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第259号(2024年3月25日) 14個師団増設は動員の前触れか?(多分違うという話)


【インサイト】戦時下で進むロシア軍改革 14個師団増設、「河川小艦隊」設置など

 3月20日、モスクワでは定例の国防省幹部評議会が開催されました。四半期に一回開催されているものです。実際に何が話し合われているのかは明らかでないのですが、ショイグ国防相の発言録だけは毎回公表されます。今回は表題に掲げた通り、重要な論点が幾つか出てきたので詳しくみていきましょう。

物資装備補給担当国防次官の交代

 ショイグ発言の冒頭は人事で、物資装備補給(MTO)担当国防次官がアンドレイ・ブルィガ中将に交代となったことが報告されました。MTO担当国防次官は単なる事務次官ではなく、ロシア軍MTO部隊司令官として兵站を実際に切り盛りする重要なポジションです。

MTO担当国防次官となったアンドレイ・ブルィガ中将

 今回の戦争前まで、このポジションに長く居たのはドミトリー・ブルガーコフ上級大将でしたが、開戦後の2022年9月に解任されました。一応、国防省監察総監局の監察総監というそれなりの地位には就けられたのですが、戦争の真っ最中であることを考えるに、事実上の更迭であった可能性は否定できません。
 そこで後任となったのは国家防衛指揮センター(NTsUO)司令官だったミハイル・ミジンツェフ大将でしたが、この人は参謀畑なので、なんとなくつなぎ人事であったような気がします。ということでミジンツェフは1年も経たずに交代となり、2023年4月にはアレクセイ・クジミンコフという兵站畑出身の人が改めてMTO担当国防次官兼MTO部隊司令官に就任しました。経歴を見るとドネツク生まれということなので、ウクライナの現地事情にも通じている、というようなことも期待されたのかどうなのか。
 ところが結果的にクジミンコフもまた1年保たずにブルィガに交代なわけですから、どうもこの戦争においてロシア軍はロジスティクスにかなり苦労している感じがしてきます。
 ところでブルィガというのはあんまり聞かないファミリー・ネームですが、経歴によると1968年カザフスタン生まれということなのであっちの名前なのでしょうね(顔もアジア系の顔をしている)。キャリアとしてはずっと兵站屋で、2012年以降は中央軍管区及び西部軍管区で兵站担当の軍管区副司令官を務めてきました。
 さて、混乱の続いたMTO人事はクジミンコフで収まるのか、まだ交代劇が続くのか。この辺はロシア軍の継戦能力を推し量る上でも重要なポイントになるでしょう。

強化されるフィンランド国境の防衛体制

 ショイグの発言はこのほか、潜水艦乗員の記念日、大統領選、前線の動きなどにも及んでいますがここでは扱わないこととします。代わって取り上げたいのは、短いけれども重要な発言です。引用してみましょう。

最高司令官の決定に従い、ロシア連邦軍の前向きな発展とその戦闘能力の向上が続いている。
軍団(単数形)、自動車化歩兵師団(単数形)、ドニエプル河川小艦隊及び同小艦隊の河川舟艇旅団が編成された。
年末までに2個諸兵科連合軍並びに14個師団及び16個旅団を含む30個兵団の編成が計画されている。

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毎号買うのめんどいという声が割とあったので定額版を作ってみました。

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