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火災による全焼...地域住民に支えられ復興を遂げた病院が住民を支えるコミュニティホスピタルとして地域貢献を果たす意義。

神奈川県横須賀市にある衣笠病院(198床)。在宅医療先進地域である横須賀市でコミュニティホスピタルとして存在することの意味を歴史的背景を振り返りながら紹介します。

病院概要

神奈川県横須賀市小矢部2-23-1
198床(急性期一般病棟/回復期リハビリテーション病棟/地域包括ケア病棟/緩和ケア病棟)

現在の衣笠病院

1 歴史と運営理念

日本医療伝道会衣笠病院グループは三浦半島の横須賀市にある198床のケアミックス型の病院です。病院には一般病床の他、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、ホスピス病棟があります。併設施設に特養、老健、訪問診療クリニック、訪問看護ステーション、通所介護事業所を持っています。
 
その歴史は1947年8月、終戦後の混乱と窮乏の中、横須賀に着任した米海軍横須賀基地司令官のベントン・W・デッカー大佐に始まります。デッカー大佐の熱心な勧めのもと、キリスト教の精神に基づく「日本基督教団衣笠病院」(80床)として衣笠病院が発足しました。
 
このキリスト教精神は今も受け継がれ、衣笠病院の朝は、8時30分から院内のチャペルで行われる礼拝からスタートします。この礼拝には、医師、看護師をはじめ様々な職種が参加し、一般の人も自由に参加できます。院内にはチャプレン室があり、チャプレンと呼ばれる牧師が患者・家族の相談にあたっています。

衣笠病院内のチャペル


2 衣笠病院の試練

この衣笠病院を試練が襲います。1960年1月6日午後9時、衣笠病院に当時あった新生児室から 火災が発生し、病院はほぼ全焼し、入院患者14名(うち新生児8名)、見舞客1名、看護婦1名の計16名が死亡するという痛ましい惨事が起きました。同院の青嶋ミチヨ看護師は数回にわたり炎に包まれる新生児室に飛び込んで計5人の新生児を無事助け出しました。しかし救助中に力尽き、2人の新生児とともに32歳の若さで殉職されました。
 
この惨事を忘れないため院内のチャペルには火災で亡くなった16名の方を祈念して16本の柱が十字架を取り囲んでいます。そして毎年、1月6日には遺族の方々をお招きして追悼式を行っています。
 
この火災により全焼した病院の再建は不可能とおもわれました。しかし地域の方々の温かい支援により病院は再興されました。これを契機に職員は「復興を支えてくれた地域のために、これからも力を発揮していきたい」との思いを強くしました。

1960年1月6日に焼失した衣笠病院


3 病院の復興と地域医療に貢献する病院として

火災のあと1960年2月には衣笠病院の職員は診療を再開し、翌年1961年9月には別館病棟を竣工、1963年6月に復興工事竣工、130床と焼失前の病床数にもどりました。さらに1967年3月には乳幼児センターが併設されました。

1970年7月には当時としては珍しいユニットケアを備えた特別養護老人ホーム「衣笠ホーム」が開設しました。1987年には乳幼児センターに替わり健康管理センターが運用開始しました。1991年4月には訪問看護及び訪問診療が開始しています。1995年4月ようやく3期に及ぶ本館棟増築工事が終了し299床の衣笠病院が完成します。同年7月には病院に併設した介護老人保健施設である「衣笠ろうけん」が50床でスタートします。

1996年10月には病院に併設した衣病訪問看護ステーションがスタート、また1998年6月ホスピス病棟20床がスタート。2002年6月には日本医療機能評価機構による認定を受け、2003年10月に早くも電子カルテシステムを稼働しています。2006年には地域包括支援センターを受託しています。さらに2014年8月には地域包括ケア病棟38床の稼働がスタートしました。さらに翌年の2015年10月 回復期リハビリテーション病棟33床稼働もスタートし、そして2018年3月には衣笠病院附属在宅クリニックを開設しました。
 
そして2022年東館の入院患者利用の減った53床を減床し、198床の200床未満の地域ニーズに合わせた病床の再編成が完成しました。200床未満の病院は全国8300病院のおよそ7割を占める日本では最も多い病院で、地域のかかりつけ医機能機能を重視した病院として国は位置付けています。

4 これからの衣笠病院

さて衣笠病院のある横須賀市は、逗子・葉山・鎌倉など湘南地区にも接し、三浦半島をカバーする横須賀三浦医療圏の中にあります。この横須賀三浦医療圏は神奈川県に11ある二次医療圏の中でも特異な医療圏です。この医療圏は半島であることもあり、神奈川県の中でも高齢化が突出し、人口減少も進行中の課題先進医療圏です。またこの医療圏では地域医療構想の中で、2025年へむけて訪問診療需要が現在の1.4倍に増加中の医療圏でもあります。このため横須賀市は在宅看取り率も増えています。現在の横須賀市の在宅看取り率は22.9%で、全国平均の12.8%を大きく上回り、人口20万人以上の市区町の中で在宅看取り率が最も高い市としても知られています。
理由は半島であることから地域人口の移動が少なく地域住民のまとまりがよいこと、また医師会や行政が地域医療に熱心なこともあり在宅医療先進地域であるからでしょう。
 
こうした中で、衣笠病院は創立から75周年を経て、再度、地域密着型のコミュニテイホスピタルとして地域貢献を果たしたいと考えています。地域に根差したコミュニテイホスピタルの医療に関心をお持ちの医師をはじめとした各職種の来訪をお待ちしています。

副病院長・診療部長 岩田啓吾(右)、副診療部長 竹永清人(左)

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