[歌] teto ー コーンポタージュ


「お疲れ様でした。」
警備員に声をかけ、会社を出る。今日もまた終電で帰る。何も変わらないいつもの日常。早く寝たいな、でも寝たら明日が来ちゃうから鶏の首でも折ろうかな。そしたら明日は来ないから。そんなことを考えながら歩いていたら、見覚えのある自販機を見つけて、「このジュース、まずいんだよ笑」って笑う君の顔が浮かんだ。あぁ、ここは君の家の近くかって気づくのに時間なんていらなくて、駅に向かってたはずの自分がここにいる現実に笑ってしまった。冬、木曜日、深夜0時、僕を寂しくさせるには十分な条件でなぜか君に会いたくなって、首に巻いた君からの贈り物にキスをした。少し勇気をだして君の家に行ってみようかなって、仕事も上司も怖いものが詰まったスマホをカバンの奥へと押し込んで、ここから30分、灯りを頼りに会いに行く。真っ暗な路地でキスをするカップル、僕に気づいてどこかへ逃げるように走っていった。きっと今頃、「見つかっちゃったね」って、2人で笑いあってるんだろうなって、僕たちみたいだなって。手を繋いで君の家まで走って、笑い合いながらキスをして、2人の好きな音楽を流しながらご飯を食べて、映画を見て、セックスをして、「大丈夫?痛くない?」「朝早かったらやめようか?」って言ったら心配しすぎって笑われて、朝になったら2人で朝ごはんを食べて。絵に描いたような幸せな毎日で。初めての友達で初めての恋人で初めて僕と話してくれた人。大切にしたかった。


いつもと変わらない日常。朝、君が隣にいないことだけが異常で。「大丈夫?痛くない?」って自分で自分を慰めて。今日で君が居なくなってちょうど1年。君は簡単には消えてくれなくて、僕から「朝」を奪った。



拝啓 愛する君へ

今でも君は僕から逃げて誰かの隣で同じ明かりを灯しているのですか?

                                                                                           違う明日を夢見る僕より

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