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内向型人間だからこそできる「使える人脈」のつくり方

<働き方が多様化する中、ますます重要なネットワークづくり。にもかかわらず多くの人が苦手意識を持つが、実は内向型のタイプの人こそ向いているのだと、グーグル、ツイッター両社で要職を務めたカレン・ウィッカーは言う。なぜか>

終身雇用制度の存続が危ぶまれる今、自営業者やフリーランスという働き方が増えていくとも言われている。働き方が多様化していく中で、新しい人間関係づくり、幅広い分野の人と出会うためのネットワークづくりは重要度を増していくだろう。

そうは言っても、多くの人にとって、ネットワークづくりは厄介なものだ。特に、ひとりが好きで、ひとりになって充電する時間が必要な「内向型人間」にとって、ネットワークづくりは避けて通りたいのが本音ではないだろうか。

しかし、実は内向型人間こそがネットワークづくりをうまくやれる特性を秘めていると話すのが、『つきあいが苦手な人のためのネットワーク術』(CCCメディアハウス)の著者、カレン・ウィッカー氏である。

グーグル社で要職を務め、ツイッター社でエディトリアル・ディレクターを務めたグローバル・コミュニケーションのエキスパートだ。自身も内向型人間であることを明言しているが、世界には数千人の知人がいるという。

ウィッカー氏は本書で、内向型人間であっても、生涯にわたって育てていくことができる本物のネットワークのつくり方、「使える人脈」の広げ方を提案している。

内向型人間が強いつながりの構築に向いている3つの理由

ユングは、「人は外の世界から活力を得るタイプ(外交的)か、自分の内面と向き合うことで活力を得るタイプ(内向的)のいずれかである」と言った。ただ、内向型人間のすべてが内気なわけではなく、充実した社交生活を送り、友人との会話を好む人もいる。ひとりになって充電するための時間を必要とするのが内向型人間というだけだ。

著者は、内向型人間が強いつながりを構築することに向いている理由として、次の特性を挙げる。

●人の話を聞くのがうまい

聞き上手な長所を生かすことにより、先に相手が話し、こちらよりも多くの情報をさらけ出すように仕向ける。これによって、相手が信じられる人物かどうかを判断する時間を確保できる。

●観察能力が鋭い

内向型人間は、人が集まる場を支配していないので、相手が素の自分を出しやすい。受け入れられるという安心感があるのだろう。このとき、相手が見せる印象的な特徴を覚えておいて、アプローチする。人とのつながりをつくるためには有利なスキルだ。

●好奇心が旺盛

部外者の目線で周囲を見ることができるのも内向型人間の特性だ。部外者の目線で見ると、他人が人生の達人に思えてくる。自分にはできないやり方で人とつながっているように見えるからだ。実際、内向型人間は、他人がどう(うまく)やっているのか知りたくてたまらないのだ。好奇心をもって、鋭い観察眼で見聞きしたことは、うまく活かすことができる。

内向型人間の秘めた能力を生かすポイントをまとめると、次のようになる。

人の話に耳を傾ける、よく観察する、好奇心をもつ。これらはすべて、人とのつながりを築くのに効果的なツールだ。そして大切なのは、それらのどれを実行するときも人の注目を集める必要がないということ。(31ページより)

躊躇する必要はない、ゆるく連絡を保てばいい

多くの人がネットワークづくりを嫌う理由は、ふたつある。ひとつは、取引や商売が目的であることが見え見えだから。もうひとつは、ネットワークの力を借りなければならない自分の無力さを思い知らされる気がするからだ。

しかし、どんな人にも誰かの助けが必要な時がくる。それは仕事かもしれないし、健康上の問題、あるいは家族の問題かもしれない。そうなると、情報や伝手(つて)、サポートを求めていろいろな人に働きかけることになる。

でも、それをするのはあなたばかりではない。ほかの人も同じようなニーズを抱えてあなたに接触してくるだろう。だから、あなたも自分のために助けを求めることを躊躇する必要はないのだ。

著者によれば、ネットワークづくりに対する嫌悪感をなくすために重要なのが、「助けがいらないときから少しずつ行動しておく」こと。つまり、つながりがある人と「ゆるく連絡を保つ」のである。

旧知の人や新しく知り合った人に、ときおり連絡を入れてみる。困っていないときからこれを習慣にしておくというわけだ。たまに他人の役に立つことができれば、あなたもためらいなく他人の力を借りられるようになる。

好みのソーシャルメディアを使って多くの人と情報をシェアし、コメントし、質問し、冗談を言う。ゆるく連絡を取り続ける方法はたくさんある。

ただし、連絡を取る数分の間は、相手を意識すること。そうすれば、その時間があなたと相手との接着剤の役割を果たしてくれる。相手への関心が続いていることを印象づけておけば、いつか相手から思いもよらないチャンスがもたらされるかもしれない。

ソーシャルメディアを活用し、人とつながり、情報を共有する

先ほど「好みのソーシャルメディア」と書いたが、オンライン・コミュニケーションを使いこなせれば、直接会うよりもはるかに多くの人と有意義なつながりを確立できる。実生活では知り合えないかもしれないような人と会い、友人になり、ビジネスができる可能性がある。

インターネットは、探し、学び、共有し、それらの活動を通して人々とつながることができる場であり、内向型人間にはうってつけだ。

人とつながり、情報を共有する手段としてどのプラットフォームを選ぶかは、あなたの興味と好み次第。著者は本書で、リンクトイン、ツイッター、インスタグラムについて詳しく説明している。

ここではそのうち、ツイッターを例に取ってみよう。その最適な利用法は次の3つだという。

・関心のあることについて時流に乗り遅れないようにする。
・ツイートを読み、質問をして情報を収集する。
・選んだコミュニティの一員として実感を得る。(145ページより)

ツイッターをのぞいてみれば、たったいま何が起きているかが簡単に分かる。どんなトピックがトレンドで、それはなぜか、そのニュースについて誰の見解が最も的確か。いらいらする、笑ってしまうサウンドバイトは何か。

ツイッターは他人から学び、アイデアや議論をフォローし、新しい分野についての洞察を得るのにぴったりなツールだという。新たなつながりをつくり、また維持するための最良の手段のひとつでもある。

著者によれば、ツイッターを活用するには、まず魅力的なプロフィールが必要だ。その小さなスペースに、注目してもらいたい要素を詰め込む。それがあなたの名刺の役割を果たす。

アカウント名は、本名でも、別の名前でも構わない。プロフィールには、自分をよく表現していることを書こう。現在の職業や職務内容、個人的な関心事、自分を知ってもらえるリンクなど。ただし、キーワードやハッシュタグを使い過ぎないこと。ありふれたキーワードは誰の役にも立たない。

アイコンは慎重に選ぶべきだという。自分を表現し、会話や交流のきっかけになるものが望ましい。仕事を探しているなら、遠くでサーフィンをしているものではなく、信頼を得るために顔がはっきり写った写真を使ったほうがいい。

ツイッターで充実した経験をできるかどうかは、フォローするアカウント次第だ。誰かをフォローすると、彼らの投稿を自分のフィードで見ることができるようになる。著者は記者や出版社をたくさんフォローしているため、絶えず数多くの会話や意見、最新ニュースをリアルタイムで目にすることができるという。

「生涯にわたって人とのつながりのメリットを享受できる」

つきあいが苦手な内向型人間なら、その特性を生かしたネットワークづくりをすればいい。知り合いを増やしていくことは、その先にある大きな目標をかなえる力になる。

著者は、「広い心と他人への好奇心があれば、生涯にわたって人とのつながりのメリットを享受できる」と言っている。

ほんの少しの勇気を持って、ネットワークづくりを始めてみてはどうだろうか。その人間関係は、あなたの人生において安心感と充実感を高めてくれるに違いない。

2020年2月28日(金)

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※この記事はニューズウィーク日本版より転載しています。




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