第71号(2020年2月10日) ロシア、「国家安全保障戦略」改訂へ

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【インサイト】 ロシア、「国家安全保障戦略」改訂へ

 ロシアに関する重要ニュースが相次いでいるので、今週も「インサイト」のコーナーで行きたいと思います。
 今回取り上げたいのは、ロシアの外交・安全保障の基本政策文書である「国家安全保障戦略」改訂の動きです。この種の文書はソ連崩壊後、4回策定されてきました。

 ・「ロシア連邦国家安全保障概念」(1997年)
 ・「ロシア連邦国家安全保障概念」(2000年)
 ・「2020年までのロシア連邦国家安全保障戦略」(2009年)
 ・「ロシア連邦国家安全保障戦略」(2015年)


 このように、2000年までは「概念」であったものが2009年バージョンからは「戦略」へとより具体化され、「202年まで」と具体的な達成期限がつけられました。現行の2015年バージョンは具体的な達成期限をタイトルに含めていませんが、6年ごとの見直しを行うとの条項が初めて導入されました。
 というわけで、2015年から足掛け6年目にあたる今年は「国家安全保障戦略」改定の年ということになり、新たな「国家安全保障戦略」は2025年までをカバーすることになるでしょう。先日、プーチン大統領は憲法改正案を発表して2024年に大統領職を退く意向を事実上明らかにしていますから、プーチン後を睨む初の国家安全保障政策文書ということになります。
 ちなみに、2020年中に新たな「国家安全保障戦略」が策定されることは、国家安全保障会議(「国家安全保障戦略」等の政策文書策定や省庁間委員会の開催などに関する事務局機能を担う)のアノーシン広報官によって昨年7月段階で予告されていました。要点は以下の通り。

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