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07.【キャリアコンサルタントがクライアントを「説得」する?】論理療法/エリス

記事の更新を約半年も怠っていた自分に喝を入れつつ、今年は「継続的に」皆様にとって有益な記事をご提供できるように頑張りますので、よろしくお願いいたします。

本日ご紹介するのは、エリスの論理療法です。

論理療法は、ひとことで言えば「説得療法」で、特に若年層へのキャリアコンサルティングに有用だと言われています。
現在、新卒・第二新卒の方を中心に支援させて頂いている自分にとっては、これからもっと学を深めたいと考えている理論の一つです。

目次
▼論理療法が生まれた背景
▼論理療法の理論
▼イラショナルビリーフ(不合理な信念)
▼まとめ

▼論理療法が生まれた背景
論理療法の創始者エリスは当初、フロイトの理論の流れをくむ精神分析者でした。
では、どんな経緯で論理療法が生み出されることになったのか?

それはエリスが精神分析によるカウンセリングを実践する中で、2つの問題点に気づいたことがきっかけだそうです。
第1に、カウンセリングに時間がかかりすぎるということ。
第2に、洞察しただけでは治らない人が少なくないということ。

そこからエリスは、より能動的なカウンセリングスタイルに切り替えました。
その結果、以前よりも短期間で、クライアントにポジティブな変化をもたらすことができたため、ここから理論化されていったのが論理療法というわけです。

▼論理療法の理論
私たちは目で見える出来事の「受け取り方」の世界の中で生きている、
という考え方に立脚しているのが論理療法です。

例えば、電車の中で大声で電話をしている人がいたため、あなたがイラっとしたとします。

これは、
電車の中で大声で電話をしている(出来事:Active Event)

イラっとする(感情・結果:Consequence)

ではなく、
電車の中で大声で電話をしている(出来事:Active Event)

電車の中では静かにすべきだ(認知・信念:Belief)

イラっとする(感情・結果:Consequence)

というように、出来事と感情の間には、その人の認知、つまり受け取り方が介在しています。

事象の受け取り方は人それぞれですし、どれが良い・悪いと判断できるものでもありません。
しかし、認知の中には明らかにおかしな認知もあります。

その「おかしな認知」をエリスはイラショナルビリーフ(不合理な信念)と呼んでいます。
イラショナルビリーフをラショナルビリーフ(合理的な信念)に変えていくことで、クライアントの苦悩を取り除こうとするのが、論理療法のABC理論です。
(ここに、説得(Dispute)→効果(Effect)のプロセスを加えたものがABCDE理論です。)

▼イラショナルビリーフ(不合理な信念)
では、どんな認知がイラショナルビリーフなのか?
それは「事実」や「論理性」を鑑みることで見極めることができます。

例えば、
「私はA君に振られたからダメ人間なんだ。」

という記述を見ると、誰でも感覚的にイラショナルビリーフだとわかります。それはこの認知には、論理性が欠けるからです。

そこで、論理療法的には
「A君に振られたら、どうしてダメ人間なのですか?」
「この先もあなたはダメ人間なのですか?」
というように、この認知はおかしくないか、クライアントと考えていくことができます。

また、イラショナルビリーフが生まれる理由は様々だと思いますが、
私個人の経験則上、以下2つの理由が特に多く見受けられます。

1つ目は、他者からの刷り込みや固定概念に囚われていること。
冒頭で、論理療法は若年層に有効と書きましたが、自分自身の経験値が少ないために、このような刷り込みをそのまま取り入れてしまいがちである点が背景にあると考えます。

職業選択においても、イラショナルビリーフが職業イメージに大きく影響している場合もあります。

2つ目は、「~べき」「~せねばならない」という感情に囚われていること。
これは、文化的にも日本人のクライアントに多いケースではないかな、と思います。

例)皆から好かれなければならない
例)何かを実行に移すなら完璧でなければならない

このような認知は、願望の世界と現実の世界の区別がうまくできていないために起こるようです。

そこで、イラショナルビリーフに対してキャリアコンサルタントが反論、論破していくことでクライアントに気づきを与え、歪んでいた認知を修正します。

▼まとめ
イラショナルビリーフはあくまで私たちが後天的に学習したものなので、修正していくこともまた可能です。
思考と感情は表裏一体なので、イラショナルビリーフがラショナルビリーフに修正されれば、クライアントの辛さ・苦しみといったネガティブな感情も修正されていきます。

そのために、キャリアコンサルタントが能動的に問いかけていくのが論理療法ということになります。

論理療法は短期的に効果が得られやすいという特徴がある一方で、クライアントはキャリアコンサルタントの説得に受けて立つわけなので、両者の間にラポールが形成できていることは大前提ですし、クライアントは知的エネルギーを結構消耗します。

それを踏まえて論理療法を活用すれば、ひたすら受容・共感のカウンセリングでは導きづらい展開を見出すことができるのではないかと思います。

本日の記事が、少しでも皆様の参考になりましたら幸いです!

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