んでくれた入職者の期待を裏切らないよう良い組織にしていかねばなりません。
当協会からいくつかの医療機関に対して採用活動改善の支援を始めています。他の医療機関での採用活動改善の様子についても今後にお伝えしていきます。



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